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コロネの宝本棚#003_ダンサー兼振付家・藤平真梨さん
こんにちは!プロデュースユニットcornecom(通称コロネ)のしま&もぬです。
コロネの宝本棚マガジン第3弾のゲストは、ダンサー兼振付家の藤平真梨さん。心に残っている大切な本「宝本(たからぼん)」について、うかがっていきます。
「コロネの宝本棚」マガジンとは?新卒社会人しま&もぬによる、ゆるゆるプロデュースユニットcornecom(コロネ)のプロジェクト。様々な人たちの、心に残る本「宝本」をインタビューし、これから読むのがわくわくする本を集めています。
詳しくは→→→プロジェクト始動のワケ
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1. 第3回ゲスト・藤平真梨さんってどんな人?
しま「第3回ゲストは、ダンサー兼振付家の、藤平真梨さんです。簡単に自己紹介をお願いしても良いでしょうか?」
藤平真梨さん(以下: まりさん)「はい、藤平真梨です。普段はソロのダンサーとして活動をしています。
あとは、『ダンサンブル』というダンスの団体を主催していまして、ダンサーではない、いろんな職業の人たちが舞台を作ったりとか、身体表現をしたりする楽しさを知る場所づくりをしています。」
左: もぬ、中央: しま、右: まりさん
しま「ありがとうございます!自己紹介から気になること満載ですが、まず今回まりさんをゲストにお呼びしたわけをお話ししたいなと思ってます。
わたしは今日まりさんに初めてお会いしたので、紹介してくれたもぬから、なぜ『まりさんにインタビューをしたい!』と思ったのかを教えてもらいましょう。」
まりさん「おーどきどき笑」
もぬ「へへ笑
はい、わたしも出会いは最近なんですが、大学の先輩から『ダンサンブル』というダンスのクラスを紹介してもらって参加したところ、その主催が真梨さんだったんですよね。初めて会ったときに、『こんにちは!はじめまして!もえもえだね〜!!』と、とっても明るく声をかけてくださって笑」
まりさん「そんなんだったっけ笑」
もぬ「こんなパワフルで面白い人は久々に会ったぞってその時に思ったんですよね。ダンサーという職業の方も、あまり周りにはいなかったので、『ふだん、どんな本を読んでいるんだろう?』と気になり、今回お呼びさせていただきました。」
まりさん「ありがとうございます!」
しま&もぬ「今日はよろしくお願いします〜!」
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2. 藤平真梨さんの宝本『アサッテの人』
しま「では、さっそくなんですけど、今日持って来ていただいた宝本のタイトルを教えていただいても良いでしょうか?」
まりさん「はい。私の宝本は、諏訪哲史(すわ てつし)さんの『アサッテの人』です。」
もぬ「アサッテの人。タイトルが気になりますね〜。」
しま「『アサッテ』が、カタカナなんですよね。」
まりさん「そうなの。私は子供の頃から『まりちゃん宇宙にいってるよ』とか『アサッテの方向向いているよ』っていうのを言われ続けてきたんですね。それで、タイトルに"はっ"て思ったんですよ。」
もぬ「シンパシーを感じたんですね。笑」
まりさん「そうそう笑。ふだん全然本を読まないのに、タイトルとジャケットで、『これ呼ばれている気がする』って思ったの。」
もぬ「それは出会いですね....!本の表紙もすごく目を引きますね!蛍光色に近い緑に、版画っぽいイラストで、アサッテの人ってタイトルの文字組も少し文字がずれていたりして...」
しま「うんうん、表紙からして気になります。この本に出会ったのはいつ頃なんですか?」
まりさん「これは高校生の時に出会って。その時、全然本なんて読んでなかったんだけど、ふらっと本屋さんで見つけてびびっときて。それから何度か読み返してます。」
しま「なんども読み返している本なんですね!インタビューさせていただくにあたって、あらすじをちょっと調べてみたんですが、なんだか説明するのが難しい感じでした...笑」
まりさん「だよね!笑」
