[創作論941] ホロセルロースナノファイバー
コーヒーかすからホロセルロースナノファイバーの分離に成功しました。
食品廃棄物である使用済みコーヒーかすは、世界中で年間600万トン以上が排出されており、有効な活用方法が検討されていますが、実用化に至った例は数例しかありません。
コーヒーかすには細胞壁の主要な成分であるヘミセルロース約40%、リグニン約30%、セルロース約10%が含まれており、セルロースをナノメートルスケールに細かくして、超極細の繊維であるセルロースナノファイバー(CNF)を分離する研究も進められています。
CNFは植物由来の環境に優しい樹脂やプラスチックの補強材などへの活用が期待されていますが、分離にはセルロース分子鎖間の強固な水素結合を切断する必要があることなどが課題でした。
研究チームは、セルロースとは構造の異なるヘミセルロースに着目しました。
オフィスやカフェで出たコーヒーかすを処理して、ヘミセルロースとセルロースのみからなるホロセルロースの状態にした後、高圧下物理的な衝撃によって水中で微細化しました。
その結果、52%という高収率でホロセルロースナノファイバー(HCNF)を分離することに成功しました。
原子間力顕微鏡で観察すると、HCNFは平均2–3nmの繊維幅と平均0.7–1μm繊維長に分離されていました。
一般的に機械的なナノ化処理で得られるCNFは、強固で不均一な水素結合が原因で数十nm幅程度までしか細かくできないと考えられていましたが、コーヒーかすに含まれるヘミセルロースが水に膨潤しやすい性質をもっていたことから、2–3nmへの微細化が可能になったと考えられます。
また、X線回折法と固体核磁気共鳴分光法を用いて構造を解析した結果、HCNF上にはマンナンが結晶化した状態で含まれ、コーヒーかす由来のHCNFがこれまでに知られていなかった特徴を持つことも明らかになりました。
さらに、このHCNFを凍結後に乾燥させると、発泡スチロールのような形状となりました。
これに再度水を加え、ハンドシェイクすると30–50nm幅まで再び分散することも確認できました。
凍結乾燥させたHCNFには、ハンドリングが容易で、長期保存が可能なこと、輸送時の容量を飛躍的に少なくできるなどの特長があります。
現在は、食品用乳化安定剤として利用する研究を進めています。
素晴らしい技術ですね。
創作活動でもコーヒーかすを活用してみたいですね。