[創作論980] 皮膚の透明化

スナック菓子に含まれる食品着色料を塗って「皮膚を透明にして内臓を見る技術」が開発されました。

光が屈折率の異なる2つの材料の境界に当たると、光は方向を変えるか散乱してしまうため物質は不透明に見えます。
人間を含むさまざまな動物の皮膚や筋肉は、タンパク質や脂肪、体液といった屈折率の異なるさまざまな物質がぎっしり詰まっているため、皮膚から中が透けることはありません。
研究チームは、「生体組織に光を強く吸収する染料を染み込ませることで、組織を構成する物質ごとの屈折率のギャップを埋め、透明にすることができるのではないか」と考えました。
通常、皮膚に入った光は、皮膚を構成するさまざまな物質の屈折率の違いにより散乱するため、皮膚の下を透かし見ることはできません。
ところが、染料を添加して皮膚全体の屈折率を一定に近づければ、皮膚が散乱せず中身が透明に見えるというわけです。
まず研究チームは、理論物理学を使用して特定の分子がマウスの組織と光の相互作用をどのように変えるのかを予測し、いくつかの候補を絞り込みました。
その中から、スナック菓子やシロップ、ゼリー、化粧品など多様な食品に使われる着色料であるタートラジン(黄色4号)を選びました。生の鶏むね肉を薄くスライスしたものにタートラジンを塗り込み、透明になるかどうかを調べたところ、タートラジンを塗る前はむね肉の下にある文字がぼやけていましたが、タートラジンを塗ると透明になって下の文字がはっきり見えるようになりました。
その後、生きたマウスの頭皮にタートラジン溶液をこすりつけ、透明になるかどうかを実験しました。
その結果、染料が皮膚に完全に拡散すると、マウスの頭皮は中が透けて見えるようになりました。
マウスの頭蓋骨の表面を流れる血管を、0.001ミリメートルの解像度で見ることができたと報告されています。
さらに、同様の実験をマウスの腹部でも行ったところ、わずか数分以内に溶液が浸透して肝臓・小腸・膀胱などの臓器を明確に識別できるようになりました。
この方法は可逆性があり、マウスの皮膚を水ですすいで染料溶液を取り除くことで、皮膚の透明度を元に戻すことができました。
また、体内に吸収された過剰なタートラジンも、塗ってから48時間以内に尿中へ排出されたとのことです。
今回開発された方法は、まだ人間ではテストされていません。
人間の皮膚はマウスより数倍分厚いため、タートラジンが深い層まで吸収されにくいとのことです。
しかし、将来的な研究で同様の方法が人間でも使用可能だとわかれば、有用な医療ツールになる可能性があると期待されています。


驚きの技術ですね。
創作活動で普段使っている染料にも、意外な使い道があるかもしれません。

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