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英語は続けるのが一番大事だから、楽しもう。

ずっと離れていたnoteを、この夏休みからまた書いてみます。

 ここ数年、いろいろな大学で英語のコミュニケーションを教え、並行して社会言語学者として、「日本人と英語」について研究してきました。そこで考えたことを、書き留めておこうと思います。せっかく考えたことも、書いておかないと忘れてしまうので。。。
 
大学では、毎年たくさんの学生のフィードバックをもらい、英語を使っている社会人の話しもたくさん聴いてきました。そして、英語をうまくなるには、何よりも、続けることが大事とつくづく思います。それも、苦しいと思いながら続けるのではなく、楽しみながら続けることが秘訣です。

英語の学びは「頂上のない山歩き」みたいなもの、と私はイメージしています。
 
目の前にそびえる山の頂上を一直線にめざす登山ではなく、登りもあれば下りもある、頂上がない道のりです。急坂では息がきれたりするけれど、野原や川には木や花もあるので、周りの景色を楽しみながら歩き続けていく感じです。
 
私は「共通語としての英語」を専門とする社会言語学者です。
世界の仕事現場で、日本人がどう英語を使い、何に苦労して、どう対応しているかを聴き取り、研究しています。
 
この研究テーマを選んだのは、実際に英語を世界の現場で使っている人たちの苦労を知ってこそ、役立つ英語を教えられると思うからです。多くの人は、英語を社会で使いたいと考え、学んでいます。だからこそ、実社会でどう英語が使われているかを知り、多くの人の課題を知って、現実に備えて英語を学ぶ方がいいに決まっています。
 
しかし、学校の英語の授業では、社会でどう英語が使われているかを考えることが少ないし、生徒も将来英語をどう使うかあまり考えずに勉強していることが多いと思います。
だから、英語が辛い苦行になってしまっている人が多い。
 
例えるなら、とにかく目のまえの英語の勉強の階段を苦労して登ってるけれど、上に何があるかわかっていない感じです。
 
この「英語学習の階段」さえ登れば、その先には、素晴らしい世界がひろがっている(らしい)。とにかく、まずはこの階段をのぼろう。
 
でも、苦労して勉強して目の前の階段を登り、英語がすごくうまくなったかと期待して実際に英語を使ってみたら、あんまり上達していない。自分の英語力にがっかりする。
まだまだ英語の勉強が必要なんだ、と思い、次の階段を見上げてため息をつく。
いったい、いつになったら英語を難なく使えるようになるんだ、とフラストレーションが湧いてくる。
こんな感覚を、私はもってました。
 
そこで、その英語学習の長い階段の先に何があるか、学術的に検証してみようと思ったのです。
 
日本人と英語というテーマは、古くから繰り返し議論されてきました。私は「共通語としての英語」という新しい発想を取り入れることが、私たちが効果的に英語を使う味方になると確信しています。

「共通語としての英語」とは、ELF(エルフ)とよばれ、応用言語学で25年ぐらい前に生まれた、新しい考え方です。英語を、「世界の人をつなぐ、共通語」として考え直します。今までの英語教育の常識に比べると、革新的で、やや過激にも見える、しかし、私たちの現実にあった発想です。
 
ELFはグローバル社会の現実に学ぶ考え方なので、私たちELF研究者は、世界で英語がどう使われているか、英語の使い手は何を考えているかを積極的に調べています。
 
こうして世界中で英語を使っている人たちの話を数多く聞いてきて、私がしみじみと納得したのは、英語をうまくなるということは、一生続くプロジェクトで、短期間に猛烈に勉強したら、それで終わるものではない、という、当たり前なことでした。

3か月の語学留学をしても、2年の大学院留学をしても、5年の海外駐在をしても、10年間英語を使って仕事をし続けても、ほとんどの人は、自分の英語にはまだ不満があると話してくれます。英語が上達すると、それなりに新しい課題が見えてくるわけです。
 
しかも、英語をしばらく使わないと、単語は忘れてしまうし、話そうとしても言葉がでなくなる、と言う人も多いです。一度英語に慣れても、使わずにいると、英語力を維持するのもなかなか大変。
 
つまり、英語は短期間のダッシュの英語学習で完了しないので、長く続けられる英語との付き合い方を見つけることが大事です。そのためには、英語との付き合いが、楽しく感じられないと難しい。
 
英語を楽しむには、英語を自分の好きな事や好奇心にむすびつけ、普段の生活の中に英語を取り入れるのが効果的だと思います。自分が本質的に好きなこと、興味が持てること、好奇心を掻き立てるようなテーマを活かした英語の勉強法を見つけることが、大事なのだと。
 
そんなわけで、私は大学で英語を教えながら、1)学生が楽しく感じられて、2)英語学習法としても効果があって、しかも、3)将来英語を使う時にすぐ役立つ学び方、を探してきました。
 
リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング、そして発音や語彙や文法と、英語の勉強の分野はいろいろありますが、それぞれに、言語学で効果的な方法が研究されてきています。そうした最新の研究成果を取り入れているつもりです。
 
ただし、言語学の言語習得の研究は盛んですが、語学学習には、驚くほど短期で突然英語が上達したり、びっくり簡単に英語がうまくなる方法は、見つかっていません。

むしろ、英語をたくさん聴く、たくさん読む、たくさん話す、たくさん書くと、試行錯誤を繰り返し続ける地道な積み重ねが必要なことが検証されています。この、単純な積み重ねを楽しめるようにするのが大事。

だから、学生一人一人にとって、自分の興味や関心に近く、好奇心を持てる内容で英語を学べるように考えます。繰り返しの練習をできるだけ、楽しく、続けやすいように。

特に、英語の学習の素材の面白さを工夫しています。
学生にとって身近で、興味がもてて、すぐにでも使えそうなテーマの素材を選びます。
 
こうやって英語を教えてきて、この方法は、学生に役立つだけではなく、英語に興味のある多くの人にも役立つと思っています。そこで、いままで大学の授業で工夫しながらやってきた、英語の練習法を、具体的に書き留めておこうと思います。
 
紹介する勉強法は、英語の勉強を、苦しい階段上りにせず、楽しみがなら、ずっと続けられる練習にする提案です。
 
その楽しみながら続ける「頂上のない山歩き」の英語学習を、いっしょに歩きながら案内してみたいと思っています。


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