仕事でも感情を持ち込んでみよう
日本ではよく「仕事に感情を持ち込むな」と言われます。私も社会人になってから何度もこのセリフを耳にしてきました。確かに、個人的な感情に振り回されてばかりでは、仕事が成り立たないかと思います。
しかし、常に感情を横に置いて働き続けることが良いことなのでしょうか。それで成果が上がるのでしょうか。
そもそも感情を押し殺して働き続けることは可能なのでしょうか。
感情を放置したらどうなるか
私が前職でリーダーを務めていた時のことです。
部下であるメンバーの1人が、なんとなく仕事に集中していないなと感じる時期がありました。普段は一生懸命仕事に取り組むタイプでしたが、ある時期からずっと心ここに在らず状態で、ミーティング中も発言もなく、小さなミスも増えるようになりました。
「大丈夫?」と声をかけても「大丈夫です」との返事。しばらく様子を見ていても変化がなく、これは何とかせねばと、彼女を呼び出しました。
「ミスが多いよ。このままだと外部の人にも迷惑がかかる。ちゃんと仕事に集中して!」と注意をしました。
すると彼女が突然泣き出してしまいました。
よく事情を聞いてみると、実は大切な友人を亡くして、そのことをずっと引きずっているとのこと。仕事をしているときは割り切ってそのことを忘れようとしていたけど、なかなか切り替えができずに、ふと気がつくと友人のことを思い出してしまう・・・と話してくれました。
「仕事で迷惑をかけてしまって申し訳ないとわかっているのだけど、気持ちが追いつかない。本当にすみません。」と大粒の涙を流しながら気持ちを伝えてくれました。
彼女の話を聞きながら、状況を聞きもせずに一方的に注意してしまった自分を反省しました。そして話し合った結果、一旦、急ぎの案件は私や他のメンバーが引き受けて、しばらくは締め切りに余裕がある仕事からゆっくり進めてもらうことになりました。
私が彼女の事情や気持ちをそのまま放置していたら、恐らくもっと大きなミスにつながったり、一方的に責めることで彼女を精神的に追い込んでいたかもしれません。自分への反省とともに、仕事を円滑に進めていくためには、働く人の気持ちに目を向けていかないとダメなんだと実感させられました。
感情を取り扱おう
これまでの組織では、成果を上げるために、常に同じ状態で効率よく合理的に働くことが求められてきたと思います。そのため、仕事にプライベートなことを持ち込まないことが効果的とされていました。
しかし私たちはロボットではないので、常に一定の状態では仕事ができません。多かれ少なかれ気持ちの状態と仕事の成果は影響します。
特に、ネガティブな気持ちが渦巻いていると、仕事に集中できなかったり、周囲に気を配る余裕ができなくなり、トラブルを起こしてしまったりというダメージを招くことになります。
「実はこんなことを抱えていてちょっと落ち込んでる」
「顧客対応でこんなことがあって辛かった」
「本当はこんなふうにしたかったのに実現できずに悔しい」 など
こういう感情は、チームメンバーに共有してみてもよいのではないでしょうか。
むしろ、チームや会社としてのダメージを最小限に抑えるためにも、こうした感情ほど早めに共有しチーム内で助け合うことが成果にもつながるのではないでしょうか。
誤解をしてほしくないのが、感情を取り扱うといっても、職場内の誰かに対して矛先を向けて傷つけてしまうような感情のことではありません。
「改まって話すことではないのかもしれないけど、胸につっかえるものがあって、なかなか仕事に集中できない・・・」という意味の感情です。
チームで感情を共有するためのヒント
感情をチーム内で共有するには、前提として、感情を出しやすい人出しにくい人といった偏りをなくすことがポイントになります。できるだけみんなが感情を打ち明けられる、色々な感情にもみんなで向き合う、そんなチームや組織づくりが大事です。
例えば、感情を共有することを仕組みに入れている企業もあります。「チェックイン」と言われる手法ですが、朝礼やミーティングの前に今の自分の素直な感情を共有するんです。最初でメンバー全員の感情を共有することで、その日のメンバー同士の言動に配慮や助け合いが生まれたり、コミュニケーションの質が変わったりします。こうしてチーム内で自分たちの感情を取り扱いながら、成果を上げて行くのです。
共有して欲しいのは、ネガティブな感情だけではありません。
ポジティブな感情こそどんどんチーム内で取り扱って欲しいです。
「こんな嬉しいことがあった!」
「お客様からこんな言葉をかけてもらって救われた」
「こんなことに幸せを感じた」
ポジティブな感情は幸せの連鎖を生み出します。
楽しい!ワクワク!嬉しい!
こういう感情が広がっていくと、組織が活性化されると思います。
感情が人を動かす
人を動かすのは感情です。
自然に湧いてくる感情に蓋をするのではなく、向き合ってみる。そしてメンバーに共有してみること。
成果を出すためには、感情を横に置くことではなくて、感情と上手に付き合うことだと思います。
メンバー同士で感情を取り扱ってチームとして成果を出しながら、幸せに働くことを探求してみてくださいね!
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