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エルレガーデン短歌

2021か22〜去年あたりにつくったはず

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穴ぼこにきれいな水が満ちてゆきやがて完璧になる喪失

やさしげに映画は終わりそのあとも小指をきつく握りしめてた

風を聴け あの遠すぎる光より生きるものとの呼吸を思え

もういないひとを待ち続けて夏は秋を拒んで燃えつきてゆく

濁流の色にも青き名をつけよ こんなにも悲しい朝だから

忽然と砂漠にドアが現れてああそのための指だったんだ

走り出す体がおれだ 待っていろ心よ次の嵐に会おう

はずれなくなった指輪をにぎりこみむかしばなしになんてさせるか

ばかみたい?みたいじゃねえよ本物になるためにいま飛び降りんだよ

かなしがる暇もなかった人だけにわかる紙飛行機の折り線

思い出すよしもないこと ぼくたちはあの稲妻を知ってしまった

直線を描く 指先の震えさえ直線といいはって描き抜く

火と砂と埃と骨とみずうみと昼のだれかの匂いの毛布

叫びたいことはいくつもあったのに叫び方だけわからなかった

「結局はそのちっぽけなたましいをどれだけ遠く投げられるかだ」

ひねくれることが靴ひもなおすのと同じくらいの誠実だった

流星よ願いごとならもういいよあらんかぎりの火として死のう

背中からむしった羽でつくる矢を放つなら目はきつくつむって

苦しみの肩をさすった(蹴るときもあった)名前も覚えてるんだ

いつからか地獄は鐘の形して打てば応えるほうらこんなに

消火水槽まみれの街に風は来るパワーコードの火花をまとい

おれが見た全部をきみにあげたいよ割れた爪から咲いた花とか

なりたいな 雲の名前がわかる人 遠くを見てても倒れない人

車にも勝てる速さになったけどほんとは横を歩きたかった

覚えてる? 公園で手を振ったとき影は神さまだったおれたち

「行くね」って言われたときにちぎってた草 この傷はべつのだけれど

すぐ消えるくせについてきては消えてまたついてくる虹だったから

本当のことを話すねあのときのガラスの破片の角度について

奪われて奪われてまだ奪われてそんなにおれを生かしたいとは

背中からぬけたナイフの切先に北極星のひかりはこぼれ

この荒れる海路を望んだんだろうゆけ八月をラッパ飲みして

でたらめな高度にギター振り上げて死なない程度のやつはいらない

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nyo
本買ったりケーキ食べたりします 生きるのに使います