#2:ビジネスパーソンがダッシュボードの構築に取り組むべき3つの理由
勘と経験に基づく判断から、データに基づいた意思決定を行う組織に変えていきたい。このように考える経営層が増えたことで、企業で働くビジネスパーソンに求められるスキルも多様化、高度化の一途を辿っています。
このような状況で、身につけるべき有益なスキルの一つと言われるのが、ダッシュボードの構築スキルです。
本記事では、ビジネスパーソンがダッシュボードの構築に取り組むべき3つの理由について詳しく解説します。
1. 効果が期待できる
"You are what you eat(ヒトは食べものによって作られる)"という言葉がありますが、同じように"毎日(または定常的に)見るもの"もヒトに大きな影響を及ぼします。導入に多くの労力をかけたにもかかわらず、「ITを導入して何が変わったのか?」と言われることが多い中、ダッシュボード構築は利用者に直接働きかける活動であり、業務改善効果を期待できます。詳しく見ていきましょう。
1.1. 業務データの可視化による業務改善
離脱の起こりやすい業務プロセスの特定、業務ボリュームの計測、不自然に長いリードタイムの特定、これら業務データから導かれる事実は、チャート表現を用いてレイアウトすることにより、課題が明確になり、改善に向けた行動が促されます。
チャートを使って可視化を行う効果は想像以上に大きいものです。工夫を凝らした言い回しを使って口頭で指摘しても動かなかった人たちが、チャート表現を使って見せたらすぐに動き出す場面を何度も目にしています。
ナイチンゲールは1854年に勃発したクリミア戦争で自ら看護婦として戦地に赴き、死亡原因のデータを鮮やかなチャート表現を用いて関係者に訴えかけました。翌年には衛生向上の指令が出て死亡率を減少させたのこの逸話は、データの可視化によって人を動かし、成果を上げた有名な事例です。
社内で表彰を受けるような業務改善を達成された方々も、似たような経験をしています。業務上の課題を見つけ、チャートやダッシュボードを作る、つまり業務データを可視化することは改善の始まりになるのです。
1.2. 不要な業務の特定
データを可視化することで、これまで気づかなかった不要な業務や非効率な作業が浮き彫りになることがあります。例えば、月次レポート作成に時間をかけているにも関わらず、活用されていない事実が判明する場合などです。
実際に、「ダッシュボードを構築してから、経営数字に関する質問が増えた」というフィードバックを受けたことがあります。
Excelで集計した表形式レポートを関係者にメール配信する業務は以前から行っていたが、同じ内容をチャート表現に変えてダッシュボードにしたところ、「算出ロジックを詳しく教えてほしい」と言われるようになったというのです。よくよく話を聞いてみると、元のExcelレポートは細かすぎて何を見てよいか分からず、実は見ていなかったということでした。
ダッシュボード構築によって情報量を制御し、使われる情報に変容させることで効果を得る余地は、企業内の至る所に存在します。
しかし、今回の例とは逆に、何も質問が来なかった場合はどうでしょうか?そもそも不要だったのではないかという疑問がわいてきます。
最新のダッシュボードツールは、統計情報を取得することが可能であり、誰が、いつ、どのダッシュボードを閲覧したかを把握することが可能です。
そのため、ダッシュボードを構築すれば、Excelを配信するだけではわからなかったレポート業務の必要性が利用統計によって明らかになるのです。
また、統計情報によって活用されているものが分かった場合は、統計情報をもとに改善につなげることが出来るのも魅力です。
1.3. 周囲を巻き込んだ課題解決
ダッシュボードは、組織全体で同じデータを共有し、課題を認識するための強力なツールとなります。これにより、個人や部署単位から、組織全体での課題解決に取り組めるようになります。
例えば、営業部門の人が営業活動ダッシュボードを構築したとします。この時点では部署に閉じた形での活用です。しかし、ある営業員が、あと一歩で商談が決まる顧客から次のようなことを言われます。
「今問い合わせている課題が解決するならすぐにでも契約書に署名します」
この話を受けて営業員はサポート部門に話をしに行くことになるのですが、サポート部門の人からすると、「問い合わせには順番に対応している」と言います。ここぞとばかりに営業員がダッシュボードを見せ、この顧客に関する問い合わせの重要性を伝えます。
