豊かさとガレージセール
今回は情報が古すぎてわかりづらい情報もありましたので、注釈を加えさせていただきました。それにしても、コテッチャンって今でも普通に流通しているロングセラーなのですね。私、コテッチャンを引き合いに出しておいてアレですが、まだ食べたことありません。
毎週土曜日は、プリシラのガレージセールデイであった。
その日も、プリシラはガレージセールへ行くために、地図とプレートを用意し、準備には余念がなかった。ガレージセールとは、ようはフリーマーケットの個人版みたいなもので、各家のガレージで、不必要なものを売りさばくのである。私はこうして、物を大事にリサイクルする習慣に大賛成だ。日本は物を大事にしなさすぎる。何年かするとその物の価値がなくなってしまう。車や家、洋服や鍋。すべて新しくなければ価値がない。豊かさを勘違いしている故か。そういや、女房も古くなると価値がないなどというふとどき者もいるな。あれは古くなればなるほど価値があがるんだよ。わかってないな。
とにかく、私とプリシラは小雨の降る中、ガレージセールへと出発した。
プリシラは小腹が空いたときのために、にんじんスティックを用意していた。素晴らしい。私も登山へ行くときに、にんじんスティックを持って行ったものだ。登山をしていると野菜が不足しがちになる。子供の頃はにんじんが大嫌いだったけど、今は大好きだ。
一軒目。
プリシラの目が輝いている。プリシラは、木製の椅子と物干しを購入。すごい決断の早さだ。私の探している、小型リュックは見つからない。バッグっていうのは、なかなか見つからないのかなぁ?
二軒目。
めぼしいものは見つからず。
三軒目。
プリシラ、ガラス製の大きなボールを購入。
四軒目、五軒目、六軒目、七軒目、八軒目…プリシラの目利きは素晴らしい。それに比べ、私はダメだ。私の探しているちょうどよい大きさのバッグはないし、あってもお子様向けだったりする。こんなの下げて外を歩くわけにはいかない。
散々ガレージセールを回ったおかげで、大体の街の構成がわかってきた。よし、次にChristchurchに戻るときには、もう迷わないぞ。私は自信を持った。
実はこの日、私はちょっとアメリカまで行くことになっていた。
ガレージセールから戻って、空港へ向かった。外はかなり激しい雨になっていた。洪水になるかもしれないな。ニュージーランドでは洪水は珍しくないんだ。だって、よく車が濁流の中を流れているニュースをテレビでやっているもの。
数日後、帰ってくるとChristchurchは晴天だった。
朝が早いので、空気が清々しい。
しばらくChristcurchに滞在してから、ダニーデンに出発する予定だ。ダニーデンには、ホストファミリーの長男が大学に通っている。そこでは、彼のフラットにやっかいになる予定だ。ダニーデンには、世界一勾配の急な坂がある。そんなところで坂道発進なんかしたくないな。
ところで、プリシラのお家には、ボクサー犬が子供のようにかわいがられている。名前は、モンティ。こてっちゃんの宣伝(注釈1)に出ている俳優そっくりな顔の犬だ。私は心の中で彼を、フーチーと呼んでいた。なんでかはわからない。彼の名前はモンティよりも、フーチーのほうが合っているように思われる。周囲に誰もいないことを確認してから、フーチーと呼ぶ。すると彼は「なぁに?」と振り返る。かわいい犬だ。彼はもう大きいくせに、私の指をしゃぶるのが好きだ。一緒に遊んでいると、腕から手の先まで彼のヨダレだらけだ。まるで私は畑正憲だ。私が家にいると、彼は私から片時も離れない。私がソファに座っていても、私の足の甲を枕にして眠っている。
猫にも人気がある私だが、犬も捨てたもんじゃない。
でもなんで動物にだけこんなに人気があるんだろう…?
翌日、プリシラが私にハイキングに行かない?と提案してきた。行くよー!本当は登山がいいけど、装備がないから、歩けるんだったらハイキングでもいいよーーー。うれしーーーっ!!!
私達は果物を持って、車で40分ほど行った山へとドライブだ。かつての、Nickとのハイキングを思い出すが、今日はNickじゃなくて、赤毛の美人のプリシラだよー。
今、私達は静かな山の中を歩いている。プリシラはりんごを齧りながら、私の話に耳を傾けていた。私は一生懸命、これからの自分について語っていた。あまり熱く語ると景色を見損ねちゃうな。ふと足を止めて、目の前に広がる景色を眺めた。太陽の光が眩しい。手をかざして、光りの向こうをのぞく。白く、雪に覆われたアルプスのような山が青く輝いていた。心を奪われる美しさだ。壮大な自然の景色を見た時、人は必ず何かしらの感激を受ける。自然は美しい、と覚えさせられているからじゃない。見て、美しい、と感じてしまうのだ。例えば、太古の人々はどうだろう?アフリカの雪など降ったことのない土地に住んでいる人々にとってこの景色は?やはり、彼らもまた同じように心を打たれるのではないか。
「ニカウさん(注釈2)もこれを見たら、感激するよね。」
という問いかけに、そうね、とプリシラは笑いながら答えてくれた。
私達は、山の反対側まで歩いて、青く澄んだ湖畔の景色を堪能した後、帰路へついた。
美しい景色のニュージーランド。
ここに住む人々でさえ、自然の美を追い求めてる。
人はなぜそれを自ら壊してきたんだろう?
豊かさを得るためだというのなら、自然から与えられる豊かさは一体なんだというのだろう?
私は次の旅へ進むことにした。
(つづく)
文中に、しれっと「ちょっとアメリカまで行く」とか書いてますが、あちらに5泊くらいの旅に出たんですよ。実はこの日記はアメリカ一周一人旅へと続くのですが、その前に我慢出来なくてちょこっとアメリカに行っちゃったんですね。あはは。当時の私にとって、太平洋なんてちょっとした広い湖の感覚だったのです。飛行機に乗って眠っている間に自動的に到着しちゃうし。
ちなみに、私は時差ボケをしたことがありません。あれはどうやったらボケられるのですか?黒柳徹子さんも時差ボケしないそうです。
#時差ボケしない民 #そういう民がいる #眠れなければ寝なければいい #人はやがて眠くなる #昼間に眠たくなったら #寝てはいけない #夜には寝られるから #時差ボケしない民は #現地に到着したらその時間で調整される