英語は「修理力」と「すり合わせ力」も重要|【ELF-共通語としての英語】
こんにちは
「ELF=共通語としての英語」の特徴と、ELFとして学ぶ作戦をまとめた本が、あと3日で発売されます。
読んでいただけるか、読者の方がどう感じられるか、ドキドキしています。
#使うための英語 #ELF 共通語としての英語
ところで、英語を、ELF(エルフ)「世界の共通語」として使う時、その相手は、世界中のいろいろな人です。みんな、それぞれの母語の影響を受けている英語を使うし、早口で流暢に話すネイティブから、この頃英語を始めたばかりのノンネイティブまで、英語力も人によって違います。
しかも、自分の英語力にも、「まだまだ」足りない部分がある。だから、ELFのコミュニケーションに、とても重要なのが、「修理力」と「すり合わせる力」です。
■英語の修理力とは
コミュニケーションを修理するとは、英語では、repairing communication breakdownと言ったりします。英語で話していて、「あ、どうもお互いにわかりあっていないぞ」と思った時、あいまいに笑ってやりすごすのではなく、自分から、積極的に、英語のコミュニケーションを「修理」する力です。
「修理力」でまず必要なのは、相手が話す英語がわからない時に聞き返す英語表現を知っていて、しかも、勇気を出してそれを言うことです。
もちろん、多人数の会議などで一人が何度も聞き返したら迷惑ですが、2人で話しているときは、ちゃんと修理をした方が、結局はわかりあえて、信頼し合えると私は思います。反対に、わからなくてもやりすごすばかりだと、相手も「ああ、自分の話しわかってないんだろな」とわかって、話し続ける気がしなくなってしまいます。
■英語で聞き返す表現
英語で聞き返す表現を、私は4つのケースに分けて考えています。
① 「もう一度言ってください」:相手の発言が聞き取れなかった時
② 「もうちょっとゆっくり言ってもらえますか」:全体として相手の話のスピードが早いので、少しゆっくりにしてほしいとき
③ 「今の意味がよくわからなかったのですが」:英語の単語や文は一応聞き取れたけど、どういう意味かよくわからないとき
④ 「今のxxって何ですか?」:英語の中に知らない固有名詞などが出てきて、話しについていけないとき。
この部分を、授業の資料ではこう説明しています。
■ぐるぐる、長々話さない、自分ルール
「修理力」でもう一つ必要なのが、「自分の英語が、相手に伝わっていないな」「うまく話せなかったな」と思う時、できるだけ簡潔に、わかりやすい言葉で言い直して、確実に相手にわかってもらえるよう修復することです。
ただ、「自分の話しの英語の言い直し」には、よく陥るワナがあります。
英語で自分の考えをちゃんと言えなかった気がすると、同じことを言い変えて何度も繰り返して言ってしまいがちです。私も、この傾向があると思って自戒しているし、大学の授業でも、英語になると、ぐるぐる長々と同じことを話してしまう学生が多くいます。
聞いている側としては、話しが終わるなと思うと、また最初から同じことを聞かされ、これで終わりだと思うと、また同じことを聞くことになる。新しい情報はないのに長々と続き、話を聞く集中力を失います。
日本語でも、同じことを繰り返してしまうことはあるけど、外国語の英語だと、繰り返しのぐるぐるが、とてもよくおこります。
そこで、私は、英語で話す時には「一回だけで、できるだけ簡潔に言う。同じ話は繰り返して言わない。」という、自分ルールを作っています。学生にも、練習では繰り返して言わないルールを勧めています。普段から一回で簡潔に言うぞ、と決めて練習していると、大事な時にうまく言えます。
もちろん、練習じゃなくて、本番のコミュニケーションで、「これは重要なメッセージだぞ」という時は、確実に伝わるように、言い直すことも必要です。
簡潔にわかりやすく英語で話すには、「伝わりやすい英語表現の型」を使って話す練習が効果的だと考えています。この型を使えるようになったら、あとは自分がいいと思うように、型を破るのもOKです。この型については、いつか紹介したいです(本の中では詳しく述べました!)。
■英語の「すり合わせる力」とは
タイトルにあるもうひとつの、英語を「すり合わせる力」は、英語では完璧にはなかなか話せない現実をお互いに認め合い、相手の話す英語を推察したり、自分の英語を相手に合わせたりすることです。
英語に慣れていない人が少しわかりにくく話しても、ああ、こういうことを言いたいんだろうな、と聞き手側が、整理して解釈して、必要なら、こういう意味ですね、と配慮しながら言ってみたりします。
相手の話しの英語の文法の間違いなどに気づいても言わないのが、英語の多様性を認めるELFの考え方です。「この部分の文法が違う」と指摘すると、相手は話す気がしぼんでしまいます。
相手にわかりやすい英語表現や英単語を選んで使うことも、ELFのコミュニケーションでは大切です。英語のスピーキングテストを受ける時には、知っている限りの難しい単語や表現を使い、長くて複雑な文を使って英語を話すのが、高得点の秘訣です。けれども、普段の英語の対話では「お互いにわかりやすい」言葉を意識して選んで使う、「すりあわせる」方が断然大切です。
■ネイティブの人も、ELFの練習が必要
ELFの研究では「英語のネイティブも、『共通語としての英語』ELFを話すには練習が必要だ!」とよく言います。ネイティブの人が、非英語圏に行く時には、英語をゆっくりわかりやすく話して、相手に配慮する、そんな意識と練習が必要ということです。
だから、国際的な場所で英語を使う時、アメリカやイギリスのネイティブの表現をガンガン使うより、誰にでもわかりやすく配慮して、柔軟に英語を話す人の方が、断然かっこいいと思います。
▼ 「共通語としての英語」ELF(エルフ)の考えを取り入れた、英語の学び方について書いた本を12月23日に出版します。ノンネイティブだからこその英語の学び方です。読んでいただけると嬉しく思います。
扉の画像:ニューヨークに来ています。近所の普通の光景です
「私と英語」の自己紹介はこちらです。