視覚障害者=誘導ブロックの真上を歩く、は迷信です!―黙って真上を歩かせると危険が倍増してしまうことも?!

初めての場所への冒険。

初めての電車を使って、とはいえ、3駅ほどのところだったのですが。

しかし、大変、面白いことが起こりました。

まず、行きの電車では、駅員介助をお願いしますと、案内は快く承諾してくれたのですが、実際に来てくれた係員のかたが、

「あ、あっと、えと、ど、どーしたらいいですかっ?」

へえ!こんなこともあるのか!

確かに、実際に腕を触らせてくれてから歩き出すのにとっても心配されおどおどされてなかなか進みだしてもらえなかったり、どうしたらいいかわからない感じの誘導は良くあるのですが、最初から目の前で「え、えと、どーしたらっ」という駅員さんは初めてだったかもしれません。

まあ、街で出会った人などであればまったくおかしなことでも珍しいことでもないし、このときは自然に「腕を触らせてください。掴ませていただいたらそのまま歩いていただければ大丈夫です。」とお伝えしました。


さて。実はこの日、面白かったのは、ここから。

この駅員さん、構内を歩くとき、どうも一生懸命、点字ブロックのすぐ左沿い(私は左手で駅員さんの右腕に掴まっているため、私がどうしても点字ブロックの上にくる位置)を歩いている気がする…!!

私は、平衡機能障害の名残か、点字ブロックの上、身体のバランスをとることができなくなり、歩けないのです!砂利道なども、歩くことができません。

しかし、完全に初めての駅であった上、人も多く、もしかしたらこうしか歩きようがなかったのかもしれないなあと思いながら、なんとかがんばって、点字ブロックからははずれて、駅員さんの背中に必死で触れながら真後ろを歩く形で駅員さんと一緒に点字ブロックの左沿いを歩いてついていきました。


さて。用事の帰り。
大変ありがたいことに、駅まで晴眼のかたが送ってくれました。
最初に「すみません、実は不慣れで」と言ってくださったので、私も遠慮なく「私がつかまらせていただくので、自然に歩いていただければ大丈夫です」と伝え、談笑しながら歩いていたのですが…

途中の歩道で、手引きしていただきながらも白杖で誘導ブロックを触って確認しながら歩いていたとき、

「あ、もう一歩右に行ってください。点字ブロックの真上になるので。」

他の駅員さんたちも恐らくそうですが、誘導に不慣れなかたは、どうやら恐らく潜在的に「視覚障害者は点字ブロックの真上を歩くもの。歩きやすいはず」という認識がどこかにうっすら広まっているのでしょうね。
善意で言ってくださっていることは伝わったので、「いや、実は私は…」と、誘導ブロックの上に行くとバランスを崩して歩けなくなってしまうのだと、説明しました。

さてさて、そしてそのかたとお別れし、帰りの駅の駅員介助をお願いしたとき。
誘導してくださった駅員さん、
ホームで、突然

「はい、点字ブロックの上あるきますねー」

と、思いっきり点字ブロックの真上を歩き始める…。

「あ、う、ご、ごめんなさい!私、誘導ブロックの上、歩けないんです。バランスがとれなくなってうまく歩けなくて…」と、駅員さんの背中に辛うじて指先を必死に届かせながら言うと、駅員さん(おじさん)、「あら、歩けないの?」と。
「でもねー、ここ、こっち(左側)線路なのよ。右側(内側)も柱とかあって狭いのでね。」とおっしゃるので、しかし私としてはバランスがとれないほうが危ないので、「あ、ではとりあえず左側(線路側)歩きます。背中に触って真後ろ歩かせてください」と言って、とりあえずその短距離、なんとか駅員さんの真後ろから背中に指先を届かせた状態で、乗り切りました。
しかし…内側も柱などがあるとはいえ、人の気配もほとんどなかったのですが、そんなに誘導ブロックの上を歩かねばどうしようもないような駅だったのか…。
ふと思うと、もしかしたら、私があえて駅員さんから手を離してひとりの状態で、誘導ブロックからホーム内側に入り、柱やら壁やらを白杖で自分で確認しながら、そして駅員さんに見守ってもらいながらまっすぐの短距離、ついていったほうがふたりとも安全だったかもしれません。
あくまで、「誘導者にくっついていなければいけない」わけではないし、寧ろ誘導者さんと一旦手を離したほうが安全だったりスムースだったりする場面もありますから。
次回からはそういう選択も視野に入れて伝えようと思います。

さて。
やっと、最初に出発した駅まで帰ってきました。

この駅で待っていてくれた駅員さん、行きとは違うひとでしたが、このひともまたやはり不慣れなご様子。
構内を歩いている時、これまた、

「一歩右に行ってください。(点字ブロックの上を歩くことができます)」
と言われてしまったため、丁重にそれはお断りするため、また説明をしました。
(「行ってください」というほど断言される場合は、もしかしたらそのかたの前提的な認識として、「視覚障害者は誘導ブロックの真上を歩くもの&誘導ブロックの真上以外は歩きにくい」というような埋め込みがあるのかもわかりませんね。レールの上しか走ることのできない電車と言うものの身近にいる駅員さんでもありますしね。)

