[創作論1020] アリの農業

恐竜を絶滅させた隕石の衝突が「アリの農業」の誕生につながったという研究結果が発表されました。

北アメリカ大陸南東部から中南米に広く分布するハキリアリなどのアリは特定の菌類と共生関係を結んでおり、菌類の栄養源となる植物などを運んで菌類を成長させる代わりに、その菌類を自分たちの食物として利用しています。
これまでの遺伝学的研究によると、アリと菌類の共生関係は非常に特異的なものであり、特定のアリは決まった菌類としか協力しないとのことです。
また、協力する菌類に反応する形で急速に進化したとみられる遺伝子が共生関係に寄与しているそうですが、この共生関係がどのように発生したのかはよくわかっていませんでした。
そこで研究チームは、276種のアリと475種の菌類のDNAを分析し、アリと菌類の共生関係の始まりを探る研究を実施しました。
研究対象となったアリと菌類には、「アリの農業」に従事している種と、その近縁であるものの農業はしていない種が含まれており、研究チームはどの種が最も密接に関連しているのか、共通の祖先から分岐したのはいつかを推定するために2000超の遺伝子を分析しました。
研究チームはアリが実践する農業の種によって、「酵母を栽培するグループ」「coral fungi(シロソウメンタケ)という菌類を栽培するグループ」「このライフスタイルに適応した菌類を栽培する、さらに洗練された農業に従事するグループ」に分類しています。
これらの種はいずれも、遺伝的に密接な関連を持っているとのことです。
分析の結果、農業を実践するアリを最も近い共通祖先までたどると、その共通祖先は約6600万年前に起きた大量絶滅を生き抜いていた可能性が高いことが判明しました。
また、現代のハキリアリによって栽培されている2つの異なる真菌が、約6600万年前にほぼ同時に出現したこともわかりました。
約6600万年前の大量絶滅は、小惑星が地球に衝突したことで発生した大規模な気候変動と日光不足が原因だったとみられています。
隕石衝突によって発生した日光不足は、植物の光合成をおよそ2年間にわたり妨げたといわれており、それが菌類の増殖に有利に働いたと考えられるとのことです。
なお、実際に農業に従事するアリのほとんどが登場したのは、大量絶滅から約3300万年前の始新世の終わり頃とみられています。
今回の研究では、始新世から漸新世へ移行する際の気候変動や、約2700万年前にサバンナのような環境が拡大したことなどが、アリの多様化と菌類の進化を促した可能性も示されています。
これらの結果から、研究チームはアリによる菌類栽培の起源が、隕石衝突後にアリが直面した栄養危機への適応にある可能性を示唆しています。


驚きの報告ですね。
アリをモチーフにした創作活動も面白いかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!