にっこり
我がダブサンの横で腰を下ろしてエンジンをじっと見つめた後、北見さんはシートをポンと叩いてあの気さくな笑顔で言った。
「三十五万振り込んでもらえれば後は大丈夫だよ」
大丈夫なんだあ。
ほっこり。
にっこり。
これでようやくダブサンに乗れる。
にっこり。
そして、家に帰った僕は妻にどう言って説得するかという、家に帰らなくても想像に難くない現実に今更ながらぶち当たる。
この辺りから妙な居心地の悪さを覚える。
三十五万円
あっさりにっこりしたがそんな金どこにある。
でもダブサン復活だぞ。
にっこり、苦笑い、にっこり、ほとんど苦笑い。
夢だった。
ほっとした。
ほっとした自分が許せないけどほっとした。
煮凍り。
追伸
そもそも、そんな乱暴なことなんか言わないのが北見さんです。北見さん、ごめんなさい。