視覚障害の歩き方―素晴らしくありがたい配慮の連鎖!
この日は、なんと、あたたかさの連鎖の日でした。
素晴らしくありがたい心遣い①
朝、家を出て、家の前の路地を歩き始めた途端、私の右斜め前から
「あ、自転車通りますねー」という声とともに、私の右側に自転車の音が聞こえてきました。
ぶつかるような狭い道路でもなかったし、自転車も私とすれ違うことのできる形で通っていってくれたけれど、私がいつぐらりと曲がってしまったりするかわかりませんよね。しかも、私は実は、この声かけがあったのち私のほぼ右側で自転車の音がするまで、自転車が前方から来ることに気付いていませんでした。
この声かけのおかげで、斜め前方から自転車が来ることがわかり、心づもりもしてゆっくり直進し、安全にお互いすれ違うこともできました。
これは、大変親切なお声がけ!
素晴らしくありがたい心遣い②
バスに乗り、いつも通り運転手さんの後ろの手すりに張り付いていたら、左上の席(つまり運転手さんの真後ろの数段上にある高い席)から、声が。
「高い席だけど、登れます?席、代わりましょうか」と女性の声。
いやいや!わざわざそんな席から降りて代わっていただくほどでは!
「それは申し訳ないです!ありがとうございます!」と、ありがたさいっぱいを極力醸し出しながら丁重にお断りしたのですが、そのなんとすぐ後に、今度は後ろのほうからおじさまが私の肩をとんとん。
そちらを向くと、
「あの、このかたが、席空けてくださったので座れますよ。」と言いながらしぜーんに私を優先席へ誘って座らせてくださいました。
「申し訳ないです…ありがとうございます!助かりました!」とお礼を言って甘えましたが、ここで、席を譲ってくれたことよりも、そしてまた他のかた(おじさん)が席が空いたことを教えてくれたことよりも嬉しかったのは、
そのおじさんが、「このかたが席を空けてくれた」という状況をさらっとまっすぐに教えてくださったということ!
こういう時、ただ単に「席あきましたよ」とか言って、座らせてくださるかたが多い(特に私の体験的には駅員さんに多い)。
が、こういう時、「誰かが立って譲ってくださった席」なのか、「もともと空いていた席」なのか、わからないので、譲ってくださっていた場合、私にはお礼を言う機会が失われてしまいます。
今回、その状況も教えていただいたおかげで、私はそのおじさんにも、そのあけてくださったかたがいらっしゃるであろう方向にも、お礼を叫ぶことができました。
素晴らしくありがたい心遣い③
今度はなんとそのバスを降りるときです。
いつものように運転手さんの方向へ「ありがとうございました」と言って降り口に向かい、降り口の扉を発見すると、そのタイミングで、運転手さんのマイクを通した声で、
「少し(歩道の段差から)離れているのでお気をつけて」との声!
いつも、バスと歩道の段差の感覚は白杖で慎重に何回かあちこちつついて確認しておりますので、口頭情報で「少し離れているよ」という手掛かりをいただけると、その情報もいつものあれこれの予測や杖での測量作業(確認作業)に含めて、探ることができます。
おかげで、先にちょっと斜め前方の下のほうへ白杖を突き出してみると、すぐに歩道の段差が見つかり、スムースに降りることができました。
素晴らしくありがたい心遣い④
行き先は区役所だったのですが、実は、この日は休館日。
休館日なのですがちょっと区役所での催しへの参加で朝から出向いたのでした。
バスていから区役所の近くまでは誘導ブロックがあるのですが、区役所の建物の周りだけ、ちょっと不規則な形になっており、自転車を止めるエリアがあったり、バスが建物の周りをまわることができるようにちょっと曲がった太い道路があったり、行き慣れてもなかなか難しい。
区役所の建物のある歩道まで行き着いても、その歩道にのぼろうとすると、自転車がとめてあるエリアですよを示すための金属のガードレールのようなものと鎖があるのです。
これを探りながら探りながら、切れたところから、歩道によいしょとのぼって建物のほうへ向かわねばなりません。角度も距離もなかなか難しい。