これでサポート部門の人は優先的に対応してくれることになるのですが、そもそもこのダッシュボードを共有してくれた方が、顧客のためにも自社のためにもなるのではないかという話で盛り上がります。
さらに、サポート側でも問い合わせダッシュボードを作成し、営業側に共有したほうがよいという話がでてきます。このようにして、部署の垣根を越えた情報共有が促進されていくことになります。
「顧客」や「商品」に関する情報は部門横断的に活用するのが効果的であり、これを実現する即効性の高い手法がダッシュボードの構築なのです。
1.4. 既存システムの補完
定常的に利用されるダッシュボードの中には、システム構築時の不足を補うものとして機能するものがあります。既存システムの改修を要求するとコストが高くつくため、ダッシュボード構築によって解決したほうが安くて早いと判断される場合です。
このような”既存システムの補完としてのダッシュボード”を構築する経験が増えると、本当に必要な既存システム側の改修を見極める力が付き、数年に一度のシステム投資の効果を最大化することができます。
2. 手軽に始められて、継続的に拡張できる
ダッシュボードの構築は、他のIT導入プロジェクトと比較して、取り組みやすいという利点があります。
2.1. IT部門に依存しない手軽さ
多くのダッシュボードツールは、業務データの更新を伴わないため、IT部門やITに精通した人材の継続的な支援を必要としません。これにより、ビジネスパーソンが自らの判断でダッシュボードを構築し、運用を開始できます。
2.2. 成果が可視化されることによるモチベーション維持
ダッシュボードを通じて改善の成果が目に見える形で表示されるため、継続的な改善活動のモチベーションを維持しやすくなります。
例えば、業務上の滞留の削減の取り組みの結果が月次のダッシュボードに反映されれば、チーム全体で達成感を共有し、さらなる改善へのモチベーションにつながります。
2.3. 業務の高度化と事業の発展
業務が可視化されることで、業務上の滞留の解消、業務プロセスの見直し、定常業務の自動化、探索的な思考を行う機会の増加などさまざまな業務高度化につながります。また、業務の高度化、効率化にとどまらず、事業全体の高度化につながる可能性があります。
例えば、ダッシュボードを取引先向けにカスタマイズして提供したり、チェックロジックをアセスメントサービスにまで磨き上げて提供するといったことにつなげられるかもしれません。
3. 適度な活動期間
ダッシュボードの構築から効果の実感まで、通常2〜3ヶ月程度の期間を要します。 2〜3ヶ月という期間は、長すぎず短すぎない、ちょうど良い活動サイクルです。ビジネスパーソンの多くは、会社の会計期間に合わせて年次または半期での目標設定を行っていると思われます。
この期間内で、ダッシュボードの設計、構築、運用までを行い、効果を実感するチャンスが数回訪れるというのは、日常業務と並行して取り組むのに適した期間であり、プロジェクトの完遂感を得やすいタイムフレームです。
2〜3ヶ月のサイクルで一つの活動が完結することで、PDCAサイクルを回す良い機会となり、継続的な学習と改善のプロセスを体験できます。
4. まとめ
ビジネスパーソンがダッシュボードの構築に取り組むべき理由は、以下の3点に集約されます。
効果が期待できる
(業務改善の動機付けや、不要な業務の特定、チーム全体での課題解決など、多面的な効果が期待できる)手軽に始められ、継続的に拡張できる
IT部門に依存せず自ら始められ、成果の可視化によってモチベーションを維持しやすく、業務と事業の高度化にもつながる適度な活動期間
2〜3ヶ月という期間は、ビジネスパーソンにとって取り組みやすく、かつ重要なビジネススキルを習得するのに適している
ダッシュボードの構築は、単なるデータの可視化ツールの作成にとどまりません。それは、データドリブンな意思決定文化を組織に根付かせ、継続的な改善と学習のサイクルを確立する重要な一歩となります。ビジネスパーソン一人ひとりが、この取り組みを通じてスキルを向上させ、組織全体の競争力強化に貢献することができるのです。
今日から、あなたもダッシュボードの構築に挑戦してみませんか?きっと、新たな気づきと成長の機会が待っているはずです。
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