
広告で元素周期表を略していいのか?広告のキリトリ問題。略されたハフニウムの立場から考えてみた
auマネ活プランの広告、元素記号を略したことで賛否を生み、広がっています。
auの駅広告、イットリウムとネオジム、ランタン、アンチモンが太字になってるけどなんの意図だろう。まさか同業他社の頭文字? pic.twitter.com/8J4y2tuuIZ
— 賽骰だいす@甘味を要求する (@Saikoroid) September 21, 2023
否定的な意見としては、
「周期表が間違っている」
「間違って覚える人出たらどうする?」
「・・・で?」
「これで使おうとはならない」
「センスない」
肯定的な意見としては、
「おもしろい」
「広がってるから勝ち」
「広告ってそういうものじゃん」
「センスある」
ぼくは広告をつくる側なので、つくる側の苦労を想像したり、逆に表現に厳しかったり、バイアスがかかっているわけですが、無自覚に人をキズつけたり、被害をあたえたりする広告はマジでよくないと思っています。
その点、今回の広告は、元素の左上に原子番号も書かれていて、
※元素周期表は一部省略しています。
という注意書きもあり、周期表を略してほしくない方への配慮もしていると思いました。
お金はauと決まっていました。#auマネ活プラン pic.twitter.com/8XdwhIVuQd
— au (@au_official) September 13, 2023

上の広告は、渋谷駅に出たものです。いちばん上に貼ったポストは、名古屋駅に掲出されたポスターだと思われますが、下のポストを見ると渋谷駅の広告と同じように下のほうにしっかり書かれていると想像できます。
auのフェイク広告
— 日光仮面💙💛 💉💉💉💉 (@nikkokamen66) September 18, 2023
JR名古屋駅
高校生が周期表間違えて覚えるような広告作るな
頭に鉛でも詰まっているのか#au pic.twitter.com/MiOioLCUOE
最も広がったこの投稿だけを見て反応した人は、いわばキリトリの情報を読んでソースを確かめずにシェアしてる人にも見えました。
auの駅広告、イットリウムとネオジム、ランタン、アンチモンが太字になってるけどなんの意図だろう。まさか同業他社の頭文字? pic.twitter.com/8J4y2tuuIZ
— 賽骰だいす@甘味を要求する (@Saikoroid) September 21, 2023
周期表の書き方について語るなら、広告に何が書かれているかも確かめてみるという姿勢があってもいいのではないか、「周期表を略して広告する」のと「広告を略して自分のタイムラインで広告する」のは似ているのでないかという気もします。
そもそも周期表は、昔からいろんな人たちが便利や発見のためにつくったものです。今回の広告でも使われた周期表のデザインの原型は150年以上前にメンデレーエフという人が考えたものらしいですが、その後も新しい元素が発見されたりして、教科書によっても書き方が変わってきたりしているもの。周期表は目的のために変えてきたから今も残っていると考えるべきかと思います。2016年に完成されたと言われてますが、これから先、新発見をできる周期表やもっと使える周期表を考える人が出るかもしれません。
あと、この広告を見て周期表をまちがって覚えて、事故を起こすとは考えにくいです。これをまちがえて覚える人は研究職やら、あぶない元素を扱う仕事には就けない気がしますし。
6年前にテレビCMで「トランペット演奏中の人へ背後からぶつかるシーン」が公開され、トランペット演奏者の方たちからこれはケガしてあぶないとの指摘を受け、お詫びとCM中止になりました。これは無自覚に人をケガさせる事態を招きかねない表現をしていたので反省すべきです。もしこの周期表の書き方をしたことで誰かがケガする可能性があると思ったのなら、それを指摘するべきです。その指摘に納得すれば広告主は反省し謝罪するでしょう。
広告制作は、商品の特徴のキリトリだと思っていますが、Xで広告の一部分をキリトリして拡散するというのはけっこう問題だなと思っています。
2年前に問題となった広告「今日の仕事は楽しみですか。」も、

サイネージの動画だったもののキリトリで拡散しました。
じっさいの映像を見ると印象が変わると思います。
品川駅の広告が実際にはどのようなものだったのか参考のために上げておきます。
— keijitakeda (@keijitakeda) October 6, 2021
当該部分だけを撮影していますが天気予報やニュースの合間に他の企業の広告なども表示され、この表示を見るには数分間待たなければなりませんでした。 pic.twitter.com/6N2Fw8k30R
この広告は、広告主側がXで静止画をポストしているので仕方ないとも言えるかもしれませんが、2枚でポストした画像の1枚をいろんな人に無断転用されたり、編集されたりして「ディストピア」「心を折りにくる」などと言われて広がりました。上の映像から想像するに、Xで広がるまでは誰の心も折っていなかったのではないかと思います。
広告をつくるとき、「こういう誤解は招くかもな」「キズつく人はいるな」というのは必ず考えます。誤解を招かない広告、誰もキズつけない広告はないとすら思っています。
「金がオレンジであるという誤解をあたえたらどうする?」
「Au、Y、Sb、Nd、Raを特別なものだと思って覚えたらどうする?」
「Liが太字になってないからLINEMOユーザーかわいそう」
「オレンジが嫌いな人が見たら、嫌なきもちにならないか?」
「目の見えない人はこの広告見れないけど、なんで点字つけないの?」
いろいろ考えたうえで、伝えたいことやスケジュールや予算など踏まえて落としどころを見つけます。
・・・と、周期表をつくる側の人の立場で語る人が多かったので、広告をつくる側の立場の人で語ってみました。
周期表の広告から略されてしまった「ハフニウム(Hf:72)」の立場で語ると、ハフニウムは結婚指輪の素材で金属アレルギーにも安全と言われている元素です。貴金属メーカーはハフニウムが略されたことを抗議して広告にすればよいと思います。ちなみにこの記事に登場する「は」の数はちょうど72になりますん。
化学の話だったわけですが、10月7日から「会いに行ける科学者フェス」があります。
\科学者はオタクだからいい/
— はせがわてつじ【コピーライター代表】 (@aseetsu) June 24, 2023
会いに行ける科学者フェス
日本科学振興協会JAAS(ジャース)が秋葉原で開催するイベントのネーミングとコピーやりました。
サイト👇https://t.co/hKXPGCi4Dl
(コピーの解説は追加ツイートで) pic.twitter.com/CXzpBmKS2b
「科学者は、オタクだからいい。」というコピーを書いたのですが、「科学者=オタク」に見える点に対して、否定的な意見があることも見越して考えています。「オタクという言葉がどう思われてるか?」「どう伝えたらイヤに感じにくいか?」を考えながら、それでも「みんなで行こう!科学イベント」では広がらないので、工夫しながら落としどころを見つけてコピーを書きました。オタクを使ったコピーで炎上したものも過去にありますが、工夫したら炎上しませんでした。
工夫の秘訣を知りたい方、広がるコピーを考えたい方は、こちらのコピーライターサークルに入ってください。(未経験大歓迎)
https://note.com/copy/membership/