SNSでの告知・宣伝のきほん【役者向け】
先日、とある役者と話していて、話題になったことを記しておきます。SNSに於いての公演告知及び宣伝について。ただし、この話をした時は既に開幕直前、「準備にも宣伝活動そのものにも、充分な時間が取れない中で出来ることは何か」という意味合いが強くありました。また、極めて基本的な話であるので、日頃勉強している方には物足りない内容です。逆に、この記事を読んで「なるほど!」と思った方はマズいです、危機感無さ過ぎ。自己満足とか内輪受けとか言われかねません。集客が!動員が!と言う前に、自分を売ること・団体を売ること・公演を売ること、その為に必要なこと、現時点で自分が出来ていることを見直し、考えてみてください。
それではサクっと行ってみよー。
役者や団体の情報発信に使われるSNSというと、TwitterかFacebookが圧倒的に多いと思うのですが、今回はTwitterのような、手軽で瞬発力があり、不特定多数に向けて発信されることがデフォルトのサービスを想定しています。FacebookやInstagramなどをメインに使っている人も多いとは思うので、そちらが主軸になっている方は適宜アレンジしていただけましたら。(厳密にはSNSごとの特性で随分変わってくるのですが、それはまた別の機会に。)
準備不要で今すぐ出来るアクション5つ。
【1】公演情報を一見してわかるように掲載
【2】公演情報にすぐアクセス出来るよう設定
【3】検索に引っ掛かりやすいキーワードを挿入
【4】過去作品の動画や舞台写真を添付
【5】役者紹介の採用やハッシュタグの活用
それではひとつずつ解説していきまーす。解説と言っても補足程度の簡単なものですが、意味合いと注意点をちょっとずつ記します。今回は「わかりやすく簡単な説明」ということに重きを置きますのでニュアンスとして記載することが多く、厳密ではありませんが、その点につきましては予めご了承ください。
【1】公演情報を一見してわかるように掲載
言わずもがな、なのですが意外と出来ていないのがコレ。特にTwitterだと文字数の制限があるので難しいのは承知の上ですが、「一発で情報が把握出来ない公演にお客様は来ない」と思ってください。複雑な情報を読み解いたり、公演の詳細を自分で調べて予約したり、そこまで手間を掛けてくれるお客様は、元々、団体・企画のファンか、役者・作家のファンです。熱心なファンだけと言っても過言ではありません。はじめましてのお客様に、団体名やタイトルで「お!気になる!」と思ってもらえたとして、そこから先をユーザーが自発的に調べて予約に至るのは稀です。基本的にユーザーがストレスなく追いかけてくれるのは「気になる!と思った時点で目にした投稿+ワンクリック」くらいのものだと思いましょう。当該公演の情報を1ページで網羅し、そこへリンクすると親切。そういうページがない場合はFacebookの投稿でもブログ記事でもnoteでもイイので自分で作ること。
【2】公演情報にすぐアクセス出来るよう設定
基本中の基本ですが、文字数に流され、これも見落としがち。先述の【1】に通ずるのですが、「団体の情報が見当たらない」とか「公演情報がまとまったページが見当たらない」とか、実際かなり多いんです。素性の知れない集団や公演に時間とお金を費やしてくれる方がどれだけいるというのだろうか。実際、私も「自分の好きな役者が馬鹿でないのは知っているし、そんな人が出演する舞台であるからにはきちんとした団体なのだろうけれど、でもやっぱり得体が知れない……この団体、この企画、なんなの……。」と思ったことがあります。ほら、恋愛もミステリアスなのに惹かれ、追いかけられるのって無駄にエネルギーがある年頃くらいまでじゃないですか。ある程度の歳になると……うん、話を戻そう。関係者と直接やり取りが出来る間柄なら質問することも可能だけれど、私だったら直接やり取り出来る関係性であってもわざわざ聞かない。何事も、明らかにする、ということは安心感に繋がります。安心感、超大事。
【3】検索に引っ掛かりやすいキーワードを挿入
