舞台衣装 地獄の本番前
舞台衣装で、一番最初にしたお仕事は、
パリでのコンテンポラリーダンスの衣装でした。
ところが、衣装を持って行った本番前のゲネプロで、ダンサーさんたちが「これだと衣装がまとわりついて、踊った時に思ったようなラインにならない」ということで、
生地に、鉛を縫い付けて改良しようとしたんですね。
パリ留学中で、誰も助っ人がいない中、全員分の衣装に鉛を縫い付けていったんですけど…
とうとう、翌日のコンテンポラリーダンスの本番を迎えても
作業が終わらない終わらない・・・・!!!
でも、そこがフランス人のすごいところなんですが…
電話で「本番の時間になっちゃった…!」って言っても、
「とにかく完成させて持ってきて。待つから大丈夫だよ」と、舞台を2時間待たせて、私がタクシーでかけつけて衣装を届けてからの、開演になったのね。
それはもう、地獄のような気持ち…手が震えながらの衣装製作でした。
そのあと、日本に帰ってきてCM衣装を作るんですけど、CM衣装って、1日で家を建てるようなスケジュール感なんですよ!
「こういう衣装を〇着作ってください」って頼まれて、撮影はいつかたずねると「明後日です」みたいなことが多いんです…
「えぇ~!ということは、もう40時間もとれないかな…」という状況なんですが、
さすがに慣れてきてたので、そういう時には、大きな生地屋さんに電話して、「〇階のあのコーナーの、この生地とこの生地を〇mずつ切ってください!」って頼むと、閉店時間に間に合わなくても、裏から出てきてくれて個別会計してくれたんです。
衣装さんって、そういう人が多いのを知ってらっしゃるんでしょうね。
そうやって生地を買って、睡眠もとらないまま作業して、CM衣装の現場に入るってことは、2~3割の確率でありましたね。
衣装製作の仕事が入ると、例えば、8着を1日で作るなんてのは、当たり前みたいに覚悟を決める世界でした。
また、私は有名歌手の方の全国ツアーやディーナーショーの衣装などをやっていたんです。
本番2日前くらいにゲネプロがあるんですが、歌手本人が良いっておっしゃっても、照明さんなどから衣装のダメ出しをされることがあるんですね。
そうすると全部縫い直すことになるんです…
とても優しい事務所だったので、「いざとなれば前回の衣装使っていいから、そこまで頑張らなくていいよ」って言ってくださったんですが、
私が嫌だったので、一睡もしないで、母の手も借りて、30時間くらいぶっとおしで製作して…
車に完成した衣装を載せて、現場に届けていました。
近くの会場とかなら、まだ良かったんですが、離れた会場になるとね、ちょっと緊張しました…
そんな感じで、衣装さんも、かなり体力勝負だと思います。
私たちアートや衣装製作などの人間は、丸2日くらい寝ないなんてザラですね~…
「そんなこと当たり前にやれ~!」みたいな世界で生きてきました(笑)
もうひとつ。
そこそこ大きなショッピングモールから、全店舗のクリスマスディスプレイを頼まれた時、
ディスプレイする前日の閉店後に作業に入って、当日の開店までも色々やることがあったので、準備を含め、合計で36時間作業しっぱなしということもありました!
やっぱりね、ある程度の年まではできるけど、体力のもつ人じゃないとできないかもしれないな、っていうのが舞台衣装さんかもしれないですね。
そうやって鍛えられたので、少々のことがあっても大丈夫です(笑)
でも、やっぱりきついのは確かですね。
それでも、楽しい経験、たくさんさせていただいてる私の人生です(笑)
読んでくださってありがとうございます!
またね~!