君に向けて

ｶﾗﾝｺﾛﾝ

ﾊﾟﾝ　ﾊﾟﾝ

○○:...

神社に行って手を合わせる
願いを込めて

別に神道ってわけじゃないけれど、
だけど、なぜかことあるごとに神社に行って手を合わせる

今日は...

○○:今日の蓮加のライブが、上手くいきますように...

と願いを込める

蓮加:ママ～？
蓮加のヘアピン知らな～い？

○○母:知らないわよ
自分でどこかやったんでしょ～？

蓮加:えぇ～、あれがないと蓮加頑張れない...

○○母:もう...

○○:ほら、これか？

蓮加:うんっ！それっ！
ありがとっ！お兄ちゃん！

○○:おう、ライブ頑張れよ？

蓮加:うんっ！
お兄ちゃんも来てくれるんでしょ？

○○:.....ごめん
部活があって行けないかな...

蓮加:...お兄ちゃん、きらい！！

ﾀﾞｯ

○○母:あっ！こらっ！蓮加！

○○:きらい、か...

乃木坂４６の３期生として加入した蓮加

今回のライブ、蓮加がすごく力を入れているのは知っていた
だから行きたかったんだけど...

天皇杯...

大学のサッカー部として、参加した天皇杯でまさかの県予選を突破
しかも初戦で当たるのが、Ｊ２のクラブ...

１年ながら、スタメンを取った俺は試合に向かわないといけなかった

□□:お～い○○！
行くぞ？

○○:...おう

□□:どうした？
今日は一段と元気なさそうだけど...

○○:い、いや、大丈夫だよ

□□:それで点決められなくて、負けるのは勘弁なんだけど～？

○○:大丈夫だって...

□□:さては妹ちゃんかな～？

○○:ﾋﾞｸｯ

□□:おっ？ビンゴ？笑

○○:...うるせぇ

□□:やっぱビンゴだったんじゃん笑
シスコンだもんな、○○は

○○:すぐそうやってバカにする...

□□:お前をいじるの面白いんだって笑
反応もいいしな笑

○○:...今日、妹のライブなんだよ

□□:はぁ！？

○○:見に来れるよねって言われたんだけど...

□□:ちょ、ちょい待ち！

○○:なに？

□□:ライブってなに！？

○○:えっ？ライブはライブでしょ

□□:違う違う、なんのライブ？

○○:...今日の相手、サポーター多いからなぁ...

□□:おいっ！教えろや！

葉月:蓮加～

蓮加:...なに？

葉月:なんでそんなに不機嫌なの？笑

蓮加:...

葉月:あっ！わかった！
お兄さんでしょ～？

蓮加:...そうだけど...悪い？

葉月:悪いなんて言ってないじゃん笑
お兄さん、今日試合なんでしょ？

蓮加:...うん

葉月:しかも相手はプロの選手たち

蓮加:...うん...ってなんで葉月が知ってるの！？

葉月:なんでって...
今日のスポーツニュースでやってたよ？

蓮加:はぁ！？
なんであんな小っちゃいとこの大学の事がニュースになるの！？

葉月:...蓮加、お兄さんが絡むと口悪くなるよね笑

蓮加:...

葉月:お兄さん、大好きだもんね～

蓮加:あぁ！もううるさい！

葉月:ほら、ボイトレ、蓮加の時間だよ

蓮加:あぁ！もう！
行ってくるっ！！

ほんとは見に来てほしかった

蓮加の頑張りを見てほしかった

家に帰ったら、頑張ってたねって、
頭を撫でてほしかった

まだ入って半年も経っていない中でのライブ

多くの人の前に立つだけでも緊張するし、先輩と話すことすら緊張する

だから、蓮加の好きな人には一番見ててほしかったのに...

