コロナ禍とペルソナの死
数年前にはたくさん購読していたメールマガジンの多くをunsubscribeした今も2つだけ購読を続けている、というよりも配信を心待ちにしているメールマガジン(”ニュースレター”と呼ぶほうが今風か)のうちのひとつに「LOBSTERR」というウィークリーのニュースレターがあります。
ROBSTERRは、世界中のメディアなどで公開されているたくさんのニュースから、発行人の方々が興味をもった記事を抜粋し紹介してくれるとても有益なニュースレターなのですが、個人的に紹介記事以上に楽しみにしているのがニュースレター冒頭に週替りでひとりの発行人の方が書かれるコラムです。
今日配信された最新号(第57号)の巻頭コラムに、ペルソナについての言及がなされてて、非常に興味深い内容だったので、ぜひ紹介したいと思います。(コラム見出し『そして「S.D」はいなくなった』を参照)
※ぼく自身のペルソナに関する認識と考えを明確にする意味で、ペルソナについて以前書いたものを宜しければ併せてご高覧ください。
当該コラムの要点を要約、引用します。
筆者が、少し前、つまりコロナ禍以前に「S.D」というペルソナをとあるプロジェクトのために作成しました。
(そして「S.D」は偶然にも筆者自身にも相通ずるところが多いペルソナでした。)
その「S.D」というペルソナは、
週に何回か外食をし、週末は映画館に行き、年に何度か海外旅行や出張に行く。
という趣味嗜好とライフスタイルを持っている(という設定)だったのですが、しばらく時間が経過し、一連のコロナ禍が発生した後に、
そして、そう、S.Dはこの世の中からいなくなってしまった。
いまや、彼を彼たらしめていた行動のほぼすべてが社会的に禁じられている。そして、そのペルソナをもとにつくっていた商品もその根拠を失ってしまい、いまや企画書のなか、あるいは倉庫の片隅でじっと佇んでいるに違いない。
と言います。
そう。
奇しくも未だ治療法が解明されていない新型の感染症が契機となり、S.Dが(そして私たちが)生活するこの世の中の価値観、生活習慣、忌避感などの「これまでの当たり前」が大きく変化したのです。
そして、つい先日まで当たり前のように存在していた価値観や習慣がかわってしまったことで、筆者自身も毎朝ランニングを始めたり、自宅で料理を楽しんだり、リビングの居心地を良くするといったこれまで行っていなかった行動や趣味に目覚めているそうです。おそらく「S.D」が実在していたら、同じような変化を起こすでしょう。
いま、企業はこれまで自社にとって重要に扱ってきたそれぞれのペルソナを見直すべきなのかもしれません。
本来、ある特徴的な価値観とライフスタイルのカタマリであるペルソナは、定期的な内容のアップデートを必要としてきました。
その多くは、ペルソナ自体の加齢や社会属性の変化、に追随するためのメンテナンスの意味合いが大きいものでしたが、今回のコロナ禍がもたらす変化は、個別の趣味嗜好や、個人の価値観のさらに根底に流れる「社会文脈(socio-context)」のパラダイムシフトに相当するものといってよいでしょう。
つまりこの変化の中で、多くの企業は自社のペルソナがどのようなものであれ、それらペルソナの変化、そして今後どのように変化していくか、に向き合わなくてはならないのではないでしょうか。
社会文脈はいずれ時代精神(ツァイトガイスト)の変化と確立につながります。
これまでの時代を懐かしんで元に戻そうともがくだけではなく、奇しくも大きな変化が起きてしまったこれからの時代に自社は、誰に、何を、どのように価値提案・価値提供すべきか?これからの社会に何をもって貢献できるか?について、在宅勤務や外出自粛によって以前よりわずかなりにでも時間を得ることができているビジネスパーソンは考えるべきではないでしょうか。
これからどのような変化が起こるかわからず不安で、今やるべきことにたくさんの迷いが溢れてくる時期ではありますが、自分にとってのペルソナたちに向き合い、これから起こるうる変化や期待と渇望の兆しに耳を傾けましょう。
自戒も込めて書きました。
追伸;
#Lobsterr マガジンさん、多くの方に知っていただきたいコラムであったのでご紹介させていただきました。
無断の引用と紹介をお許しください。差し支えがあれば記事削除いたします。