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英語になった日本語たち [第6回] ikigai (生きがい)

英語学習雑誌『多聴多読マガジン』で連載中!

この連載では、海外で通じるようになった日本語のことばを英語で紹介します。古くはsushiやsukiyaki、最近はpokemon、emoji、mottainaiなどなど、その日本語が海外で受容されるようになった背景をひも解いていけば、日本文化の独自性が見えてくるかも……?


第6回 ikigai (生きがい)

ikigai(生きがい)という日本語が国際的な広まりをみせています。私たち日本人にとって、慣れ親しんだことば「生きがい」は、海外の人々には、どのように響いているのでしょうか? なぜこのことばが受け入れられたのでしょうか? 探っていきましょう。

写真:Arianne / AdobeStock

The Japanese word ikigai has gained international attention in recent years. This term is deeply familiar to many Japanese, but how does it resonate abroad? And why has it become so popular? Let’s explore the reasons behind its global appeal.

日本語の「生きがい」という言葉は、近年、国際的に注目を集めています。この言葉は多くの日本人にとって非常に馴染み深いものですが、海外ではどのような反響を得ているのでしょうか? そして、なぜこれほどまでに人気が高まったのでしょうか? 海外での反響の背景となった理由を探ってみましょう。

ikigaiが広まるきっかけと注目が集まった日本のある地域

The worldwide appeal of ikigai began with Ikigai: The Japanese Secret to a Long and Happy Life, published in Spain in 2016. This book highlighted the values and lifestyle of Okinawan elders, introducing Okinawa as a “Blue Zone”—regions of the world known for long-living populations. The book suggested that ikigai is one of the secrets behind the longevity of Okinawans.

「生きがい」が世界的に注目されるようになったきっかけは、2016年にスペインで出版された『Ikigai: The Japanese Secret to a Long and Happy Life』です。この本は、沖縄の高齢者の価値観やライフスタイルを取り上げ、沖縄を「ブルーゾーン」――長寿の人が多いことで世界的に知られる地域――として紹介しました。また、沖縄の人々の長寿の秘訣の一つとして「生きがい」が挙げられています。

ikigaiの定義とその柔軟性とは?

The book defines ikigai as the intersection of four key elements: “what you love,” “what the world needs,” “what you can be paid for,” and “what you are good at.” Beyond life goals, ikigai is also about embracing small, everyday joys. This flexibility makes the concept relatable to people with diverse values and lifestyles, contributing to its universal appeal.

この本では、次の4つの要素――「あなたが好きなこと」、「世の中が求めていること」、「報酬をもらえること」、「あなたが得意なこと」――がすべて重なる中心の部分を「生きがい」として定義しています。「生きがい」には人生の目標だけでなく、日々のささやかな喜びを大切にすることも含まれています。この柔軟性により、「生きがい」は多様な価値観やライフスタイルを持つ人々にも共感されやすく、普遍的な魅力を持つ概念となっています。

画像: orsonsurf / iStockPhoto

現代社会におけるikigaiの重要性

In today’s rapidly changing world, many people are searching for happiness and purpose. Furthermore, the universal desire to live a long, healthy, and fulfilling life transcends cultures and time. Against this backdrop, the concept of ikigai, with real-life examples of Okinawan elders, offers a refreshing perspective. Unlike material success or the weight of a singular “life mission,” ikigai provides a more accessible, practical approach to finding meaning in life.

現代の急速に変化する世界にあって、多くの人々が幸せや目的を求めています。さらに、長く、健康で充実した人生を送りたいという普遍的な願いは、文化や時代を超えて共通しています。こうした背景もあって、沖縄の高齢者の実例を伴う「生きがい」の概念は、新鮮な視点をもたらしました。「生きがい」は、物質的な成功や、ひとつしか存在しない「人生の使命」といったものではなく、人生に意味を見出すためのより身近で実践的なアプローチを示しているのです。

Additionally, as there is no direct equivalent for ikigai in English, the term has been adopted as-is, allowing it to spread across the English-speaking world while retaining its unique Japanese essence.

さらに、「生きがい」に相当する直接的な英語表現が存在しないため、この言葉は日本のユニークな本質的部分を維持しながら、「生きがい」というそのままの形で英語圏で採用され、広まっているのです。

いかがだったでしょうか?
「生きがい」は、決して崇高な目的でなくてもいいのです。
もうすぐ新しい年を迎えるこの時期に、人生の充足感について考えてみませんか?

『多聴多読マガジン2月号』は、来年1/6(月)発売!

【特集】英語キーワード150で読み解く
「どう変わる? アメリカと世界2025」

トランプ大統領が「MAGA(Make America Great Again)」を掲げ、再び政権に復帰しました。その影響はアメリカ国内にとどまらず、世界全体に広がることが予想されます。

1. 外交 2. 経済 3. 地球温暖化 4. 多様性 5. 民主主義

本特集では、上記の5つの視点に基づき、decoupling(関係断絶)、climate justice(気候正義)などの150の英語キーワードを通して、トランプ政権の政策がもたらす世界の変化を予測し、考察します。

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