自慢の弟は一番最後 33話
柳田:ウェイ!ナイス!バシッ
牧原:...バシッバシッ
周東:よく見てたなバシッ
○○:...皆さん叩きすぎっすよ!笑
全員とハイタッチをしながらベンチに戻り、手洗い祝福を受ける
ベンチに帰って来たことで実感する
チームにとって、この1点がもたらした意味を
チームは活気づき、応援団の声量も増していく
咲月:すごいすごい!
○○、大活躍じゃん!
美空:しかも佐々木朗希選手だよ!?
和:うんっ!
すごすぎる...
でも、その状況を見てなかった人もいて...
○○母:あら、1点入ってるじゃない
和:お母さん...
遅すぎるよ!
○○母:お父さんが急に仕事になっちゃってね~
送ってきたらこの時間になっちゃったのよ
和:○○、活躍したんだよ?
○○母:ほんと?
咲月:はいっ!
和:こんな状況で嘘言わないから...
ただ…
3回以降
佐々木投手の肩が温まって来たらしく...
"バァンッ!"
音がえぐい…
『おぉ…』
会場がどよめく
電光掲示板に表示されたのは…
○○:...161kmって...笑
球速もキレも球威も増してきている
対して和田選手も、コースの隅を丁寧についていくピッチングを続ける
この試合を一言で表すなら..."投手戦"
あの1点以降、両チームランナーは一人も出ていない
美空:なんか、疲れるね…
和:うん…
咲月:野球って、もっとポンポン点が入ると思ってた…
佐々木投手は6回で変わったけれど...
中継ぎの投手たちも、キレがすごい
投手戦を塩試合って言ってる人もいるけれど...
出ているこっちは、緊張でバックバク
エラーはもちろんできないし...
ただ、試合は"生き物"だから...
些細なプレーで戦況は変わる
8回表
ギータさんはファーストゴロで倒れるも...
栗さん、晃さんが連続フォアボールで出塁
晃さんの所は代走で野村勇選手に代わる...
○○:(勇さんってことは...バントか?)
1アウト1塁2塁
0-1で迎えた終盤
追加点を取れれば、勝利へさらに近づく大事な打席
村松:スッ
○○:(やっぱり...送りバントのサイン...)
ここでロッテは、佐々木千隼投手にスイッチ
この年の佐々木千隼選手は、防御率1.26
奪三振率も4.42とまぁ高い
つまりは、ピンチに強いピッチャーである
変わってすぐのタイミングは、叩いておきたい...
○○:(できる...俺なら...)
バントの構えでマウンドを見つめる
佐々木:コクッ
○○:(くるっ...)
"ビュン"
○○:っ!?
"ボール"
ファーストとサードが猛チャージ
そりゃそうだ...
まだ1点差
ロッテからすれば、このピンチを抑えればまだ勝つチャンスはある
○○:(これだけ猛チャージされるなら...ワンチャン...)
佐々木:コクッ
"ビュン"
○○:(きたっ...)
真ん中ちょっと低めのストレート
これなら...
"カーン"
○○:(...やばいっ!)
パシッ
"アウト!"
バントフライ...
この場面で一番やってはいけないミス
あの打席の初球...
見えてしまったんだ...
猛チャージしてきたピッチャーとファーストの間
そこがいつもよりも空いていて…
セカンドのカバーも少し遅れていた
だから、狙いに行った
セーフティバントを…
でも...
狙ったことでバットが少し下がった
それによってボールの下半分に、
バットの真芯がヒット
ボールは高々と上がり、キャッチャーのミットの中に納まった
和:○○....
美空:バント、当たりすぎちゃったのかな...
咲月:で、でも!
まだ2アウトだから!チャンスはもう一回...
"カーン"
咲月:あっ...
『あぁ....』
バヤシさんにも代打が送られ、佐藤さんに代わるも…
ライトフライ
つまり、俺がバントを決めていれば一点入った可能性が高い
過信...
相手の隙を突こうとしたけど、
かえってそれが自分たちの隙を見せる形になってしまった
練習してきたから、できる
2回で点を取ったから、できる
相手のエースを打ったから、できる
それが全て、過信に繋がった
...なんでこのタイミングで"天狗"になってんだ、俺は!
この"ミス"が、もたらす影響...
それは...
咲月:なんか...
もうちょっとで勝てそうなのに...
美空:うん...
なんか...怖い
和:...
試合には、流れがある
流れがこっちに来るときには、それぞれの仕事を完璧にやった時...
でも逆に、向こうに渡ってしまうのは...
一つの小さな小さなミス
とても些細で、チープなミス
藤本:...真砂、行くぞ
真砂:はいっ!
美空:...あれっ?○○くんおらんくない?
咲月:...ほんとだ
周東さんが、セカンドにいる...
和:...交代、だね
8回は何とか抑えたけど...
最終回
ホークスの抑えは森さん
何とか抑えてほしいと思っていたが…
死球、連続フォアボール
1アウト満塁のピンチ
劇場型ではあるんだけど...
『うわぁぁぁぁ!!』
...耐えきれなかった
高々と上がった、白球
千葉の風に乗って、1塁側のスタンドに飛び込んでいく
ベンチから、見つめるしかなかった
ダイヤモンドを一周していく、角中選手
ホームベースに集まる、ロッテの選手たち
お祭り騒ぎのマリンスタジアム
俺のミスから、相手に流れが渡った
ロ4ー1ソ
最悪な逆転負け...
明日があるとはいえ...
もう後がない
美空:...
咲月:...
和:...
○○母:...帰りましょうか
沈黙...
試合に負けたこと
推しのチームが勝てなかったこと
それも悔しいけれど...
自分たちの知っている選手が、ミスをしてそこから負けてしまったこと
それが、何よりも悔しい
頑張りを知っているから...
苦悩を知っているから...
○○:...
もやもやした気持ち
どこにも吐き出せないこの気持ち
○○:...くそっ!!
他の選手たちが明日に向けて引き上げて行くなか…
ベンチから腰を上げることができない…
涙も出ない
自分が情けなすぎて…
長谷川:...次だ次
○○:ハセさん...
長谷川:引きずっても、いいことないぞ?
○○:はい...
長谷川:あのミスをしたとき、何を思った?
○○:...やばいって気持ちと、申し訳ない気持ちが...
長谷川:それを忘れないこと
○○:はい...
長谷川:明日勝つんだから、明日も声を出して
ね?いいね?
○○:はいっ!
次の日...
○○:...
スタメンに俺の名前はなかった
これが、今の実力
和たちには連絡できなかった
一つのミスで失った、自分のポジション
短期決戦では一つのミスが命取りになる
短期決戦の強さと怖さを知っている、ホークスならなおさら...
咲月:和...
和:...
美空:結局○○君と連絡つかんかったと?
和:コクッ
美空:...心配やね...
咲月:うん...
ロッテとの第2戦
ホークスは、スタメンを2人変えて臨む
俺の所と、バヤシさんの所
俺も声を出して盛り上げては行くけど...
柊太さんが打ち込まれ、3回終わりで5失点
打線も小島投手を攻略できず...
試合に出場することなく、
打たれていく様をただただ見ていくしかなかった
やるせない気持ちが、自分の心を支配していく
終わってみれば、0-8
完敗も完敗
今シーズンの戦いが、終わった
ごめん、和...
俺、チームの力になれなかった...
To Be continued...
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