X100Vで星撮り
そういうカメラじゃないでしょ、というツッコミは置いておいて。
でも、X100V始めFUJIFILMのカメラって星雲の赤色をしっかり写すらしく(星雲が出す赤寄りの波長(Hα線)の領域までセンサーの感度特性が確保されているため。Hα線を通すと一般の被写体の色再現に悪影響するので、他のメーカーでは透過率が抑えられており、その結果星雲の赤色が淡くにしか写らない)、他の機種と比べてどこまで違いが出るのか興味もあり、チャレンジしてみました。
準備段階から書いてみます。
ポータブル赤道儀を購入
星の撮影(以下、星景撮影で統一します)で役に立つのが赤道儀。
ご存じの通り、星も太陽や月と同じように日周運動をします。地球が自転しているからそのように見える訳ですが、ということは24時間で約1回転(=360°)、つまり1時間に15°動いて見えることになります。
これが露光時間ちょうど1時間の例(2012年12月14日山中湖で撮影)。
これは軌跡を撮るためにここまで長時間露光しているだけですが、普通に十数秒~数十秒露光して撮影しているだけでも、三脚にカメラを据えているだけだと星は動いてブレてしまいます。
そこで登場するのが赤道儀です。
原理としては簡単で、上の写真で分かるように星はある1点を中心に回転しています(これが地球の自転軸(地軸)を延長した先にある北極星(ポラリス)ですね。余談ですが、地軸はそれ自体が長期的に円を描くようにブレている(これを歳差運動と言います)ので、北極星は時代によって変わります。そのため、例えば12,000年後には、おりひめ星として有名なこと座のベガが北極星になるそうです)。
ということは、北極星を中心に星の動きに合わせてカメラ自体を動かせば、露光中の星の動きを打ち消せるはずです。そのような働きをするのが赤道儀、という訳です。
本来は天体望遠鏡を載せるしっかりしたものを赤道儀というみたいですが、構造を簡略化した星景撮影向けのコンパクトな「ポータブル赤道儀」もあり、今回購入したものもこれに当たります。
買ったのはVixenの”ポラリエ”。
形がカメラ風になっていて、黒のカメラ・白のポラリエの組み合わせがとても可愛いです。
まずは予行練習
実際に撮影に挑む前に練習をしてみます。
ぶっつけ本番だと、真っ暗な中で何が何だか…となりかねないので、練習、とても大事です。
まずは三脚にポラリエを載せて、真ん中の円形の金属部分(雲台ベース)に自由雲台を取り付け。その上にさらにX100Vを載せます。こうすることで、ポラリエで星に合わせてカメラを動かしつつ、カメラは自由に向きを変えて撮影することができるという訳ですね。
だから、このようにカメラを真上に向けることだってできます。
仕組みは上で書いた原理の通りで、北極星の方向に向けたポラリエ上の雲台ベースが星に合わせて回転し、その上に載ったカメラも回転する結果、露光中の星の動きが打ち消される(=長時間露光しても星がブレない)ということになります。
このときポラリエを正確に北極星の方向に向ける(これを極軸合わせと言います)必要がありますが、この作業自体はそんなにハードル高くないです。
実際に何度か練習で星を撮ってみましたが、北極星を見つけてしまえば極軸合わせはけっこう簡単で、撮影結果も問題なさそうでした。
いざ撮影、野島埼灯台へ
フィールドで数回練習を積んだ後、満を持して撮影に。新月近くの月明かりのない日を選んで、千葉の最南端・野島埼灯台に向かいました。
結論から言うと、めちゃめちゃ星が見えて、めちゃめちゃしっかり撮れました。文字通り、満天の星空。星空スポット自体そんなに行ったことがあるわけではないけど、山中湖とかと同等かそれ以上に見えた印象です。星の瞬きが聞こえそうな、といった感じ。
現場に着いたのが午前2時過ぎていたので、周辺の風景もなくいきなり結果に入りますが、一気にどうぞ。
しっかり星が止まっています。天の川の色もしっかり出ていますね。画角の制約もあって星空のごく一部しか切り取れませんが、それでもこんなに星があったのかというくらい写ります。その上、ノイズも十分に少ないように感じます。X100Vすごい…。
ちなみに、撮影データは概ね SS 25~30sec., f3.2, ISO800(X100Vなので焦点距離は35㎜判換算35㎜)といったところ。ポラリエの精度的にはまだ余裕がありそうなので、もう少し露光時間を伸ばしても大丈夫そう。それに加えて1段くらい開放にして、その分感度を下げれば、まだ画質は向上の余地がありそうです。
撮影にかけられたのが実質約3時間、しかもオリオン座など華やかなエリアは沈んでしまった後だったので、若干心残りはありますが、X100Vでここまで写せることが分かっただけでも十分収穫です。
ネット上でもX100Vで星撮りした記事ってあんまり見つからないので、何かの参考になれば。
今年はこれからポラリエをいっぱい使って星撮りしていきたいと思います。夏の天の川も楽しみ。それではまた。
夜明け前の南房総市は南国感に溢れてました。