これが、よいしょよいしょと少しずつ金属ガードレールを探りながら近づいていると、前方から今度は
「おはようございます!区役所ですか?」と、男性の声。
「おはようございます!」と来たから区役所の人かな?参加予定の催しのために外に出ているスタッフさんかな?と思い、
同じくおはようございますと返して「はい、そうです」と答えると、
「あ、じゃあ一緒に行きましょう」と。
手引きは慣れていないようで、私の腕をとって下から支えるようにしてきたので、「あ、私がつかまらせていただいてもいいですか」と聞いて半歩後ろからそのかたの肘の上あたりに掴まろうとすると、「ああ、いいですよいいですよ」といいながら、私につかまらせてくれながらもその手先は私の肘の下にくにゃりと回し入れどうしても支えようとする(笑)
なかなか逆に歩きにくいし男性の動きや体の方向がわかりにくいので、「あ、あ、」という私の僅かな感覚を察して「あ、はやいですかっ」
「いや、あの、つかまらせていただければ、そのまま歩いていただけると助かります」ともいったのですが、結局どーにも「くにゃり」と私の肘の下に回し入れて支え上げようとする体制はとれずでした(笑)
そのままエレベーターで目的の階までも連れて行ってくださり、やはりスタッフだと思いこんだのですが、会場のスタッフさんがその男性に向かって、
「わざわざお連れしてくださったのですか!ありがとうございますー!」と言っておられたので、ん?どーやらこの催しとは関係のない人だったのか?エレベーター乗る時も、「何階に行きますか?」と聞かれたしなあ…
このかたが区役所やこの催しと関係のあるかたかないかたか結局わからずじまいだったのですが、しかしこの男性のように、「おはようございます!」「こんにちは!」などの挨拶は、基本的にだれがだれにしても、道をすれ違うひとにしたって本当はおかしくないもの。
もし、白杖のひとにどう話しかけたらいいかわからない…切り出しにくい…というかたがいらっしゃったら、まずは「おはようございます」や「こんにちは」でも、お互い心地良さがあるかもしれないな、と思いました。
ただし!白杖使用者は、突然あいさつされても「自分に対して話しかけられているのか」はわかりません。ですので、もしかしたら自分に話しかけられていることを認識できず無視してしまう可能性があります。
できれば、「そこの白杖のかた」などとどこかに付け加えていただけると、大変助かります。
素晴らしくありがたい心遣い⑤
帰るとき、スタッフのかたがバス停まで送ってくださいました。
スタッフのかたが去ったあと、バス停で待っていたらしき女性のかたが、
「どちらに行くんですか?」と聞いてくださり、行き先を答えると、
「あ、じゃあ同じバスだ、一緒に乗りましょう」と、一緒に乗ってくれました。
そして、前方を向いて左側の一番前の優先席(前向きの座席。前に横方向の手すりがある)に連れて行ってくださり、「はい、ここに掴まって座れますよ」と、手すりに触らせてくださり、私が座ることを見届けて、「ごゆっくり」と、別の席へ行かれました。
ごゆっくり旅を楽しむ気になりました。(笑)
素晴らしくありがたい心遣い⑥
そして、乗っていると、今度はなんと…!!
若い感じの男性が、おずおずと、少し緊張して躊躇したような声と言い方で、
「あ、あの…さっきバス停で話を聞いてたんですけど、〇〇(停留所名)、僕も降りるので、えーと…か、介助とか、必要ですか?」
きっと勇気を出して話しかけてくれたのかなあ!
嬉しくて、ありがたくて、「ありがとうございます、助かります!」と答えると、目的地のバス停のひとつ前のバス停でもう一度「次が〇〇です。」と声をかけてくれ、バス停についたら、「あ、じゃあ、どうしたら…」とまた声をかけてくれたので、「つかまらせていただいてもいいですか」と聞き、「はい、どうぞ」と、肘を差し出してくれたので、バスを降りて歩道に出るまで手引きしていただき、助かりました、ありがとうございます、と伝え、お別れしました。
こんな素敵な連鎖、ひとつの記事でまとめて書かずにはおれませんね。
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