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【化粧品開発者が教える】明日からできるヘアケアの基本

はじめに

はじめまして、「コスメの森」メンバーのかこです。
これからヘアケア記事を担当していきますのでよろしくお願いします。

かこ(Xアカウント)

私が化粧品開発者を志したのは、中学生のころ、成分表示に興味をもったのがきっかけです。中でも当時から今までずっと興味関心が高いのが、シャンプーをはじめとするヘアケア。

各社が趣向を凝らしたパッケージに、いい香り。「これを使ったら理想のサラツヤヘアになれるかも?」という期待感も含めてヘアケア製品の魅力だと思っています。

でも、当時の私は知識がなかったので、期待を裏切られることのほうが多く😅、自分で納得のいく状態をキープできるようになるまで時間がかかってしまいました。

もちろん自分でいろいろな製品を使ってみることも必要ですが、少し知識があるだけで、闇雲に試す必要がなくなるので遠回りは減ります。読者のみなさんには、少しでも遠回りを減らしていただきたいと思っています。

髪は生物学的には「頭部を保護すること」が最も重要な役割です。一方で、現代においては「清潔感」「若々しさ」「オシャレ」といった「印象」を左右する存在でもあります。

朝、鏡の前で「今日はヘアスタイルがいい感じだな」「髪がツヤツヤだな」と思えると、いい気分で一日がスタートできますよね。

そのために、専門的な知見はもちろん、明日から試したくなるような、わかりやすく具体的なヘアケア情報をお届けしていきます。

化粧品開発者の視点で、そしてちょっぴり個人的な視点も交えながらお伝えしますので、ぜひ、気軽に読んでみてくださいね。

今回の記事では、髪を扱う際の基本的な考え方を、「へぇ~そうだったのか」というトリビアを交えながらご紹介していきます。

朝、髪が少しでも扱いやすくなったり、「最近ちょっと髪のツヤが増したかも」と感じたりできるよう、専門的な内容も紐解きつつ、すぐにできる『具体的な行動』にまで落とし込んでみました。

「自分も理想のサラツヤヘアになれるかも」——そんな期待を胸に、まずは「髪の基礎知識」と「修復」の本当の意味からスタートしていきましょう。
この基本を理解すれば、巷の広告文句に惑わされることなく、自分に合ったケアを賢く選べるようになります。


①傷んだ髪は元に戻せる?「修復」の真実

ここからは、ヘアケアの「基本」を押さえていきます。なぜ髪は傷むのか? トリートメントなどの説明で使われる「修復」という言葉はどういうことなのか?
こうした基本を知っておくことで、日々目にする「髪を修復します」という謳い文句に振り回されることがなくなります。

まずは、「髪そのものに栄養を届けることはできるの?」という疑問から紐解いていきましょう。

髪に根元から栄養を届けることはできる?

トリビア1:生えている髪の毛は「死んだ細胞」なので、根元から栄養を補給することはできない

よく頭皮は土、髪は植物に例えられますね🌳
植物には根から吸収した水分や栄養を茎・葉まで運ぶための管が通っているので、葉先まで水分や栄養を行き届かせることができます。

一方、髪の毛には血管や神経が通っていません。したがって、食べ物で栄養を採ったり、頭皮に栄養を与えたりしても毛先に届けることはできません

ですから髪の毛は一度生えたら基本的には傷む一方で、自分で傷を治す能力はないのです。生えた時点がいちばん良い状態で、その後は老朽化が進んでいくイメージです。

植物と毛髪の違い

髪の毛は、いちばん根元の部分でつくられます。毛乳頭(もうにゅうとう)と呼ばれる組織の指令により、毛母細胞が分裂し、髪の毛となります。

血管が栄養を供給するのは根元の毛母細胞までで、その先の髪の毛には体内から栄養が供給されることはありません

ここまでで、生えている髪そのものには内部から栄養を行き渡らせることができないことがわかりました。では、もし髪が傷んでしまったらどうなるのでしょうか?

次のトリビアでは、“傷んだ髪は元に戻るのか”という、ヘアケアの根本的な疑問に迫ります。

傷んだ髪は元に戻る?「修復」の意味とは

トリビア2:傷んだ髪は元通りにはならない

冒頭から、落ち込ませるようなことばかり続けて申し訳ありません😂

でも、私はこの2点を理解して初めてヘアケアのスタート地点に立てるといっても過言ではないぐらい、重要だと思っています。
なのであえて強めの言葉を使いました。

これらを知っていることでヘアケア製品の謳い文句に過度に期待せず、冷静に選べるようになるからです。

ここで髪の毛の構造を見てみましょう。

花王 ヘアケアサイトより引用

髪の毛は、毛穴(毛根)の奥で作られる「死んだ細胞」です。
主成分はタンパク質の一種であるケラチンで、その外側をキューティクルとよばれるウロコ状の物質が覆っています。このキューティクルが傷むと、髪のツヤやなめらかさが失われ、さらに内部のタンパク質・脂質が流れ出やすくなります

そして先ほどお伝えした通り、傷んだキューティクルや、流れ出た髪内部の成分は現在の技術では元通りにはなりません

ボロボロになって中身が出たクッションを、つくろったり綿を詰めたりして元通りに近づけることはできても、新品のときと全く同じには戻せませんよね。それと同じです。

ですが、がっかりする必要はありません!

元通りにならなくても、ヘアケアによって元通りになったかのような、あるいはそれ以上のなめらかな手触りやツヤを出す方法はありますし、化粧品メーカー各社は日夜そのための研究を行なっているからです。

ここまで読まれてお気づきの方もいると思いますが、
ヘアケア製品の謳い文句の「髪を修復します」というのは「元通りにはならないけど元通りっぽくします」という意味です。

それは別に悪いことではなく、完全に元通りにはならないことを理解したうえで、各メーカーの元通りっぽくする技術を大いに活用していただきたいと思います。

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