#1:ダッシュボード起点ではじめよう
はじめまして、株式会社コアビズボードを経営している八木幹雄です。
書籍を読んだ方、研修に参加した方、お仕事で関わっている方に向けて、この場を借りてコアビズボードのコンセプトや創業に至った背景についてお伝えしたいと思います。
1. デジタルの力を組織の力に変えられないのはなぜか?
「流行のSaaSシステムを導入したものの使いこなせなかった」「せっかくダッシュボードを作ったのに結局使われなかった」。デモを見て「これだ!」と決めたIT製品も、実際に使い始めると上手くいかずにお蔵入りになる。このような経験がある組織は少なくないと思います。
日本企業がITプロジェクトに取り組んだ際の成功率は約半数で、失敗の原因は「要件定義の不足」と言われた*のは2018年。それから6年たった今、IPAが公開するDX動向2024では「DX 取組の企画、実施、測定・評価、改善・見直しのサイクルが十分に形成されていないこと( P.6 概要部抜粋)」が指摘されています。
デジタル技術がどれだけ発展しても、要件定義が不足したり、デジタル活用のPDCAサイクルが不十分だと、技術革新のメリットを享受出来ません。どうすればこの問題を解決できるのでしょうか?
2. コアビズボードのコンセプト
コアビズボードは「ダッシュボード起点の業務高度化」をコンセプトに掲げ、次の3ステップでアプローチしています。
ダッシュボード起点であるべき姿を考える
ダッシュボードを構築しデータ活用のPDCAを経験する
ダッシュボードの浸透・定着化のための人材育成を行う
2.1. ダッシュボード起点であるべき姿を考える
あるべき姿を明確にしてからものごとに取り組むのは、個人や組織が効率よく活動する際の基本的な考え方です。しかし、あるべき姿を明確にする行為には”程度の問題”があります。
ある人は箇条書きのメモを作って、ある人はパワーポイントでプロジェクト計画書を作ってあるべき姿を提示します。しかし、箇条書きでは情報量が少ないといわれ、プロジェクト計画書を作ると、計画に時間をかけた分だけそれに縛られるジレンマを抱えます。
コアビズボードが推奨するのは、あるべき姿をダッシュボード起点で考えるという手法です。組織におけるさまざまな職位の人が”どんなダッシュボードを見ている状況が理想なのか”を考え抜くと、業務、データ、人に関する基本的な要求事項が良い具合に決まります。
あるべき姿を明確にするのに必要なものは、「紙と鉛筆」のみです。鉛筆を使って紙にダッシュボードを描いていきます。管理職の○○さんはこんなダッシュボードを見て日々を過ごすべき、○○担当者のXXさんはこんなダッシュボードを見て日々を過ごすべき、そうすれば組織はこんな状態になるだろう。このような議論を繰り返していくことで、あるべき姿が地に足の着いた価値あるものになっていきます。
書籍では、ダッシュボードの設計技法について詳しく紹介しています。
2.2. ダッシュボードを構築し、データ活用のPDCAを経験する
紙に描いたダッシュボードは、いま使えるデータで実現出来る範囲と、そうでない範囲が存在します。それらを認識したうえで、今使えるデータで十分効果が期待できそうならばダッシュボードの構築に取り掛かります。
ダッシュボードを構築する過程ではさまざまな学びがありますし、完成後には新しい要求事項が明らかになります。この経験を何度か繰り返すことで、デジタル活用のPDCAサイクルが意識されるようになります。
「データが不十分だからダッシュボードをつくっても魅力的なものにならないだろう。」これは序盤に出てくるよくある指摘事項です。ただし、その不十分を解決するのに必要なことは、新しいシステムの導入や機能の追加開発ではなく、運用プロセスの改善であることが少なくありません。
そして、不十分なデータのままでもダッシュボードにしてみることで、データをメンテナンスするモチベーションが生まれて運用プロセスが改善されたり、ダッシュボードに表現される言葉の定義に対する意識が高まって業務プロセスに関する文書化が始まったり、新たな気付きを得て新しい業務が生み出されたりと、業務が効率化・高度化されていく雰囲気を体感できるようになります。
2.3. ダッシュボードの浸透・定着化のための人材育成を行う
