松濤に佇む優しい空間|ギャラリーTOM
渋谷、というとあまり得意な街じゃない。いつもとにかく人が多いし、誰かと約束でもない限り、休みの日に一人で向かいたい場所でもないのだけれど、そんな渋谷も駅前を超えて奥の方、奥渋谷は大好きな町だ。
buknamuraを超えてさらに進むと街の様相は一変し、落ち着いた美しい街並みが出迎えてくれる。
そして本日は、杉本博司さんの「本歌取り 東下り」を見に松濤美術館に向かったのだけれど、行きがてら思いがけずとっても素敵なギャラリーと出会ったのでご紹介。
ギャラリーTOM詳細
-設計 / 内藤廣
-所在地: 東京都渋谷区松濤 2-11-1
-アクセス:京王井の頭線 神泉駅から 徒歩7分 / 渋谷駅から 徒歩15分
-営業時間:12:00 〜18:00
-休館日:月曜日 (祝休日は除く)、祝休日の翌日、年末年始
※営業時間に変更がある場合があります。
詳しくは公式HPをご覧ください。
ギャラリーTOMに行ってみた
その建物は、松濤美術館から徒歩3分程度。閑静な住宅街の中に突然現れる。
人の気配がないので少々入りにくいが、鉄筋コンクリートのシンプルな壁の中に何があるのか、とっても気になる。
階段を上がると、可愛らしいシーサーが迎えてくれた。
中はこんな感じ。この日は目の見えないお子さんたちの作った作品を多数展示していて、鋳物の作品については触れて楽しんでも良いとのこと。
美術館へ行って「触るな」と言われることはあっても、「ぜひ触ってください」と言われることってまずない。
私は目が見えるけれど、五感で作品に触れながら鑑賞するととても暖かい気持ちになった。作者の心が伝わるのかな。
建物は鉄筋コンクリートのシンプルな箱型で、この建物は内藤廣の自邸「共生住居」と同じく彼の初期の作品にあたるらしい。
初期の作品ということで、彼の代名詞とも言える勾配屋根ではなく、ギザギザの特徴的な屋根が見られる。
建物上部のスカイライトから自然光がたっぷり差し込む、コンクリなのに温かみのある空間だった。
2階にも展示がされているとのことで、二階へ。
一階から二階まで、手すりがぐるっと渡されていて、これを伝って安全に二階へ上がっていくことができる。
手すりが建物にしっかり馴染んでいて、デザインと機能がしっかり両立されているのは流石。
二階もこじんまりとしたギャラリースペースになっていて、とても居心地の良い空間。
ここでは展示について細かく触れることはしないが、とても視覚が不自由な方が作ったとは思えないほど精巧で驚かされるものもあれば
「形ないものをこんな風に捉えたのか!」と思うユニークな作品もあって、目を閉じて触ると不思議な気持ちになった。
このシーサー、沖縄の学生さんの作品ということだったのだが、この背中の筋肉の作り込まれ方、首周りのデザインの精巧さに驚かされた。
美術品は目で見るものだと思い込んでいたのだと、改めて実感した日。
内藤廣作品を見に来たつもりが、このギャラリー自体が本当に素敵だったので、建築好きにかかわらずたくさんの方にぜひ訪れてほしいと思う。
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