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天才の父を持つと...




蓮希:パパぁ~!キャッチボールしよっ!

○○:おう、やるか
蓮加!ちょっと近くの公園に行ってくるわ


蓮加:わかった~
柚乃(ゆの)ちゃん、パパとにぃににバイバイって

柚乃:きゃは!

蓮希:パパ!はやく!

蓮加:気を付けてね!

蓮希:うん!わかってる!

蓮加:もう...




○○がプロ野球選手としての生活を終えた後、長女の柚乃が生まれた

○○は引退後、解説者をやったり、コーチングについて学んだりしてる
もちろん、家族との時間は大事にしながらね



蓮希:パパ!投げて投げて!

○○:よし、行くぞー


ビュン


パシッ


蓮希:取れた!パパ、取れたよ!

○○:うん、ナイスキャッチ!
(蓮希は投げるより取る方が好きなんか...)


蓮希:パパ!もう一回!もう一回!

○○:よし、行くよ


ビュン


パシッ


蓮希:イエーイ!

○○:うん、良いキャッチング!
蓮希は投げるより取る方が好きなの?

蓮希:うんっ!

○○:怖くない?

蓮希:怖くないっ!
取るの楽しいよ!

○○:そっか...
(じゃあ...)


蓮希:パパ?

○○:蓮希、キャッチャーやってみない?

蓮希:キャッチャーってなぁに?

○○:パパが投げた時に取ってくれる人いたでしょ?

蓮希:えぇっと......

○○:松川のお兄ちゃんとか

蓮希:あっ!あのへんなおめんやってる人だ!

○○:変なお面って...笑

蓮希:いっぱいボールとれるの?

○○:うん

蓮希:やってみたい!

○○:そっか...笑
じゃあ明日防具とか買いに行こうか

蓮希:やったー!!



子供からすれば、特別に見えるんだろう
あのキャッチャーというポジションは...
防具は戦隊ものの戦闘服に見えるしね


でも実際にやってみると違う
アメリカに居た時のトレーニングでやったことあるけど、めちゃくちゃ怖かった
もう数cm先にはバッターがいて、バットが顔の近くを回る
ボールを後ろにそらせば、ランナーを進めてしまうこともあるし...
キャッチャーってすごく重要


だからこそ少しだけ後悔してる
簡単にキャッチャーをやるかって蓮希に言ったこと

もっと野球の面白さを知ってから、やってもいいだろうし...
幼少期からやってたポジションが適切なところかなんてわかんないからね
でもやりたいって思ったならよかった...のかな


蓮希:パパ?

○○:...ん?

蓮希:どうしたの?

○○:何が?

蓮希:投げてって言ってるのに、投げてくれないんだもん
肩、まだ痛い?

○○:あっ...あぁ...ごめんごめん
大丈夫だよ

蓮希:しゃー!こいっ!

○○:おう!


パンッ


○○:(やわらかいキャッチングするんだよなぁ...)

蓮希:ねぇパパ!見て!取った取った!

○○:うん、良いキャッチだったよ


ヨシヨシ

蓮希:えへへ///




翌日

蓮希:ねぇ、パパ
どれがいいの?

○○:軟式のボールだからなぁ...
松川や甲斐さんに聞いても硬式ボール用のやつしか教えてくれなかったしな...

蓮希:ねぇパパ、これどうかな?
かっこよくない?

○○:...うん、かっこいいな
一回着けてみ?

蓮希:うんっ!


カチャ カチャ

蓮加:おっ!蓮希、かっこいいじゃん!

蓮希:えへへ///

○○:一回座ってみ?

蓮希:よいしょ!

○○:どう?動きやすい?

蓮希:...ちょっと動きずらい...

○○:まぁそうだろうな...
プロテクターだから、慣れるまではね...

蓮希:うーーん...

○○:もうちょっと軽いのにするか?

蓮希:...やっぱこっちでいい!

○○:いいのか?

蓮希:うんっ!

○○:じゃあこれにしよっか



蓮加:いいの?

○○:蓮希がいいって決めたんだ
自分に合ったものは探していかないといけないけど、何事もつけて経験しないとわからないからね

蓮加:そっか...そうだね!


柚乃:まぁーま!

蓮加:なぁに?

柚乃:あぁーあ!

蓮加:これ?かっこいいね?

柚乃:きゃは!


蓮加:蓮希ー!これどう?

蓮希:パパー!これってマスクってやつ?

○○:そう、これどうしたの?

蓮加:柚乃がこれがいいって言ってたの

○○:そうなの?

蓮加:ね?柚乃

柚乃:きゃはは

○○:そっか...
着けてみ?蓮希

蓮希:うん!

蓮加:どう?

蓮希:結構見やすいよ
すごく軽いし!

○○:これにする?

蓮希:うんっ!

○○:そっか

蓮希:ありがとっ!柚乃!

柚乃:へへへ


無事にすべての防具を買い終え...

