玉井順三

エッセイ「訳ありなひとたち」をお楽しみください

玉井順三

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マガジン

  • 訳ありなひとたち

    コラムニストのたまちゃんこと、わたくし不肖玉井が出会った「訳ありなひと」たちとの悲喜交々から、家族そして自身の訳ありを備忘録的に綴っています。一笑に付すもよし、あるあると同調してみるもよし、そして涙するもよし。どうぞお楽しみください。

  • いとうせいこうみうらじゅん

    ご歓談

最近の記事

玉井ママの訳ありな終戦

【玉井ママシリーズ】 朝鮮半島から引き揚げに挑む250人の運命 「いいぞ、まさえちゃん、にっぽんいちーっ!」 舞踊の演目を終えると庭に集まった近所のひとたちは縁側まで身を乗り出し、わたしに賛美の拍手を送る。 「お父さん、うまくおどれてた?」 「うん、上手だったぞ」 「水鏡」に続いて、習ったばかりの「お夏清十郎」を演じた。日本舞踊を習っていたわたしは人前で踊りを披露するのが大好きだった。どういう意味の踊りなのかはわからなかったけど、しなを作ったり摺り足とか振り返る所

    • おっぱい星人

      【訳ありなひとたち】 痛い、いたいよーっ。 と泣き叫びたいのに言葉を発することができず心の中でそう思い、目で周りのみんなに訴えた。 笑わないでよ。笑われるともっと痛くなるじゃないか。舌は、オレンジ味のチェリオのビンに吸い込まれて抜けなくなっていた。「順ちゃん、大丈夫かぁ」いとこの澄夫ちゃんが心配そうに顔を覗き込んだ。舌の先にぶら下がってしまったビンが邪魔でしゃべれない。首を横に振った。 「中に入っちゃってるぞ」 澄夫ちゃんはそう言うと、右田くんのバットを拾い上げて、

      • いつだってちんちんフリフリ

        ちんちんフリフリしてるぼくに先生は手こずっていた。 「ちょっとは手で隠すとかしたらどうだ」 って言うけど、先生がそのまま立ってろっていうからしただけ。 廊下を行き交う下級生たちはキャッキャ言って喜び大騒ぎだし、ぼくはもう有頂天でちんちんフリフリの腰ふりダンスが止まらない。 痛てっ。もう、すぐ頭を引っぱたくんだから。 バカになっちゃうじゃないか。「もういい、そんなことしてないでこっちに来い」 と先生。ほら、お前らもシチューが冷めちゃうから早く教室に持って行きなさいと注意する

        • 涙のUFOキャッチャー

          「キターっ」 「大韓航空ですよ、あの3 人」 テッちゃんが耳打ちする。 ある夜のこと、うちに居候していたテッちゃんが珍しく夕飯をご馳走してくれるというので、キングスクロスにある「韓日食堂」という韓国家庭料理店に来ていた。そこへ、ソウル・シドニー線の乗務を終えた大韓航空の客室乗務員たちが制服姿でご来店。テッちゃんの目論見通りといわけだ。 「さっ、行っちゃいますよー」 テッちゃんはいつの時でもチャレンジャーだった。 語学留学でシドニーに来たはいいが英語は全く身に付かず、

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        • 訳ありなひとたち
          7本
        • いとうせいこうみうらじゅん
          1本

        記事

          リアルホラーな夜の遊園地

          「あれ乗りたーい」 そう叫んだのはぼくら子供ではない。母親だ。 ゆっくりと回り始める円形の金網に内側を向いて立ち並ぶひとたち。その金網にに張り付いたまま回転の速度が上がり、やがて円の中心部がクレーンで空に向かい上昇して行くアトラクションだ。 小学生だったぼくら兄弟三人は母親の運転する車で、夜の遊園地にいていた。父親が出張で不在がちだった我が家。ストレス解消のためだったと思しき車好きの母親に付き合わされ、事あるごとに夕食後に都内のドライブに出かけるという習慣があった。休みの