しま「あれですよね、僕とおじさんのお話で....」
まりさん「そうそう、すごく変わったおじさんのお話。おじさんは吃音障害をもっていて、言葉が出にくいんだけど、それが原因で社会に馴染めないの。だけど、突然吃音が治って。『治ったら僕はその社会の渦の中に入れるんじゃないか』と思ったら、そのポンと入った社会が窮屈に感じちゃって。そこで、おじさんがその窮屈な社会からアサッテの方向に行くために『ポンパ!』とか『ホイミャウ!』とか、意味のなさない言葉を編み出す。」
まりさん「で、そのおじさんがエレベーターの監視カメラをチェックする仕事をしていて。その中で、チューリップ男っていう登場人物が出てくるんだけど、それがすごく面白くって。チューリップ男はふだんすごく真面目な感じなんだけど、エレベーターの中で一人になった瞬間に、こう頭の上で手をチューリップの形にするの笑」
全員「笑」
まりさん「他にも、一人になると突然逆立ちし始めたりとか、コサックダンスをし始めたりとか。そんなチューリップ男をみて、おじさんはすごく共感する。意味のあることばかりが認められる日々のふとした瞬間で、全く意味のないことをやるっていうか。」
まりさん「でも、途中までユーモアが溢れてすごく面白い感じなんだけど、後半すごく悲しい結末になっていっちゃって。おじさんがアサッテの方向に囚われていってしまう。なんでも作為的にやることを嫌って、不思議な言葉を言うだとかアサッテの方向を向くことを自分でやっていたんだけど、そのアサッテの方向の言葉さえも作為的に感じてきて、錯乱っぽくなって、最終的には失踪してしまうの。それで、ぼやーんとすっきりせずに物語は終わってしまう。」
もぬ「おお、気になります...!1人になる瞬間のチューリップ男とか、作為的なことばかりの毎日に違和感を感じるおじさんに、今を生きている人たちは共感するところがある気がしますね。」
まりさん「うんうん。高校生の時に読んだときはまだ働いていなかったし、社会がどんな仕組みだかわからなかったんだけど、ルールとかにうーんと思うことがあったから共鳴したのかなと。」
もぬ「ふむふむ。チューリップ男の行動も、だれしもエレベーターとかで一人になったら何か心がふっと緩む瞬間があるし、共感できるところがありますよね。誰しも、そういうことやってるよねって、想像したら面白くなって来ちゃった笑。」
全員「笑(チューリップポーズをとりながら)」
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3. ダンスとアサッテの人
まりさん「あと、この本が面白いなと思うのが、わたし文字が苦手であんまり本を読まないんですよ。あんまり頭で意味を考えたりするのとかが苦手。
でも、この作品はちょっとダンス作品ぽいっていうか。あんまり意味とかわからないけど読み進めていったら、意味がわかってくるというか。その感覚がダンス作品と近いんだよね。」
もぬ「なるほど、じゃあ一個一個意味がわかるって感じじゃないけど、全体の雰囲気っていうのがある感じなんですかね。」
しま「うんうん。読む人によって、感じ方とかも違いそうですね。」
もぬ「あと、私が気になったのは、これ何回も読み返しているって聞いて、読み返すごとにターニングポイントになっているのかもって。例えば、気持ちがどんづまった時にはこの本を読んで、気持ちが明るくなるだとか。この本が、今のまりさんに活きていることってあるのかなって思ったんですけど。」
まりさん「あーあるかも!そのアサッテのおじさんが見ている世界っていうのが、自分が高校生の時にルールに対してうーんって思っていた頃や、疑問も何も持っていなかった丸裸の子供の頃の感覚に近い気がして。この本を読むと、昔の自分を思い出すというか。」
まりさん「自分がやっているダンスの活動も、すごく感覚的なもので。特に意味はないんだけど、『その言葉の音色がきれいだと思う』とか、『わけわからないけど、この言葉が好き、音が好き』だとか。これってダンスでも同じで。ダンスの動きなんて特に意味なんてないんだけど、この動きが好きとか、したくなるとか。そういった感覚に還れる。
生活していると、どうしても意味づけとか、順序立てて進めていかないといけないことがあるけど、でも私がやっていることはどっちかっていうと『素の感覚を大切にする』ような活動だから。この本は、その感覚を思い出させてくるというか。」