蓮希:いっぱい買ったね!

○○:おう!蓮希、頑張れよ!

蓮希:うんっ!



そして...

史緒里:蓮希ー!頑張れー!

○○:姉ちゃん、うるさい

史緒里:なんでよ!蓮希のデビュー戦だもん!

蓮加:でも大声はやめて!
あなた仮でも大女優なんだから!

史緒里:いいじゃん...
甥っ子の応援だし、久しぶりに○○の時みたいに応援できるんだもん...

蓮加:まぁそうだけどさ...
じゃあ静かに見ててね

史緒里:わかったわよ...



小学生の試合
ピッチャーは花形ポジション
みんなやりたいのは、そういった花形

逆にキャッチャーは地味であまり目立たない
それでも一番重要なポジション
だけど蓮希は...

蓮希:監督!キャッチャーやりたいです!

監督:おう!わかった!
でもいいのか?父さんみたいにピッチャーじゃなくて

蓮希:だってパパのボール受けたいもん!

監督:おう!そうか!
じゃあ頼むな!

蓮希:はいっ!

史緒里:蓮希ー!頑張れー!

蓮加:もう...

○○:まっ、もう好きにやらせてやんな
姉ちゃんも久しぶりに楽しく応援できるんだから

蓮加:そうね...
ここ最近ドラマに映画に出ずっぱりだったもんね

○○:ね...




男子1:ふぅ...

蓮希:大丈夫、ちゃんと取るから!

男子1:...頼むね

蓮希:うんっ!

審判:プレイ!


男子1:ふぅ...


ビュ


パシッ


"ストライク!"



史緒里:うんうん!いいキャッチング!
○○もそう思うよね

○○:そうね...
息子っていう贔屓目を外しても、投げやすいよあの子は

史緒里:やっぱ?
○○ならそういうと思った!

蓮加:どういうこと?

○○:やわらかいキャッチングに、構えがよい...
ピッチャー目線で見ても、ミットが大きく見えるキャッチャー...
だから投げやすいんだと思うよ、あのピッチャーの子も

蓮加:そうなんだ...

○○:それに...



ビュン


"アウト!"


○○:蓮希は肩が強い



史緒里:盗塁刺したー!ナイス蓮希!

蓮加:いぇーい!ナイス!

史緒里:久保キャノンだ!久保キャノン!
くぅーー!
私たちの苗字が世界を渡る日も近いね!

蓮加:史緒里!気がはやいよ~笑

○○:まぁ...でもそう遠くないかもね...ボソッ



試合は10-0で蓮希たちのチームが勝った
しかもピッチャーの子は二塁をも踏ませないピッチングだった

蓮希はピッチャーの力を引き出し、初めてとは思えないくらい配球が良かった



小学生の野球では、力の差があるチームとの試合ではどうしてもあり得る
残酷な話だけど、現実


蓮希はずっと負けたチームの方を見ていた


○○:どうした、蓮希

蓮希:...勝ったけど....なんか...

○○:相手はヒットも打てなかった...
同情か?

蓮希:...

○○:勝負には勝者と敗者が出る
敗者の気持ち感じてたら壊れちゃうぞ?

蓮希:...うん...
でも野球楽しんでほしいなって...

○○:そっか...
優しいな、蓮希は


ワシャワシャ

蓮希:痛いよ~...


○○:強いチームとやりたい?

蓮希:...コクッ

○○:そっか...
じゃあ考えよっか

蓮希:何を?

○○:ん?チーム移籍

蓮希:チーム...移籍?
じゃあ今のチームに居れないってこと?

○○:うん...

蓮希:そっか...

○○:野球を楽しむか、強い所とやれるところに行くか
蓮希が決めな...

蓮希:うん...



蓮加:蓮希ー!○○ー!帰るよ~
史緒里おばさんがご飯連れてってくれるって!

蓮希:ご飯!

史緒里:ちょっと!蓮加!
私まだおばさんじゃないんだけど!

蓮加:叔母じゃん、それにちゃんと「さん」つけてあげたんだから!笑

史緒里:もう...蓮加、あとで覚えてなさい

蓮加:...やっば...



子供には残酷な選択だろう
チーム移籍...
今まで積み上げてきた友情・チームワーク・ピッチャーとのサイン...
全てとは言わないけど、いったん関係が止まってしまうんだから


でも...
それはプロでも起こり得る現実

蓮希がどういう選択をするか
そこには俺の意見は言えない...というより言いたくない

彼を独りつらい選択をさせることはさせない
ちゃんとサポートはする

正しいことを言うのは簡単
だけどここで親が出てきたら、今後も親に選択を頼ってしまう
それは彼の選択肢を狭めてしまうことにもつながる

彼が選択し決断したことを応援する
それが親の務めでもあり、一野球人としての務めだと...

彼の野球人生はまだ始まったばかりなのだから...





...fin

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