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自慢の弟は一番最後 30話




和:ただいま!



この言葉にどれだけの意味があるだろう
特に今の俺たち2人にとっては...


○○:おかえりっ!



ギュー


和:ちょ、○○!潰れるって!笑




嬉しかった


ただただ、嬉しかった



一時は野球を嫌い、なんて言ってた彼女が...

『楽しかった』って言ってくれたんだから


その笑顔が嬉しかった

大好きなその笑顔が戻って来たから



○○:...


和:○○、痛いって!笑

○○:...

和:○○?

○○:...和が戻ってきてくれて...良かった...

和:えぇ~泣かないでよぉ...

○○:だってぇ...嬉しかったんだもん

和:ごめんね、心配かけてヨシヨシ

○○:うん...


和:昨日のヒーローインタビュー嬉しかったよ

○○:ほんと...?

和:うん、ほんと

○○:よかった...
届いたらいいなって思ってたから

和:ほんとにありがとね...ヨシヨシ



くっつき虫のようにずっとくっついてくる○○



今は...
いつものグラウンドに立っているかっこいい○○じゃなく...
等身大の年相応の男の子


ちょっと赤ちゃん返りしちゃったかもだけど...笑



グゥーー


○○:あっ...

和:ふふっ

○○:ご飯食べた?

和:まだっ!

○○:マジ?
じゃあ、早く食べよ!

和:うんっ!



○○の甘えたな一面も見れた一方で...




和:○○

○○:ん?なぁ~に~

和:あっつい!笑

○○:いいじゃん、心配させてた和が悪い

和:そりゃ...私が悪かったけどさ...

○○:いいじゃん、久しぶりにくっついたって

和:もう...



常に勝負の世界で戦っている○○
そんな○○の癒しになれるなら、まぁいいか


そんなことを想いながらご飯の用意を進める



言葉も視線も何も気にせずに、いられるなら...
それがいい

プレッシャーの中で戦っている彼が、リラックスできる場であるなら…





次の日からも○○は絶好調


ホームランのような派手な活躍は無いものの、安定的に塁に出塁
自分に任された役割をしっかりとこなしていた



そして迎えたリーグ最終戦...

ホークスは3位としてCSに出場することが決まり、
ホームで最終戦を迎えていた


相手はCSを争った楽天

ホームは少し異様な雰囲気


まぁそりゃそうだ
優勝を目指している球団が、3位に甘んじ...
CSも出れるかどうかギリギリだったという現状

ファンからすれば到底許されるものではなかった


『最低限』を達成したのみのチーム


普通のチームならCS出場おめでとう

となるんだろうけど...



このチームにはそういうのはあまりない

あっても表面だけ


勝ちにこだわるチーム
それがファンからも求められるチーム



あぁ...
いいチームに来てしまったなと、改めて実感する


もちろん、勝つことが求められるプレッシャーはある
負けて文句が言われることも多くある

でも、それには期待が伴っているから
勝てるって思ってくれているから


だから、僕たちはその期待に応えたい



誹謗中傷のような心の無い批判じゃなくて、心がこもったファンの声


『お前たちならできるだろ』って


『こんなもんじゃないだろ』って


『お願いだから勝ってくれ』って


その一つ一つの声に応えたい





そしてもう1個




咲月:○○くん、どうしたの?急に

○○:ごめん、咲月ちゃん
ずっと迷ってることがあってさ...

咲月:なぁ~に~?
あっ!もしかして和のことー?

○○:なっ!

咲月:えっ、ほんとに?笑
半分冗談のつもりだったんだけど...

○○:...だよね...冗談に聞こえるよね...


咲月:あぁ...違う
絶対言い方間違えた...

○○:ふふっ、わかってるよ笑
咲月ちゃん、いじるの面白いから

咲月:もう!



血の繋がった姉への相談

最近、些細なことでも電話で相談するような仲になって来た

なんか…
話やすいんだよね…



咲月:そっか
それで相談というのは?


○○:...どうやって告白すればいい?


咲月:......はい?

○○:だから、どうやって告白すればいいのかなって...

咲月:うん、ごめん、それはめっちゃ聞こえた笑

○○:...はずい

咲月:ふふっ笑
告白したことないんだ?

○○:...うん

咲月:可愛いじゃん!笑
でもなんでまたここで?

○○:...これも感謝を伝えられる方法の一つかなって

咲月:その心は?

○○:...なんか、和のためにって頑張った時に結果を出せているなって思って

咲月:ほうほう....

○○:それに...

咲月:それに?

○○:...帰って来た時に家で笑っていてくれたら、頑張れるなって


咲月:きゃ~!!お腹いっぱい!笑

○○:...そっちが言ってきたくせに

咲月:もう結婚だ!結婚!

○○:はぁ!?

咲月:もう付き合って同棲してるみたいなもんじゃん

○○:でも...姉弟としての時間が長かったから

咲月:何、そんなので躊躇してたの?笑

○○:そんなのって...

咲月:○○は和の事好きなの?嫌いなの?

○○:好き...

咲月:で?血は繋がってるの?

○○:繋がっては、いない

咲月:じゃあもう十分じゃん

○○:...




咲月:私ね、これが逆じゃなくて良かったって思ってるの

○○:えっ?

咲月:血が繋がっているのが、和じゃなくて私でよかったと...
○○もそう思わない?

○○:...

咲月:和との時間、もちろん姉弟という関係で過ごしてきたと思うけど...
その関係に縛られて生きてきた部分もあるでしょ?

○○:...

咲月:...私ね、和と話していて特に思うの
○○と一緒に過ごして来なくて良かったって

○○:なんで?

咲月:だって....
絶対好きになってるもん、○○の事

○○:...

咲月:血の繋がりがあるから...
この言葉の意味を知っていても、我慢できなかったと思う

○○:咲月...

咲月:それだけ○○は魅力あるんだよ

○○:そんなこと...

咲月:あるでしょ
さくらさんにも言い寄られているんだから

○○:...さくらさんは...そんなこと...


咲月:...鈍感

○○:えっ?

咲月:和からの相談で見せてもらったことあるけど...
あれは完全に狙ってたよ

○○:...

咲月:○○は、人として一緒にいたいと思わせるものがあるんだよ
気がついていないのかもしれないけれど

○○:...

咲月:だから...
○○の言葉で言ってあげてよ

○○:...できるかな

咲月:できるっ!
○○ならできるっ!

○○:...ありがと、なんか決心ついた

咲月:ふふっ、次会う時はいい報告が聞けるかな?笑

○○:...頑張るわ
ありがと、"お姉ちゃん"

咲月:こういう時だけ"お姉ちゃん"とか言っちゃって...笑

○○:でも、助けられたから

咲月:ならよかった笑

○○:今度試合見に来てよ

咲月:うん、行こうかな
そっちも頑張るんだよ?

○○:うんっ!



"血の繋がった姉"からのエールを受け、準備を進める


長年一緒にいなかったはずなのに...
ちゃんと自分のことを追ってくれていたこと
それがすごく嬉しかった

よそ行きの「ちゃん」はいつの間にか付かなくなっていた





どういったシチュエーションなら喜んでもらえるかなとか...

野球選手なら、
ホームラン打った後とか...
自分が活躍した後とか...

いろんな場面を想像する



本来ならそんなことを考えていられるほど、余裕はないのかもしれない

勝つことが生活に直結するのなら、なおさら

勝った先にあるものが何か

一番近くで応援してくれていて、隣にいてほしいと願った人が
勝ったことで笑ってくれていること

それが自分を構成する一つの大きな要素だから







To Be continued...









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