定常的にダッシュボードを見る状況が組織の中に浸透してくると、より多くの人を巻き込むためにはどうすればよいか、効率良く人材育成できないか?ダッシュボード間の連携をどう考えていくべきか? といった悩みを抱えるようになります。ここで重要になるのが人材定義と育成です。
コアビズボードではダッシュボードの構築~組織浸透に関連するロールとして以下の2つを定義し、育成支援を行っています。
BA(Business Analyst | ビジネスアナリスト)
➤ 現場における「データ活用」のあり方を設計・運用できる人
DA(Data Ambassador | データアンバサダー) ※Domo社の定義を参照
➤ 「データの民主化」を推進し、企業文化として根付かせる人
また、書籍の第5章ではビジネスアナリストの効率的育成に取り組んでいる企業の実例(2社)について紹介しております。
3. 創業の経緯
ここからは創業経緯について触れさせていただきます。
新卒で外資系ソフトウェアベンダーに入社した私は、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入、テスト自動化などの導入効率化施策、導入後の運用最適化に関するサービス開発などを経験してきました。
ERPの導入に成功する企業、失敗する企業、うまく使いこなせない企業など、様々なクライアントと接する中で、「良いシステムがあれば上手くいくわけではない」ことを痛感し、その真因を探るべく「システム導入の前後工程(業務要件整理のような前工程や、データ活用などの後工程)」を経験するためにコンサルティングファームに転職します。
コンサルティングファームでは、ITコンサルから業務コンサルへと徐々に軸足を変えることが出来ました。現在の活動に大きな影響を与えることになったのは、某顧客企業に対する業務改革(BPR)プロジェクトです。
業務要件整理からシステム導入、さらにBIダッシュボードの構築を含めたデータ活用まで、1年半にわたって携わりました。プロジェクトから離任する際、共に取り組んだ顧客から次の一言をいただき、深く心に残りました。
「ITプロジェクトについて事前にもっと学んでおきたかった」
事業部門に所属する担当者にとって、要件定義の作業やITベンダーとのやりとりは全てが初めての経験です。新システムが稼働してはじめて、プロジェクト中に議論してきた結果、つまり業務の変化を体感することになります。これは、プロジェクト開始前にどれだけ説明を受けても理解が難しいものです。
もし顧客がシステム導入に関するプロジェクト経験を事前に積めていたら、より充実した議論の時間を持てたはずです。この頃から私は、システムの「機能的な品質」向上よりも、「顧客企業のITプロジェクト経験値」を高めることにミッションを感じるようになりました。
3社目に入社したDomoは、BIダッシュボードの機能に加え、データ接続、データ準備、データウェアハウス、最近ではAIの機能を包含する米国のテック企業です。BIダッシュボード構築という領域であれば、1つのプロジェクトの期間が短く、多くのお客様と導入経験を共有できると思い、入社しました。
2年ほど経験してみて、BIダッシュボード構築という経験が、短期間に多くのことを学べる価値ある活動であることが分かりました。詳細は以下にまとめています。
ダッシュボードを構築すればするほど、業務は効率化・高度化が進みます。その過程で生まれる新しい業務は、やがて事業価値の増大に繋がっていきます。そしてなにより、この過程を経験することで蓄積される経験値は企業にとっても、ビジネスパーソンにとってもかけがえのない資産になります。
冒頭で取り上げた「DXの取り組みに関するPDCAサイクルが十分に形成されていない問題」は、ダッシュボード構築の経験を効率よく積むアプローチによって解決できるのではないか? このように考え、創業するに至りました。
コアビズボードは、多くの社員がダッシュボードを起点として業務高度化に取り組む世界観を、日本企業に提供していきたいと考えています。
ご興味を持っていただけた方はコチラからお問い合わせください。
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