私の昭和歌謡78 たそがれマイ・ラブ 1978
筒美さんカンタンそうでムズかしい歌うとわかるこのラブソング
【辰年の歌手特集 大橋純子】
お正月に辰年の歌手を特集しています。
来週から、月水金の3回投稿が、金曜日だけになります。
前回、来生きょうだいの「マイ ラグジュアリー ナイト」の思い出を語ったので1981年の「シルエット ロマンス」にしようか迷った。
でも阿久悠と筒美京平の「たそがれマイ・ラブ」のほうにした。
理由は、先にヒットして、森鴎外の物語「獅子のごとく」の主題歌になったのを覚えていたから。
それから、この曲を歌うのはかなり技術力がいるからだ。
1 歌い始めとサビ後のフレーズがすごく低い
2 低音とサビに発声を合わせると歌いきれない
3 ソルフェージュ並みの難しいメロディーがある
結局、大橋純子はこの3つを歌い切るために、そうとう我慢して、自分の魅力8割の歌声にしている。だからバランス的には、この歌を持ち歌にする資格が十分にある。
カバーを聞けばよくわかる。
百恵ちゃんは、低音が魅力だが、🎵しびれた指〜を、精一杯歌い上げてしまうから、次のフレーズのどこかで発声ミスすることになる。
徳永英明は、歌詞を短く切って、ミスをなしにして自分の歌にしようとしている。でも、この歌自体が平坦で魅力は半減してしまう。
昌子ちゃんは、さすがだ。見事に自分の声質で歌い切っている。でも、この歌の曲調は、彼女の声質には合わない。
大橋純子は、はじまりやサビ後の低音の音程が少々揺らいでも、発声を押すような地声にはしない。サビを魅力的に歌い上げようと感情的に大きくしない。8割の勝利だ。曲を歌い切るというセンスが抜群なのだ。
ソルフェージュ並みのメロディーは、音程とリズム両方なのだ。こうした都会的な歌のセンスがある歌手にとっても、臨時記号がつく音から広めの跳躍をすることや、長いシンコペーションを完璧に歌いこなすのは困難だ。
耳コピして、私がつまづいたのは、この部分だった。いまだにカラオケで敬遠する曲だ。
🎵いまはなつー そばにーあなーたーの にーおいー🎵
夏の「な」と「つ」の間が難しい。
その後の長いシンコペーションのリズムが保てない。
🎵しあわせなー ゆーめーにー おーぼれて いたけれーどー🎵
幸せなの「な#」から、夢にの「ゆ」への音程と発声にドキドキ。
そして、超難解音程が登場!
🎵ゆうだちがー しろいーいなーづーま つーれてー🎵の部分。
音程に自信がない歌手は(いないと思うがw)まず「だちがー」でコケる。
でもここは練習すればできるだろう。
次は「いなづま」だ。筒美さん!これってホント器楽的。
「ま」で正しい音程になったとしても「いなづま連れて」が自然に聞こえないといけない。
そして、いたるところにある長いシンコペーションが音程をとりにくくしている。音大の試験より難しい。
だから、サビは思い切り、気持ちよく歌いたくなってしまうんだ。
🎵しびれたゆーびー こ ぼれおちーたー
コーヒーカーップーくだけーちーってー🎵
百恵ちゃんは2回目の🎵ことばもなくー🎵の「くー」がひっくりかえってしまった。おっと危ない。
でも、ここからはもっと危険な場所。このフレーズを2回繰り返すと、
🎵さだめといーうー🎵の発声が難しい。
さらに・・・盛り上げて終える
🎵ひーきさかれそうなーーーこのあいーーーー🎵までを歌い上げるのは、たいしたものなのだ。
この曲は阿久悠&筒美京平コンビの難解歌唱の、でも優れた歌謡曲で、それをしっかり受け止めた歌手大橋純子がいたという証である。
そして、ここでいっておくが、歌の“好き”は、歌唱力とは別物なのだ。
添付したYouTubeの歌比べでは、私は百恵ちゃんが1番好きだ。
さて。大橋純子さんは昨年11月に亡くなった。73歳だった。
【参考資料】
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