「児童文学の巨匠 Michael Morpurgo(マイケル・モーパーゴ)が紡ぐ絆の物語」~英語多読のための読書ガイド [児童書]~
英語学習誌🎄『多聴多読マガジン』🎄連載記事「多読のための読書ガイド」からのスピンアウト! 多読のプロたちによるおすすめの良書(英語の本)を紹介するコーナーです。
児童書編 ~2024年12月号~
執筆:小林 裕子 (桜蔭学園講師・SEG(エデュカ)多読講師)
児童文学の巨匠 Michael Morpurgo(マイケル・モーパーゴ)が紡ぐ絆の物語
イギリスの児童文学作家Michael Morpurgoは、現在81歳、100冊以上の作品を執筆し、数々の児童文学賞を受賞しています。
1冊目は The Snowman(2019)。Raymond Briggsの絵本The Snowman(1978)をもとに、Morpurgoが新たな物語を紡ぎました。
Snowmanと少年Jamesの交流が描かれ、冬の寒さが心地よいぬくもりに変わる一冊です。
原作の短編アニメも美しいですが、この新たなSnowmanも映像化してほしいです。
2冊目は Kensuke’s Kingdom(1999)。嵐に巻き込まれ、無人島に漂着した少年Michaelは、旧日本兵Kensukeと出会い、彼との交流を通しサバイバル生活を乗り越えて成長します。
昨年フランスで、今年はアメリカで新作アニメが公開され、ケンスケの声は渡辺謙が担当しています(日本公開は未定)。
物語の随所に日本語が出てくるのも楽しいです。(例:「トモダチ」「アブナイ」)。
Morpurgoは、自然の美しさとサバイバルの厳しさを描きつつ、Kensukeの生きざまを通して戦争の悲惨さも伝えています。
(1) The Snowman: A new story inspired by the original tale by Raymond Briggs
吃音のせいで学校では無口のJamesは、クリスマスイブの日、庭に大きなスノーマン(雪だるま)を作ります。
その夜スノーマンはJamesを北極へ連れていきます。
そこでスノーマンの仲間たちやサンタクロースと楽しいひと時を過ごします。
すると不思議なことに吃音も治り、Jamesも祖母や両親も幸せなクリスマスの朝を迎えます。
クリスマスに読みたい心温まる物語です。
表紙は丸い穴が開いていてJamesとスノーマンが空を飛ぶ姿がのぞけます。
(2)Kensuke’s Kingdom
ヨットで世界一周中に荒海に投げ出されたMichaelと犬のStellaは無人島に漂着。
そこには長崎出身の旧日本兵の老人Kensukeが住んでいました。
島でのできごとを通じて、二人の距離や心情は揺れ動きます。
やがて年齢や国籍を超えた絆、父と息子のような、またはそれ以上のバディ関係が築かれていきます。
単なるサバイバル物語を超え、自然と調和して生きる意味や戦争の傷跡の深さも描かれています。
ラストの二人の選択には胸が締め付けられます。
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