その後、エレベーター、エスカレーター、階段がありますがどれにしますかと聞いてくださり、どれでも大丈夫ですと答えると階段を案内してくれたのですが、3回、階段を案内してくれ、どれも登り階段だったのですが、最初の階段では私が登り始めるとき、一旦止まって私の様子を見ようとするので私も止まってしまい、「大丈夫ですか」と聞かれたので「あ、大丈夫です」と促し、普通に登っていただく、ということがありました。
が、2回目以降は、私が駅員さんが登り始めるのを心なしか待って1段下をついていっていることに気が付かれたのかな?それとも私が心なしか駅員さんの腕に掴まりながら促すように押していたのに無自覚的に気付いたのかな?1段先を歩いてくださり、なかなかスムースに登ることができ、大変たすかりました。


皆さん、本当に善意で、「視覚障害者=誘導ブロック」のイメージで、私たちを点字ブロックの上に乗せようとしてくださったのだと感じます。

大変、大変うれしい、ありがたいのですが、

実は私のように、「点字ブロックの上に乗ってしまったほうが危険が跳ね上がるため、一気に余裕がなくなり歩くこと自体に必死になり焦ってしまう」者もいるのです。

そこまで危険でなければまだ余裕があり、落ち着いてお伝えすることも多少がまんすることもできるのですが、なにせ「ふたりとも危険が数倍に跳ね上がってしまう」ため―特にホームなどだとそれは顕著な話になりますが―やはり、少しでも、僅かでも頭の片隅への周知が広がるとありがたいなと思うことのひとつです。

安全に誘導しようとしてくださっているがゆえに、「視覚障害者はきっと誘導ブロックの上を歩くものなのだろう」という何となく広まってしまっているイメージが先行してしまい、起こってしまう悲劇ですから。

確かに、私たちは誘導ブロックを「使い」ます。
が、決して、誘導ブロックの「真上を歩くもの」でも「真上でなければ歩けない」ものでもありません。
誘導ブロックの存在を白杖の先や足先で触れば、それは確かに、道標になりますが、「レール」なわけではないのです。
しかも、これは、「単独歩行」の際に使います。
単独歩行のさいは、私たちは地面になんの触り心地の違いもないと、ただただどこまでもつるつるの道で、自分たちがどこを歩いているか、まっすぐ歩いているかすらもわかりません。なので、方向を知るための「手掛かりのひとつ」として、使います。
そのため、「今は駅員介助を使っているけれども道は覚えたい!」という人でない限りは、駅員さんが連れて行ってくださるなら、必ずしも誘導ブロックに沿ってカクカク歩く必要もありません。
(時々、「誘導ブロックに沿って歩いたほうがいいですか。それとも最短距離で行きますか」と尋ねてくださる駅員さんがいらして、とてもありがたく嬉しいご配慮です。地下鉄に多い印象ですが。私も道をなるべく覚えたいような時は、「点字ブロックに沿って教えていただけますか」とお願いすることもあります。)

実は、視覚障害者のうち、体幹障害や平衡機能障害といったバランス感覚や足に複合障害がない人であっても、点字ブロックの上は歩きにくい、と言って点字ブロックの横を歩き、白杖で触って伝っている人は多いのです。
と、いうのも、人間、視覚がなくなれば、ただでさえ平衡感覚は弱くなります。

視覚障害や他の障害もなくとも、五体満足の健常者と言われるひとたちであっても、やはり点字ブロックの真上は、足裏が痛くなるとか、なんかバランスとりにくいよなとか、砂利道でも、歩くのが苦手なかた、おられますよね。

実は、障害関係なく、足場が悪いところを歩くことが苦手なかたは、一定数いるのです。

無論、視覚障害者の中でも、点字ブロックの真上を歩くかたもいらっしゃいます。
「視覚障害者だから」とかいう話ではなく、点字ブロックの真上を歩くかどうかは、本人に選ばせていただけると、大変助かる上、私のような複合障害の場合は、お互いの安全を守ることにつながります。
私たちは「点字ブロックの上を歩く選択」をするにせよしないにせよ、まず点字ブロックの位置がわかりませんし、点字ブロックの上を踏まねばならないほどぎゅう詰めの状況下なのか、などもわかりません。
私たちは、「思っている場所を歩けない」障害なのではなく、「思っている場所や歩きたい場所が<どこにあるかがわからない>」障害であるだけなのです。
視覚情報をお手伝いいただき、誘導ブロックを使うかどうかも、本人に決めさせていただけたら、駅やホームや車道ぎりぎりの道路などという危険なダンジョンにおいても、誘導者のあなたも誘導していただく私も、また周囲のかたの安全も、高く確保することができます。

私も私自身に必要なことを、しっかりと言語化していくことができるように精進しますので、

ほんの頭の片隅にでも、埃をかぶるような程度でも、知っておいていただけたら、大変、大変、助かります!


いつも、私たちの安全も守ろうとしてくださり、皆様本当に本当に、ありがとうございます。

皆様が私たちの安全も見守り、守ろうとしてくださるからこそ、私たちも、よりお互いの安全を確保し向上させる情報を、お伝えしていこうと思います。

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