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タジマ 戯曲を読む (12/21追記あり)

「悲劇喜劇」に掲載されている戯曲を読んだ。
観てすぐに戯曲が読めるの、本当に有難い。

改めて、すべての台詞・エピソードが見逃せない意味を含んでいるなぁと。立ち止まって考えたくなる箇所が沢山あり過ぎるほどある。
台詞の言葉のひとつひとつ、文字でゆっくり読むと突き刺さり方が酷いな。特にバーブが色々な疑問を投げ掛ける言葉とか。観劇時には亀田さんの軽妙な口調と芝居に随分と包まれた状態で私に届いてたみたいだ。
ト書きによって2人の心情がけっこう説明されてる。これはまぁ理解の助けになるけど、そこら辺は成河さん亀田さんが手渡してくれるものを直接受け取ることに集中したい気がしてる。

ラストシーンには色々と考えるところがある。
戯曲によるとこれは10年後らしい。注釈があったが、この時フマが戴いている皇帝はアウラングゼーブ。ムガル帝国最盛期の皇帝。
シャー・ジャハーンの三男アウラングゼーブは、折り合いの悪かった父を幽閉した形で皇位に就いている。彼は後継者争いによって自身の兄弟たちを殺害している。
え?これって…正にフマと重なるじゃん!
フマはバーイーを殺し(手を切断=精神的に殺害、あるいは本当に殺したのかも?)、おそらく父を乗り越え、この世界を自分の居場所とし、衛っている。
「平和を守るというのはこういうことなんだ」と、かつて言っていたように。
フマーユーンやバーブルの名がかつての皇帝と同じであるように、彼らは権力によって支配されている者ではあるけれども、同時にその権力に加担し、その存続を担っている者でもあるのだという現実。

そう、衛兵なんだよ。
私たちみんな何かの衛兵なのかもしれない。
私は何を衛るために刀を執る?

歳月が経ったことを表すためにプレビューではそれまでと違う色(エンジ色)の服を着せたのだろうけど、フマはハーレムの警備兵になったんだなとか出世してる感じにも受け取れちゃうから変更したのかもしれない。今もフマが立っているのはタージマハルの外。同じ場所。

あと、
バーブ「いまの何⁉︎」
フマ(微笑んで)「いまのワニ」
というやり取りが理解できてなかったんだけど、その直前に「大きな金切り声」というト書きもあるし、ワニはあの物切り台のイメージと繋がるよね!と思った。やはり今もフマの世界では手を切断すること…美を殺すことが行われているのだということかな。

あ、そうそう…戯曲では、フマはバーブの手を切った後ちゃんと焼いてました。焼いて、ちゃんと布で傷口を縛って。
とすると、何故それを今回の上演ではやらないことを選択したのだろうか。
描写がエグすぎるからかなぁと思ったりもしたけど、既にこれだけエグいの観せてるんだからなぁ。
この時のフマの心理・生理を考えると…
そうか、4万本の手を焼いたフマは、もう2度とその作業はやりたくなかったんだな。できなかったんだ。フマが唯一見せた「弱さ」かもしれないな。
あっでもそうか…唯一ではないか。タージマハルを見ちゃったことも弱さだし、目が見えないよ!って騒いでたとこにも弱さは出てるわ…

うん…改めてね、今回の配役にはヤラレタなと。
バーブの台詞たちはそれ自体がとても鋭くて、やっぱりそれをああいう人柄(ちょっと抜けてるっていうかあんまりちゃんとしてなくて憎めない身勝手さがあって子供っぽくて…)のバーブが言うことで、私たちの中に届きやすくなってるんじゃないだろうか。そういうピュアさが出ている亀田さん。
そして、フマはただ長い物に巻かれてる訳じゃないからね!めちゃくちゃ考えて苦しんだ上でものすごい強靭な心を以て潰れずに生きてる人なんだから!ってことが痛いほど滲み出て、自由に振る舞っちゃうバーブはお気楽だよな!なんていう見方も提示できちゃうくらいで、そしてなんたって「大事なのは考えちゃいけないってことだ」とかこの人の口が言うのかよ!という衝撃を観客に与えちゃう成河さん。

そう…タージマハルが月より美しいなんてことはないって、フマは静かに、でもきっぱりと、自分の信念を表明してるの。
体制の中には居るけど、世界の中心近くには居るけど、すごく静かに、熱く、自分は何を美しいと思うか言うことができる。ちゃんと己を保っているんだ。
やっぱりこのシーンとても好き。
月⁉︎ って思ったのもあるけど、稽古場映像で視た時から、ここの成河さんフマの静かな言い方がすごく印象に残ってて。

12/21 追記:
今回の配役のことを考えている流れで、ふと、以前成河さんが『スリル・ミー』の彼を「語るに落ちていく役」だから「難しい役」だと言っていたことを思い出した。
そう…スリミ彼もフマも、ただの小物に見えてしまってはダメだもんね。
スリミ彼には私を惹きつける圧倒的な魅力があることを観客に納得させないと成立しないし、
フマは只々無思考な奴なのではないということを観客に思わせる必要がある。
もちろん演技は重要だと思うけど、やっぱり "中の人" って透けて見えるものだから。
成河さんが演じているからこそ、フマの人物像に厚みが出ているんだなぁと思う。

追記その2:
あ、それから…ワニのところは、(シアタートークでも触れられてたけど)笑いを誘う言い方に修正されていて、言葉遊びと言うか幼馴染ふたりの空気感を出す台詞だったのかぁと理解しました。


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