しま「素敵ですね。ダンスって型が決まっていて『こうやるんだよ』って教えるイメージがあったんですけど。まりさんの話を聞くと、相手のそのままを引き出すみたいな感じがあって、その姿勢と”アサッテのおじさん”の言動は似ているのかなって思いました」
もぬ「本当にそうだよね。聞いていて思った。」
まりさん「うん、嬉しい。高校の時なんてそんな活動していなかったから。昔はずっとバレエをやっていたんだ。すごい型にはまっていて。でも、この本が好きだったっていうのは、もう潜在的に、バレエ続かなかたんだなって笑」
もぬ「潜在的に、アサッテの方向をむく才能があったんですね笑」
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4. アサッテの感覚に立ち戻る
しま「バレエから、今のコンテンポラリーダンスに転向したきっかけってなんだったんですか?」
まりさん「オーストラリアの学校で勉強をして、日本に帰ってきてバレエダンサーとして活動していたんだけど。白鳥の湖を踊っている時だったかな?もうミリ単位で合わせる感じの、同じ動きをずっとしていて。その時に、ふと『なにやっているんだろう今』って感じてしまって。で、ちょうど良いタイミングでコンテンポラリーの人と出会い、トントンと今に至るって感じ。」
もぬ「おおーやっぱり向いていることは、とんとんとうまくいくんですかね。そんな経歴だったの私も知りませんでした。笑」
まりさん「そうなんだよー。昔は堅かったんだよー。笑」
しま「バレエと、今のダンスだと、全然イメージが違いますよね。」
まりさん「対照的だよね。笑」
しま「転向するのってすごく大変だったんじゃないですか?」
まりさん「うーん、でも、よく考えると"立ち戻った"って感じかな。もともとバレエにはすごく惹かれているところがあって。なんというか、高みを目指していくということがすごく楽しくやりがいがあったんだけど。でも、バレエをやる以前のところに戻ったら、"何かをつくる"ってことがすごく好きだった。新しいことをやっているっていうよりは、そこに立ち戻っているというか。どんどん素っ裸になっているような、そんな感じ。」
もぬ「あら、素敵。わたしは、ダンサンブルに参加させていただいていて、すごくあの感覚が好きなんですけど。」
まりさん「嬉しい〜。」
もぬ「ふだん仕事をしている時って色々考えなきゃいけないんだけど、ダンサンブルではずっと、『脳みそ空っぽで』って言われ続けるの。体が動くままに楽しく動かしてみよう、その状態がすごく良いんだ、って思わせてくれる。保育園くらいのときって、そうやって生きていたなって思いますね。笑」
まりさん「うんうん。笑」
もぬ「本当はその状態が一番好きなのに、だんだんできなくなっていっていて。でも、ダンサンブルという場所があるからできているなっていうのを思いますね。」
まりさん「でも、今回この1冊を選んだこと、ずっとこの1冊に惹かれていることが全てを物語っている気がする。本質的にこれなんだな、これが好きなんだなって。」
もぬ「たしかに、気づかない時もあるけど、ずっと軸みたいなものがあって、それが『アサッテの人』に近いような何かなんですね。笑」
まりさん「そうかも。ダンスのクラスでも、私が"教える"というよりは、"戻る"感じにしていきたいなと思っていて。ダンサンブルでは、本当に『自由にどうぞ』って感じなんだけど、『自由でなんでもやって』となると困っちゃうだろうから、毎回テーマを決めていて。
この間は『夏』で、ぽっと思い浮かぶことを踊りにしてみましょうってやってみて。花火の人がいたり、他はなんだったっけ?」
もぬ「私は居眠りと、セミ捕り。」
全員「笑」
しま「今思ったけど、私たちとまりさんの活動も少し共通点があるかもですね。私たちは”本を通してその人を知る”という活動をやっているんですけれど、まりさんのクラスでは同じテーマでも自然とみんな違う動きになって、ダンスを通してその人を知る、違いを面白がる、みたいなことがあるのかなと思いました。」
