視覚障害者が嬉しいと感じた配慮―下町の気さくさ
最近、殺人的な酷暑です。
そんなある日、徒歩10分くらいの地下鉄の駅まで。
実は誘導ブロックでほぼ一本道なので、だいぶ慣れている道なのですが、そんな中でも、大抵白杖使用者にとっては1つや2つの難関がある。
駅に到達する直前に、4車線の長い横断歩道という難関が待ち構えています。
しかも、音響信号がないのです。
4つ辻になっており、渡ろうとする信号の90度直角方向(つまり真横に渡る)横断歩道には音響があるので、つまり隣の音響信号が鳴っているあいだは、こちらは赤ということ。
そして、隣の音響が消え、渡ろうとしている車線の車の往来の音が止まれば、渡ることができるはず……
それでも、長い横断歩道。怖いものです。
しかし、ヒトの気配もあまり感じることができず、声をかけてくださるかたもなければ、それしか方法がない。
…しかし。この日はなんと、その上に。四つ辻の対角のほうで、どうやら工事をしているらしく、工事の音で隣の音響信号も聞こえづらい!
目の前の往来も、工事の音で車の音なのだか工事の音なのだか判別しづらい!
必死で耳をそばだて角度を調整しながら、聞き耳を立てていましたら、救世主があらわれました。
「ここ、わたるの?」と、下町のおじいさんの声。
はい、ここを渡りたいのです。と答えると、そのおじいさん、私の手をとってご自分の腕をつかませてくれました。
「駅行くの?」
「はい、地下鉄に行きます。」
「わかったー」
と言って、横断歩道を渡った先の地下鉄の入り口まで連れて行ってくださるようす。
と、すると、
「暑いから、気をつけたほうがいいよ。水持ってる?」
なんと微笑ましい。
白杖使用者の横断歩道を渡る手伝いをするのに、水を持っているかどうかを尋ねてくれますか!
実はその後も、「何か工事のような音で信号の音も車の音もわからなくなってしまっていて…ここ、工事しているんですか?」「うん、斜め向こう、もっと行ったところだけどね、工事してる。この横断歩道は工事してないからだいじょーぶよ。」などという会話もしていたのですが、この間、すべての会話が、まるでまったく同じトーンで行われていました。
白杖使用者に手を貸すために必要な情報を出すとき聞くときと、まったく関係のない他愛のない日常会話で情報を出したり聞いたりするときと、まるで変わらない。
(記事で文字だけ読むと、何が不思議なのかと思うかもしれませんが、「白杖使用者を助ける」場面の言うこと聞くことのときのトーンと、まったく別の会話をするときのトーンががらりと変わる人のほうがとても多い気が私はしています。)
しかも、横断歩道を渡る手伝いをしてくださっただけなのに、まるで祖父と孫かのような日常会話を挟み、水分補給の心配までしてくれる。
これが下町の気さくさ。
とてもほっこりと嬉しい瞬間。
そして、私にとっては大変なる緊張の瞬間だったので、大変助かりました。
しかも、緊張と恐怖をいっぺんにとかしていただきました!
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