ディスコース研究のやり方

背景を知る

  • 方法の背景となる資料,調べたいトピックに関する資料を読む。

  • さらにいくつか読む。

  • 調べたいデータのタイプを決める。

データを集める

  • データを集める。データが印刷された資料なら,分析に進む。

  • 会話データを集めるのなら,録音して集める。

  • 録音を聞く。

  • トランスクリプトを作る。

    • 録音を聞いているときに引っ掛かりを感じることがあるので,文字起こしは自力でやるのが望ましい。

  • トランスクリプトをチェックする。

分析する

  • トランスクリプトないしはデータを読む。

  • 読み続ける。興味深い特徴を探すことと,「直観的な引っかかり」を育てることに取り掛かる。

  • テーマに関する索引と,ディスコース上の特徴に関する索引を作り始める。

    • 引っかかったところや繰り返し現れる表現のところに印をつける。一定のルールを決めておくと良い。

    • 似たものがいくつかあったらコード化する。コードは暫定的で,より適切なものがあれば替える。

    • コード化は包括的に行うべき。コード化が終わったら,同じコードが振られたデータを集める。

  • 読む,読む,読む。特にデータと照らし合わせて「直観的な引っかかり」の正確さを確かめるために読む。反証例を探すよう常に心がける。

    • 同じコード名の下に集められたデータを何度も読む。

  • 予備的な分析を書き始める。データの細部と照らし合わせて「直観的な引っかかり」を検証する。常に批判的であれ。

  • データを読んで,頭に浮かんだことをメモする=予備的な分析。

  • パターンは,データの中にあるのではなく,自分の頭の中に作り上げるもの。データを体系的に整理していけば必ずパターンが発見できるとは限らない。パターンを見つけるとは非常に創造的なこと。ディスコース分析の研究では,科学者の解釈レパートリーのように,複数のパターンを見つけることが多い。この場合,それぞれのパターンは独立した関係でなければいけない。はじめから最終的なパターンが見つかることはまずない。暫定的なものを足がかりにして,データを再度読み,チェックし,より良いパターンに修正していく。

分析を洗練させる(分析の妥当性を高める)

  • 分析の草稿を書いては書き直す。さまざまな抜粋を比較し,抜粋の細部を見,そして反証例に注意を払うこと。(=反証例への注目)

    • 仮説に反するデータを意識的に探さなければならない

  • 全く不満のないバージョンを作り上げるまで,書き,読み,考え,分析し続ける。(=データ全体の説明)

    • データ全体を説明するバージョンのパターンを作り上げる。

    • パターンはできるだけ少なく,シンプルな方が望ましい。

    • 仮説を生みっぱなしではいけない。その仮説がデータを十分に説明するかどうかを確かめること。

  • 他の研究との一貫性を検証。(Potterがあげたその他の妥当化方法は,参加者の指向性,逸脱したケース,読者の評価に注目すること)

    • 他の研究の知見との一貫性が新しい研究の価値を判断するから。

文章にする

  • 研究の背景,目的,リサーチクエスチョン→方法→結果→考察や結論

    • 結果セクションの抜粋はパターンの典型例である。

  • いつでも第1段階へ戻るように。

引用文献:鈴木聡志(2007),会話分析・ディスコース分析―ことばの織りなす世界を読み解く