「勘定合って銭足らず」の本質は、黒字額が小さいか、実質赤字かの2種類
会社の資金繰りが話題になる際、よく出てくるのが、「勘定合って銭足らず」というフレーズです。
すなわち、利益が出ていても、お金の動きをきちんと把握していないと、お金が足りずに倒産することもあるという説明の中でよく取り上げられます。
「黒字倒産」と言われているかもしれませんね。
しかし、私も社会人になって今年で35年以上になりますが、実際にはしっかりと収益を上げている会社が資金繰りで倒産したケースを見たことはありません。
銀行の融資に対する規制が厳しかった時代には、必要な資金を調達できずに倒産したという事例があったかもしれませんが、きちんと返済できるだけの収益をあげている場合、最終的には何らかの形で資金の手当てができています。
実際、「黒字倒産」と言っても大きく分けて2種類あります。
一つは
黒字額が小さいケース
もう一つは
実質赤字のケース
です。
最初の黒字額が小さいケースは、毎月10万円の利益しかあげていないのに、毎月100万円ずつ借金を返済しないといけないような場合です。
入金や支払のタイミングの問題を無視しても差引き90万円のマイナスですから、だんだん資金繰りが厳しくなるのは目に見えています。
一方で、実質赤字のケース。
表面的には売上があがって黒字になっていたとしても、回収見込みのない売掛金がずっと計上されていたり、在庫が膨らんでいたりする場合です。
それらの資産を厳密に査定していくと実態的には赤字になってしまうというケースがほとんどです。
粉飾決算とまではいかないまでも、ビジネス上のいろいろなしがらみで、どうしても黒字決算にせざるを得ないという場合があります。
実際、銀行の審査においても、業績が好調の時は細かい中味まで、あまりチェックしないこともあります。しかし、資金繰りが厳しくなってくると、一つ一つの項目を詳細にチェックし、会社が提出した決算書ではなく、実態ベースの決算書を独自に作成して判断します。
いずれのケースも返済能力に問題があるため、外からお金を調達するのが難しくなります。
一方、収益力があって返済能力が充分にある場合、資金繰りに関する問題は時間が解決してくれます。
つまり、経営者がよほどぼんやりして資金決済当日まで何もしないという特殊な事例を除けば、「黒字倒産」ということはありません。そして、現実問題としてきちんと継続的に収益をあげている会社の経営者が資金繰りに全く無知ということはないと思います。
したがって、資金繰りを改善するためには、
・まず、赤字体質から脱却すること
・実質黒字化した後も、充分な利益かどうかを検証すること
が大切になってきます。
キャッシュフロー経営と言った場合、一歩間違えると、目先のお金の動きに焦点が行きがちです。
売上100万円で利益30万円の案件と、売上200万円だが、利益5万円の案件。
最終的には前者の案件の方が手元に残るお金は増える訳ですが、実際にはどうしても200万円の案件に目が行ってしまいます。そして、実際には「これは採算割れのプロジェクトだけど、次につながるものだから」と言って、結局は次へつなげられずに資金繰りをより悪くしている場合も・・・。
キャッシュの基本は利益から。
当たり前と思われるかもしれませんが、意外と見落とされています。
売上高は請求書なり伝票なりで、すぐに金額が分かるので、把握するのが簡単です。しかしながら、利益は直接目には見えないので、きちんと計算しておかないと分かりません。
少なくとも「この商品の粗利はいくらなのか?」を予め計算して、粗利段階で赤字の商品はもちろんのこと、粗利があまりにも小さい商品は思い切って売る(作る)のを止めるという決断も時には必要です。