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音楽って、素晴らしい?

人生の半分くらい、吹奏楽部で打楽器をやっている。

って書くとものすごいことのように見えるけど、きっかけはしょーもないことだった。
運動会とかマラソン大会で活躍するタイプの小学生だった私は、先輩方からいくつかの運動部に軽く勧誘されていた。
でも運動部に入る気はしなかったし、なにより
「なんか勧誘されたけど、それ全部断るって かっこよくね?」
と思った。
それで唯一文化部だった吹奏楽部を選んだ。(小5くらいから中二病でした)

そんなノリで入った吹奏楽部は、全然楽しくなかった。
まず顧問がクソだった。今の時代ならあの顧問、全国ニュースに流れてネットで大炎上する。っていうかさせる。
それから人間関係がぐっちゃぐちゃだった。これは中学生の女子ならありがちなことなんだけど、女子コミュニティが今でも苦手な私には相当面倒臭かった。
楽器は好きだったけど、だから部活は大っ嫌いだった。

でも1つ上の同じパートの先輩が大好きで、真面目に部活に行く理由はそれだけしかなかった。
先輩が引退したら自分も部活辞めるつもりだった。私の1つ下は後輩も出来なかったし、あとはどうにでもなれと思っていた。

なのに何故か副部長に推薦されてしまった。
抵抗したけど覆らなくて、辞められなくなっちゃって、めっちゃ腐った。笑。
私 音楽に関してだけは真人間なんだけど、この時期はすべてにおいてクズだったと我ながら思う。
まークズになってもしょうがない環境だったけど(笑)、環境に負けるからクズって言うんだよな。

やっと真面目になったのは、3年生になって後輩が出来てから。
だって後輩たち、可愛いから!!!
クソ生意気だったりしょっちゅう怒ったりしてたけど、でも可愛かった。慕ってくれたし。後輩たちとは まさに相思相愛だった。
ってなったら かっこいいとこ見せたいから、かっこつけるわけです。がんばっちゃうわけです。
3年生の4か月間は、とっても副部長らしかったと我ながら思う。笑。


音楽の楽しさに気付いたのは、高校に入ってから。
表現することの楽しさや難しさ、その先で誰かと繋がれる嬉しさ、1人ではできないことが出来てしまう驚き。普通に人生を送っていたら絶対に出会えない激情が、音楽の中にはぎゅっと詰まっている。
音楽は、うつくしい。
それに気付いた時、私の目には銀色の獣の尻尾が見えた。それは尻尾だけなのにびっくりするくらい美しくて、私はその獣に会ってみたくなった。触れてみたいと思った。
たぶんあの獣は、人間を簡単に滅ぼす。きっと私は何度もぼろぼろになる。
獣の影を見た瞬間そう気付いたけど、欲求には抗えなかった。めちゃめちゃになっても良かった。100回死にそうになっても、たった1回、生きててよかったと思える瞬間があればそれで幸せだと思った。
それが私の高校時代だった。あの銀色を追いかけ続けた。音楽のためだけに音楽をやりたいと思っていたし、それができるとまっすぐに信じていた。とても純粋で残酷だった。

大学に入って少しは落ち着いたけど、私はやっぱり今でも銀色の獣を探している。
何度かとても近くまで行けたし、触れたと思った事もある。その時の震えるような感情が忘れられなくて、今でも追いかけ続けている。


そういう経験をしたうえで、思う。

たぶん音楽って、べつに素晴らしくない。
音楽で腹は膨れないし、家を建てることもできないし、怪我人を治すこともできない。あんな訳の分からない金属の塊もバカでかい木材の群れも、漬け物石にだってなりはしない。村上春樹が小説の中で「壮大な浪費」と書いていたけれど、こんなに時間と労力を使ってまでやるようなことではない。

それでも無駄遣いに加担してしまう。
音楽ってこんなに美しくて、こんなに素晴らしいよと言ってしまう。

それは「音楽って素晴らしいよ」と教えてもらったからだ。
「見てごらん、あっちにも世界は広がっているんだよ」って、「どこまででも行けるし、どこまで行ってもいいんだよ」って、話してくれた人がいるからだ。
それは言葉ではない。
音そのものだったり、練習する背中だったり、上手く行かない時の涙だったり、舞台裏の静寂だったり、別れ際の笑顔だったりする。
端々に潜むメッセージを繋いで、私たちはある日「音楽って素晴らしいんだ」と感じるようになる。どこが素晴らしいのかうまくは言えないけど、でもこんなに素晴らしいんだと笑うようになる。

だからそれを渡していく。そうやって受け継がれて、これからも続いていく。
大きな流れの中に、私たちはずっといる。


今でも吹奏楽やってるよ、すっごく楽しいよ。
音楽って、素晴らしいよ。

そう言ってやったら、14歳の私はどんな顔をするだろう。
ぜんぜん想像できなくて、会ってみたいなと楽しみに思う。

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