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都市と自然との構造・関係性についての雑記

先日、X-Wisdom Symposiumに登壇する機会をいただいた。(詳しくはリンク先へ)
大山、長良川という各地の源流域にて活動を展開する方々と交わりつつのパネルディスカッションだった。やはり各地の源流域には水源があり、文化の源流も残っており、そこに行くと自然を肌で感じることによって自然の一部としての人間性を取り戻すことができ、それが次代に必要な創造性を生み出していくということが良く分かった。
このあたりは、一緒に登壇した長良川カンパニーの岡野さんがご紹介されていたプロセス図がとてもわかりやすく、腑に落ちた。

流れとしては、以下のようになっている。
<創造性回復>
身体性回復:感受性の高い身体の状態をつくる
人間性回復:普段遠ざかっていた自分の感情/意識に気づく
関係性回復:仲間/社会/生態系とつながる感覚を取り戻す
<創造>
問いをつくる:気になることを言葉にする
表現する:一番素直な形で表現する
プロジェクト化する:他人を巻き込む
事業化・仕組化する:つづく形を見出す

特にこの創造性回復フェーズにおいては、大いなる自然の中に身を置き、感覚を開く状態を持つことが大事であり、修験道や和歌・神楽、シャワークライミングなどは、まさに自然と一体になっていく感覚が得られるプロセス・手段として位置づけられるのだと思う。いわゆる、よく言われるアンラーニングだったり、コンフォートゾーンからの脱却とか言われる部分だが、もっと深い。
個人的にも今宮神社での祭事において披講(和歌に節をつけて歌うこと)などの機会をいただいているが、歌っていると風や空気と一体となり、透け込んでいく感じがある。リズムが自然と調和しているからだ。そして一人ではなく、共同で行うことによって人間性・関係性も感じられる。
このように人々は古来から、このような場・時間=儀式を設けることで街の中においても創造性回復を行ってきたとも言える。そういう意味で街における社寺という場は、自然と俗世の「あわい」であり「ゲートウェイ」の場であったとも言えるだろう。

そこまで考えて、自分の中でシンポジウムが終わってから胸に抱いていたモヤモヤが少しずつ解消していった。
各地の活動を聞いていて、自分は、そういった素晴らしい場における活動拠点を持っていないことに少し引け目を感じていた。そして同じ源流域である吉野などにそういった拠点を持つことも少し考え始めていた。
だけどもその後、吉野・金峯山寺での祭りの手伝いで参画したり、自宅のある橿原での飛鳥・藤原DAOの活動に参加したり、会社のある梅小路・丹波口を拠点とした府内各地の里山地域などをつなぐ活動に取り組んだり、琵琶湖の源流域での交流の場に参加したり、色々としているうちに自分の役割は、そういった「ゲートウェイ」的なものであると再自覚できた。

資本主義どっぷりの現代の社会において、一人ひとりはモヤモヤしたものを感じている人は増えているとは言え、そして一部では積極的な活動に取り組んでいる人たちもいるとは言え、全体としてはあまり変革が進んでいっていないことが実情であり、「仕方ない」といった言葉が飛び交いがち。学生と講義で話していても、結局大企業志向のライフスタイルを選びがちなのが大勢だ。一方で、里山・里海が広がる源流域では素晴らしい経験・知見が得られる機会がある。だが、その経験・知見をどのように実社会で活かしていくのかといった部分も不足している。

都市−里山・里海−自然

このような関係性で人の活動領域と自然が位置づけられてきた。「あわい」に当てはまるのが里山・里海という位置づけになる。しかし、現代社会においては、里山・里海すらも遠くなってしまっている。ほとんどの人々の住まいは都市の外周部に存在しているだろう。
そういう意味では、もう一つの概念が間に入る。

都市−◯◯−里山・里海−自然

このように再度関係性を見直し、この◯◯−里山・里海を一体として捉え直し、人は多拠点的にこのエリアを近い距離感で行き来し合う「共生圏」にし
ていくことが大事なのではと思う。いわゆるテリトーリオ的な概念である。

◯◯に当てはまる適切な言葉を模索しているところではある。「街庭」とかになるのかもしれない。

土中環境改善ワークショップなどに取り組んでいる梅小路公園は、まさにその◯◯に当てはまるフィールドである。

指導いただいているのは、現代の南方熊楠とでも言うべき、坂田マサコさん。この「内なる自然」の概念およびコモンズを実態として取り戻すという考え方に感銘を受けて始めた。
詳しくは別途書いていきたいが、街の中にあるコモンズとしての公園、そして30年前に国鉄操車場跡地を緑地化するという英断から、人の手が入り続けることで維持されてきた都市内の自然は、「新幹線駅から最も近い里山」であり、里山・里海、そして源流域の自然へのゲートウェイにしていきたい。
このような方向性・役割を対話を通じて認識させていただけた機会にあらためて感謝したい。


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北林 功(Isao Kitabayashi)
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