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すべてはブラックホールのおかげ!映画「インターステラー」を徹底解説!
大迫力の世界を体験しながらも、宇宙物理について学ぶこともできる素敵な映画、「インターステラー」。
前回の記事では時間の進み方について解説しました。
今回はインターステラー特集第2弾として、作中に出てくる「ブラックホール」について解説します。
少しだけネタバレもあるため、ぜひ映画を観てから読んでみてください。
この作品のキーワード「ブラックホール」
「インターステラー」では、幾度となく「ガルガンチュア」という言葉が登場します。
具体的にこの言葉を説明しているシーンはなかったと思いますが、文脈から
ガルガンチュア=超巨大ブラックホール
と推測できます。
前回もお話ししたように、この超巨大ブラックホールによって時間の進み方が急激に遅くなったり、ものすごい重力に行く手を阻まれたりと、様々な危機に見舞われます。
しかし一方で、ブラックホールがあったからこそ、スリル満点の冒険ができたのも事実です。
まずは、そんなブラックホールの基本情報をみていきましょう。
光すら出ることのできない星の成れの果て
ブラックホールとは、重力があまりにも大きいため、秒速30万kmの光ですら脱出できない天体のことを指します。
私たちは何かを観測するときに、電磁波を含む「光」を利用します。しかしブラックホールからはその光が私たちのもとへ届かないため、真っ暗な穴、つまりブラックホールとよばれているのです。
さらに、下の図のようにとてつもなく大きな重力をもつ星(質量が太陽の40倍以上の星)の成れの果てでもあります。
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そんな正直言って謎の多いブラックホールですが、なんと宇宙に1兆個以上あると推測されています。
ブラックホールの大半は銀河の中心にあるとされており、もちろん私たちのいる天の川銀河の中心にも存在します。
この天の川銀河の中心にあるブラックホールは、2022年に世界で初めて観測されました。
この発見により、2019年の別の銀河の観測に続き2例目のブラックホールが実証され、ブラックホール研究界隈では盛大な盛り上がりを見せました。
さらに、この観測で明らかになったブラックホールの質量は、周囲の星の運動から求められていた値(太陽の約400万倍)とも一致し、直径は6000万kmほど。アインシュタインの一般相対性理論から予測された値と一致したのです。
不完全とも言われている一般相対性理論が正しいと言える証拠の一つになったのです。
この時は、もの凄く鳥肌もので、わくわくが止まりませんでした。
一般相対性理論については、以前の記事も是非読んでみてください。
なぜブラックホールから脱出できた?
「インターステラー」には欠かすことのできないブラックホールですが、作中でブラックホールの重力に引きずり込まれそうになりながらも、間一髪で脱出できた、というシーンがあります。
先ほども説明した通り、ブラックホールは光ですら脱出できません。
それにもかかわらず、なぜとてつもなく大きい重力から脱出することができたのでしょうか?
「フィクションのSF映画だから!」
というのが正直な回答かもしれませんが、それでは拍子抜けだと思いますので、もうちょっと深掘りしてみましょう。
脱出の鍵、それはズバリ、そのブラックホールが「カー・ブラックホール」という回転しているブラックホールだったから!
カー・ブラックホールには、事象の地平線(ブラックホールの入口)の外側に、エルゴ球と呼ばれる「止まってはいられない領域」が存在するという特徴があります。
このエルゴ球を物体が通過する際に、事象の地平線を超えるようにうまく”ゴミ”を捨てることで、その物体がもともと持っていたエネルギーを上回る大きなエネルギーを持つことができるようになる「ペンローズ過程」と呼ばれる事象が起こります。
確かに、作中では宇宙船の一部を切り離して、間一髪で脱出できた様子が描かれていました。
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もっとも、このペンローズ過程はあくまで理論上可能とされるだけで、実際に可能かどうかは今のところわかっていません。
つまり、最終的には「宇宙船のクルー全員が知恵などを振り絞り、かつ奇跡が起こったことで脱出できた」というのが妥当な解釈かもしれません。
それでも、フィクションといえど、理論に基づいてストーリーを描いているのは、本当に心踊る要素の一つであると言えます。
「インターステラー」でブラックホールを楽しく学べる!
いかがでしたか?
ブラックホールについて、少しは身近に感じていただけていたら幸いです。
そして映画というのは、たとえ理論の詳細がわからなくても、観ているだけわくわくしてしまうのが本当に魅力だと感じます。
インターステラーを観たことがない方はもちろん、何回も観たことがあるという方も、今回の内容を頭の片隅に置いていただき、宇宙の面白さを味わっていただければうれしいです。
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