          リアルホラーな夜の遊園地

          ハトは地下鉄で鳴く

          【たまちゃんの訳あり備忘録】 ぼくはいろんなことをします。ゴルフや波乗りをはじめとするスポーツからギターやピアノなどの楽器演奏にも腕に覚えがあります。広報宣伝や外国語を操ったマーケティングの仕事的なこともやってきたし、FMラジオ局で自分の冠番組でパーソナリティなんてのもやらせてもらった。で、調理師だし、犬のプロとして愛玩動物飼養管理士でもあります。周りは多芸多趣味だと持ち上げてくれますが、まっ、器用貧乏ってことです。 でも胸を張って「やれる」と自慢できることがひとつありま

          ハトは地下鉄で鳴く

          砂肝みたいの出てますけど

          【たまちゃんファミリーの訳あり編】 早朝の千葉・大原周辺の国道は、漁港で働くおばちゃん達の軽自動車か、釣り人やサーファーの県外ナンバーしか走ってない。国道128号線に出れば病院へは5分で到着できるはずだ。 「あにき、ヤバい。痛くて気が遠くなりそうだ」  助手席のシートにウェットスーツのまま横たわり必死に痛みをこらえる弟のゲン。後部座席に座るゲンの彼女「洋子ちゃん」は横から手を出し大丈夫よと頭をしきりに撫でている。 「救急車なんか呼ぶと、ヘタすりゃ勝浦までつれてかれるか

          砂肝みたいの出てますけど

          玉井ママとししゃもとヨガ

          【玉井ママシリーズ】 今から50年くらい前、まだ玉井ママがヨガの修行中のころの話です。 「玉井さん、あそこのスーパーのししゃも食べて食中毒になったらしいわよ」そんな話はそのスーパーの店長の耳に入り、慌てて彼は自宅を尋ねてきた。でも、本人は近くの病院に入院しちゃってたもんだから、中学生のぼくが対応をした。 「今後も万全の衛生管理体制のもとで鮮魚を扱い。。」まるで 国会の答弁みたいだなぁとぼくは思った。通り一遍の釈明の弁を述べ終わった店長は、お見舞いにこれ

          玉井ママとししゃもとヨガ

          玉井ママ 夜のドライブ珍道中

          【玉井ママシリーズ】 「ママ、なんで怒られてるの」 トマトケチャップで口の周りがべちょべちょになった弟が、アメリカンドッグを食べるのをやめて、不安そうにそう言った。 「ったく、ふざけんじゃないわよ。人違いも甚だしい」興奮した様子で、もう二度と来てやるもんかと鼻息も荒い。弟の口の周りのケチャップを拭いてやりながらそう吠える玉井ママ。かなり機嫌は悪い。 「みんなぁ、口直しにスケート行くよ、スケート」 えーっ。 平日の夜八時過ぎに「さっ、ドライブ、ドライブーっ」と浮かれ

          玉井ママ 夜のドライブ珍道中

          玉井ママのヨガな日常

          【玉井ママシリーズ】 「ん〜、もうちょっともうちょっと」 「大丈夫だから押し込んで」  胡座をかいた姿勢から両足を片方ずつ持ち上げ、頭のうしろにかかとをもっていき交差させるヨガのポーズ。 あれ。わかるでしょ。元々身体の柔らかかった玉井ママなんだけど、その頃はまだヨガを始めて間もない頃で、このポーズを会得するのになかなか難儀していたよ。自分の腕の力では足を持ち上げられなかったようで、ぼくと弟は折に触れ、このポーズを練習する際のサポート

          玉井ママのヨガな日常

          玉井ママの訳ありな終戦

          【玉井ママシリーズ】 朝鮮半島から引き揚げに挑む250人の運命 「いいぞ、まさえちゃん、にっぽんいちーっ!」 舞踊の演目を終えると庭に集まった近所のひとたちは縁側まで身を乗り出し、わたしに賛美の拍手を送る。 「お父さん、うまくおどれてた?」 「うん、上手だったぞ」 「水鏡」に続いて、習ったばかりの「お夏清十郎」を演じた。日本舞踊を習っていたわたしは人前で踊りを披露するのが大好きだった。どういう意味の踊りなのかはわからなかったけど、しなを作ったり摺り足とか振り返る所

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