ひとの“生きざま”に触れる|受け入れ先の紹介②株式会社櫻想(侍)
あなたは、「死」について真剣に考えたことがあるでしょうか?
わたしたちの誰もにいずれ訪れる「死」。それは、もしかしたら明日かもしれないし、今、この瞬間に訪れるかもしれません。でも、そのことについて、実感をもって捉えたことのある人は、わたしも含め、あまりいないんじゃないかと思います。
自分がどんな死を迎えるのか。どんなふうに死んでいきたいのか。それはつまり、自分がどんな生き方を望むのかということと、切り離すことのできない背中合わせの“問い”。
“新しい介護”事業を展開する株式会社櫻想(侍)での経験は、単なる福祉や介護現場での経験を得るという以上に、そんな人の生き死にを、ひいては自分自身の生き方を深く考えさせられる時間になるかもしれません。
“生ききる”ということ
そう穏やかな表情で話す株式会社櫻想(おうそう)代表の諸橋さんと櫻井さんからは、人の選択と人生に真正面から向き合っている静かな覚悟が垣間見えました。
櫻想は、介護事業を展開する事業者ですが、一般的な介護とは違う「新しい介護」を目指しています。
通常、介護と聞いて想像するのは、デイサービスや老人ホームなど「サービス」と言ったイメージが強いのではないでしょうか?もちろん、利用者さんをサポートするという点は櫻想も同じですが、その姿勢や対象が大きく異なります。
たとえば、櫻想にたどり着くのは、身寄りがなかったり、住む場所がなかったり、お金がなく生活保護を受けていたりする生活困窮者がほとんど。その方たちが住めるアパート等の場所を準備し、必要な介護支援を提供しているのが櫻想です。
食事介助や入浴介助など、一般的な介護支援はもちろん、利用者さんの死を看取ったあとの葬儀の手続きや、自己破産の手続き案内など特殊なサポートのほか、ゴミ屋敷の片付けから引っ越し、入退院の手続きと費用の支払いなど利用者さんの人生に幅広く関わっていきます。
そして、その全てはあくまでも利用者さんの意思に基づいたもの。
たとえ第三者から要請があったとしても、それが櫻想が簡単にできることだったとしても、本人の意思が別のところにあるのなら、櫻想がサポートに入ることはありません。
人手不足や、施設職員による利用者の虐待など、社会問題として取り上げられることも多い介護業界。
その裏には、福祉という“良いこと”とされる分野であるがゆえに、過剰なサービスを提供せざるを得ずに疲弊する現場や、利用者本人の意思を無視した“良いこと”の押し付けにつながりやすいといった現実があります。
長年介護業界で働いてきた櫻井さんや諸橋さんは、そういった介護業界を変えたいという想いで立ち上げたのが、株式会社櫻想(侍)。
その全てが、“生ききる”ということに向き合う理念につながっています。
生きるとは、どういうことなんだろう?
老いと死。
長く生きれば、誰にでも平等に訪れる未来。
ですが、「クリーンで便利」であるために、生死を分断しがちな現代の日本では、その現実と今を生きる自分とをつなげて捉えられている人は、なかなかいないのではないでしょうか。
櫻想での活動は、そんな大切でありながら避けられがちな「生と死」の問題と向き合う現場に入り込むからこそ、「いかに生きるのか?」という問いと深く向き合う経験になる。それは、ときに想像以上に重い経験になるかもしれません。
でも、生と死の狭間で、真剣にこれからの介護や福祉、社会のあり方について考えたい人、取り組んでみたい人にとっては、これ以上の糧を得られる現場はないと思います。
介護の世界に吹かせる新しい風
利用者さんの意思にしっかり向き合うという以外にも、新しい取り組みに積極的な櫻想。子連れ出勤や、スタッフさんへの事務所の解放、食事の提供などといった待遇面の工夫から、介護業界の働きやすさを改善していこうといった取り組みにも力を入れています。
また今後は、安全や衛生といった観点から、専門職もしくは、家族という閉鎖的な場に閉じ込められがちな介護をもっと開かれたものにしたいという想いがある櫻井さんは、今後、そんな開かれた介護の場をつくろうと構想中なんだそう。
介護や福祉だけでなく、年齢、性別、国籍を超えて、そういったいろんな人が集まる“ごちゃまぜ”な場づくりに興味がある人も、櫻想での活動は充実したものになるかもしれません。
受け入れ先概要
▼受け入れ先
株式会社櫻想(侍)
▼主な活動場所
千葉県市原市五井中央南
JR五井駅から徒歩13分程度
▼活動キーワード
介護、福祉、社会課題、ソーシャルビジネス、コミュニティ
▼こんな学生さんに来てほしい
◎人と関わるうえで、挨拶や感謝など基本的なことができる人
◎現場で起きていることを素直に受け止め、咀嚼できる人