役者の皆様、作り手の皆様、自分についての感想や公演についての感想を検索する時、どんなワードで検索しますか。一度に全部の感想を拾えますか?タイトル・団体名・略称・名前・役名あたりは検索の基本ですよね。これらのキーワードを一つ一つ検索したりしていませんか?……。ということは、単純に、これらのヒントや必要な情報が含まれていない投稿は検索から漏れ、ユーザーの目に触れないことになります。拾ってもらえない可能性が極めて高くなります。全てを盛り込むのは難しいとしても、多くを含む方が親切だし、見つけてもらいやすいということですね。一部の情報はアカウント名やプロフィールに入れればいい。どんなに大切な言葉だって、どんなに思いを込めたって、人の目に触れないのでは意味が無い。伝わらないのでは意味がない。もったいない。
【4】過去作品の動画や舞台写真を添付
世界観がわからないと近寄りにくい。シンプルな話です。ダイジェスト映像みたいなものだとか、舞台写真などがあれば、雰囲気を伝えることが出来る。ミスマッチを防ぐ為でもあります。世界観がイメージできれば、ユーザーは自分の好みやその時の気分、コンディションに基づいて観るか否かを判断できる。通常ならば好きなテイストであったとしても、コンディションが悪い時に観てしまったらネガティブな印象を持ってしまうということはあるワケで、ミスマッチは誰も幸せにならない。あと、タイトルだとか文字面でちょっとクスッとさえ出来るようなファンタジーをイメージし、純粋にそれだけを求めて行ったのに、実際はガッツリ抉られるやつだったとか、悲劇じゃないですか。(この例えは極端だけど、少なからずある。)勿論、動画や写真は過去作品に限ったことではなく、進行形の作品で出せる要素があるのであれば最高だと思います。ただ、その場合はネタバレに抵触する可能性など、よく考え、配慮することが必要。
【5】役者紹介の採用やハッシュタグの活用
役者紹介は好き好きがある要素ですが、それ自体がマイナスになることは無いもの。とはいえ、やり過ぎると内輪感が出やすい部分なので、基本的な情報+ちょっとスパイスくらいがちょうどいいのかな、と思います。スパイスっていうのはアレです、池上彰さんの選挙特番の当確テロップ、みたいな話です。「え!それブッ込む!?」っていう。ギャップとインパクト、それから取っつきやすさ、大事。そして、ハッシュタグ。これも大切なことだと思います。(と言いながら、個人的にはハッシュタグってどうも好きになれないんだけど。)用いる時の感覚で言った場合、「このタグを使えば共演者のツイートが一括で読める」だと内側に向いてしまうから危険。タグをどうやって広めるかを考えながら使う分には外側に向いていてよいと思います。ただ、タグだけだと「劇団や公演に対して既に興味を持っている人」が主な対象になってくるので、【3】の項目で記したことと併せて考え、バランスを取りながら広めることが大切。
出来ることから少しずつ。
そんなワケで。準備不要で出来る、簡単なことだけ記してみました。基本中の基本なので「そんなのわかってるよ」も多かったかと思います。でも、わかっていると出来ているは違う。出来ていますか?
今回の記事に関しては、日頃、自分がユーザーとして告知や案内文などの情報を受け取る時に、不足を感じる部分や気になる箇所を中心としています。勿論、ユーザー個々人の情報収集能力や情報処理能力による部分も大きいのであくまでも一意見というレベルではありますし、実行するにせよ、無理のない範囲で出来ることから少しずつ、くらいでいいと思います。考えに考え抜いて実行したとして、すぐに結果が出るような話でもないですから。
ただ、今、試してみるか否かの僅かな差は、後々大きな差になってくるという確信はあります。また、作り手が「ユーザーの求めるもの」に目を向け、これまで以上に考えていかないことには舞台や演劇という世界が今以上に広がることも無い、そう思います。
一見するとすべてが外側に向かっているようで、実際はとても閉じた部分を抱える世界、その根深さ。
これは自身が一時、舞台から離れ、戻ってきたから気付いたことかもしれません。気付いてしまったからには黙っていられない性分、それを好きなものに対して役立てられたらと、そんな気持ちで認めました。舞台に、演劇に、関わる一人ひとりが、舞台を通して、演劇を通して見たい景色。見たい景色はひとそれぞれ、道もそれぞれ。落ち合ったり、離れたりしながら、作る皆様、受け取る皆様、舞台・演劇を愛している皆様と、泣き笑い、歩めたのならこれ以上幸せなことはないと夢想する、宣伝美術からの提案でした。