私の昭和歌謡120 キサナドーの伝説 1968
夢を見て愛だ恋だと50年。目覚めてみれば抜け殻の国
イギリスのデイヴ・ディー・グループの原曲を、なかにし礼の詩でカバーしたのが、ジャガーズの「キサナドーの伝説」だ。
ジャガーズは、数曲で終わった。
移動のバスの事故でメンバーが負傷。入院中、オックスにその座を奪われたとか。まぁ、それもあるかも。
でも、当時グループサウンズは、選り取り見取りだったし、プロの作詞作曲家がついている歌謡曲の売り出し方だった。
ジャガーズだって、ボーカルの岡本信が目玉。
すぎやまこういちがバックについてるタイガースは強かった。
あとは・・・
そう、六本木野獣会のことがある。すぎやまこういちや田辺 靖雄が中心の若者の遊び人グループ。ムッシュかまやつもいたし、当時の、わりと裕福な子女を集めたサロンのようなもの。
そんな場所から適当に生まれた音楽だと思う。音楽に向かう姿勢は、ぬるま湯。そこが”ゆとり”があっていいという人もいる。
なかにし礼の歌詞は、愛だ恋だと、お花畑に浮かれる日本人にさせて、そして日本をダメにしてしまう要素たっぷりのもの。
🎵あなたと二人で愛だけに燃えて暮らしたい🎵
🎵何もいらない愛が全て🎵
ジョンとヨーコにつながる、日米の国民がバカになっていくためのツールだ。
それを50年も続けられて、今のリベラルな日本や米国がある。
作詞家などのクリエーターは、けっこう流行に敏感だから、こういうことに、知らず知らず加担してしまう。
私はイギリスの本歌の方をはるかに評価したい。
歌詞の内容も、音楽的にも優れている。
ムチの効果音が最高にラテン。だって、一人の女を愛して死んだ男の歌だから。マカロニウエスタンの情景が浮かぶ。
そして幻想的な「キサナドゥー」という言語を加えれば、かつて愛に燃えて、敗れて、死んだ魂が眠る場所だと想像してしまう。
本歌のキサナドゥーは、桃源郷でも、歓楽の都でも、詩人が描いた”夏の都”でもなく、この歌の中の男の心の叫びだと伝わってくる。
さて、サビの日本語の付け方もいただけない。
原曲は"And"を前倒しで歌うから軽いリズムの変化だ。
ジャガーズは”あなた”なので、次の1拍目につながってしまう。重たい。
ここは、せめて、”ああ”にすればよかったのに。なんて思う。
いやいや、一応私は、なかにし礼さんの大ファンなんだって。
でも、この歌詞は負けだね。
詩にうるさいイギリスの本歌を舐めたらあかんよ。うん。
岡本信は、誕生日の前日に亡くなった。59歳。
イケメンのボーカルに憧れた少女も68歳でございます。
【参考資料】
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