そんな蓮加の"願い"なんか、届きやしなかった

主将:全員で声出せよっ！
相手がプロだからってビビんなよ！

監督:強気にだぞ、強気に！
自信持って！！

天皇杯...
アマチュアからプロまでが参加するこの大会

ジャイアントキリング...
日本語に直すと下剋上

それが起きるかもしれないのが、この大会

ベンチメンバー、スタッフ、監督
皆が勝ちたい気持ちで溢れている

主将:行くぞっ！！

『おしっ！！』

最後に全員でエンジンが組まれ、スタメン組は入場を待つ

○○:ふぅ...

『おおぉぉーーー！！』

Ｊ２とは言え、サッカー専用のスタジアムを持つ相手チームのホーム
相変わらず、圧倒される

スタッフ:じゃあお願いしまーす！

主将:しゃあ！！

そして選手入場
主将を先頭にピッチに入る

上手くいくと自己暗示をかけるために、
左手でピッチに触れてから...

蓮加:ｽｯ...

史緒里:蓮加～

蓮加:んぁ？な～に～？

史緒里:いつも、リハ前にステージを左手で触れてから始めるよね？？

蓮加:...そう？

史緒里:うん、今もやってた

蓮加:史緒里の気のせいじゃない？

史緒里:ううん、３期として入ってからずっと見てるから、知ってるよ

蓮加:こわっ笑

史緒里:ちょ、それはごめんって！！

蓮加:うめ～、史緒里にストーカーされてるんだけど～！

美波:久保～、蓮加が可愛いからってストーカーはダメよ～

史緒里:違うんだって！！

３期だけのリハーサル
先輩たちとやるよりは、まだ緊張はしない

でも、そんな時間は一瞬で...

あっという間に開演５分前
緊張だけが、身体を支配する

でも...
ファンの人たちが待っているんだ

やらなきゃ...

○○母:○○！

○○:ごめん、遅くなった！

○○母:勝利の立役者なんだから、そうなるでしょ笑

○○:えぇ...

○○母:お疲れ

○○:おう
ってか、母さん早くいかないと蓮加のライブ終わっちゃう

○○母:大丈夫、蓮加の出番までにはつくわ

○○:...ほんと？

○○母:それとも何？
私に１４０ｋｍ出して捕まれと？

○○:そんなこと言ってないじゃん！

○○母:早くシートベルトつけて！
飛ばすわよ！

○○:結局飛ばすんじゃねぇか！！

蓮加:ｷｮﾛｷｮﾛ

いるはずもないのに探してしまう

期待なんかしてもいないのに...

そう、思っていたのに….

蓮加:っ！？

蓮加:...ﾍﾍｯ

今なら何でもできる気がする

一番に見てほしい人が、そこにいた...

サイリウムも持っていない
タオルも持ってない

でも、蓮加の事をちゃんと見ててくれる
そんなあなたを、見つけられたから

○○母:ふぅ...間に合った

○○:死ぬかと思った...

○○母:でも、ちゃんと間に合ったわよ！
ほらっ！

○○:...すげぇ...

そこには、多くのサイリウムの中で踊る妹の姿が...

ただただ、夢中に蓮加の姿を追う
突っ立ったまま....

試合終了間際に攣って使い物にならなくなった
ふくろはぎの事なんて、頭から消え去るほど...
ライブが進むのなんてあっという間だった

上手くいってほしい...

後悔なくやり切ってほしい...

雑音なんか振り切って、楽しく踊っていてほしい

人が何かを願う時
なにに祈るだろう

祈りをささげるのは、多分神様じゃない

願いを込めるのは、流れ星でもない

多分、その"人"に向けて祈るんじゃないかな

本気で思っているからこそ

いつも君が輝けるように
とどけ、心からの祈りが
また明日も踊る君へ
るり色の舞台が君を待っているから

蓮加:ただいま～！

○○:おかえり！

蓮加:お兄ちゃん！
蓮加、どうだった？

○○:うん、めっちゃ可愛かったよ

蓮加:ほんと！？やったー！！
お兄ちゃん、大好き！！

ちゃんと応援し続けるからさ...

これからも沼らせてよ

大好きで、応援しているからこそ....

...fin