まりさん「あーあるある!身体体験って一番恥ずかしいだろうと思うんですよ。例えば、絵を描くとかだったら何かに投影してできるけど、体でやるってもう自分自身じゃないですか。すごい恥ずかしいと思うんだけど、それでぺろっと出てくる素のその人って良いよね。」
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5. 進化しつづけていくダンス
もぬ「あと、海外でのダンスツアーの話を個人的にすごく聞きたいんですよ!」
まりさん「ぜひぜひ!」
もぬ「具体的に、どんなことをしているんですか?」
まりさん「この夏に、約1ヶ月の間、ヨーロッパの6カ国9都市をダンスをしながら回ってきました。それぞれの街の人の反応を見たり、見てくれた人との繋がりを感じたりしたくて、路上パフォーマンスで色々な街を巡ったんですけど。」
もぬ「面白そう!国ごとに、反応も違いそうですね。」
まりさん「うん、全然違いました。私的に一番良かったのが、ベルギーのブリュッセル。路上パフォーマンスって、大道芸とか、ダンスでもストリートダンスとか、見ててわーってやるようなものが多いと思うんですけど。私のダンスは激しい動きでも、派手な衣装やメイクってわけでもないから、正直お客さんが止まってくれるか不安だったの。」
まりさん「でも、最初から最後まで多くの人が見てくれて、踊り終わった後、握手してくれたり、『自分が鳥籠の中にいるような気持ちになった。もっと自由でいいんだって思った』とか感想を伝えてくれたりして。見てくれている人の気持ちと繋がるような瞬間があった気がします。」
もぬ「素敵!」
まりさん「そう!ヨーロッパツアーを通して、自分のダンスの価値というか、ぼやーっとしていたものが、『こういう方法だったら人とダンスで繋がっていける』というか、アクロバットとかじゃなくても自分の方法でできるっていうのをちょっと旅の中で感じました。」
しま「わーとても良い機会になったんですね。ダンスは即興でやっていたんですか?」
まりさん「そう、全部即興で。そうすると、『自分はこうなんだ』って主張するっていうよりは、その土地で見てくれている人たちと、良い時間をつくるためにはどうしたらいいかなって気持ちになって。なんというか、カメレオンみたいになっていたかも。」
もぬ「その土地土地で、まりさんの踊るダンスも変わっていったんですね。次はアジアツアーに行くんでしたっけ?」
まりさん「そう。アジアは、けっこう長くて11月末から2ヶ月くらい行ってきます。最初は、そんなに色々な国に行く予定じゃなかったんですけど、でもヨーロッパで色んな地でやったのがすごい良かったので、アジアでもやってみようと思っています。」
しま「ますます進化して帰ってこられるんでしょうね。私たちは、その間の良いタイミングでお話を聞けたんですね...!」
まりさん「ねー!アジアから帰ってきて、超暗くなってたらどうしよう。笑」
もぬ「それはそれで、面白いですね。笑」
まりさん「ヨーロッパツアーに行ってみて変わったことって、もちろんダンスの向上もあったと思うんですけど、価値観というか、自分の心がすごく変わった気がしていて。アジアツアーでも、また変化があるかも。
あ、アジアから帰ってきたら、またぜひインタビューしてください!」
もぬ「いいですね!ぜひ『アサッテの人』の感想シェア会もやりましょう〜!」
しま「ぜひぜひ!またアジアツアーから帰ってきて、会うのが楽しみです!」
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6. 編集後記 & まとめ
とってもエネルギッシュなまりさん。お話をしていくうちに、どんどんハッピーで元気になっていくような、素敵な時間でした。
コロネの宝本棚に新たに加わった『アサッテの人』、ぜひ読んでみてください!
今回のインタビューは、国立競技場すぐそばにあるレンタルスペース「salon de zuppa」さんで行いました。
オーナーの田中さん、ありがとうございました!
▼Check!
「アサッテの人」著者: 諏訪哲史|出版社: 講談社
また、インタビューや本を読んだ感想など、ぜひぜひいただけると嬉しいです!!
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