ウイスキー初心者のための、好きな味の探し方
はじめに
普段はコーヒーについて語ることが多いのですが、今回はウイスキーの味について語りたいと思います。コーヒーと同様にかなり奥深い世界があるのですが、ウイスキーの味わいは大きく3つの要素に分かれると考えています。①樽の種類②原酒③熟成年数によって味が構成されています。
樽の種類
大きな味の傾向としては、まず樽の種類で考えると良いと思います。コーヒーで言うところの焙煎プロセスに近いです。厳密には焙煎は時間が主要変数になるので熟成期間が近い概念になりますが、飲んだコーヒーが浅煎り or 中煎り or 深煎りのいずれであるかは風味ですぐにわかるように、樽の種類も(熟成年数もですが)なんとなく飲んだ瞬間に判別できるようになります。慣れの問題なので、バーなどで飲み比べればだんだんわかるようになってきます。ざっくりいうと主要な樽は、バーボン樽とシェリー樽です。詳細を語ると、マデイラ樽、ラム樽、コニャック樽、水楢樽、新樽(お酒を仕込んでいない樽)など様々あるのですが、最も主要なものはバーボンとシェリーです。どちらの系統が好きかは完全に好みに分かれるのですが、トロピカルフルーツや全面に出た甘味やさわやかな風味を好む方にはバーボン樽をおすすめし、ほろ苦さやダークチョコレートのような甘さの中に垣間見える濃厚な苦味を好む方にはシェリー樽をまずおすすめするようにしています。日本の主要なウイスキーメーカーは、シェリーやバーボンを押さずにブランド名を全面押ししており、一体どの樽を主体にしたウイスキーなのかがわかりにくいような銘柄を出しています。例えば、山崎なんかは複数種のシェリー樽や水楢樽を主体にブレンドされたシングルモルトですが、近年の公式リリースボトルには樽種類が明記されているものは少ないです。(あっても即完売もしくは高額なので普通は入手できない)ですので、樽種別を理解したくばスコッチウイスキーで飲み比べてみると良いと思います。樽の中での種類の話(オロロソシェリー or PXシェリー、1st fill or 2nd fillなどの差分)はまた次回細かくできればと思います。
原酒
原酒の差分はよく言われる、スモーキーかそうでないかの成分含有の観点で差分を生むポイントでもあります。スモーキーかどうかというのは、製麦の過程で水に濡らして発芽させた大麦を乾燥させる際、ピートを焚くかどうかと、ボトリングしているお酒にそのピートの効いた原酒が含まれているかどうかにかかっています。加えて、スモーキーにもいくつか種類があることにはここで言及させていただきます。以前に紹介した、スプリングバンク蒸留所のリリースしているスプリングバンクやロングロウは、活用しているピート(泥炭)の産出地域がかつて海であった土地でとも言われており、それ由来かやや塩味の効いたピート香が香ってくるような気がします。一方で、内陸部で採れたピートを使用しているような銘柄はまた違った味わいになるはずで。(なる、と言い切りたいところですが、原料を自前で調達していることを公言しているスプリングバンク以外の蒸留所はピート含む原料をどこから調達しているのかがわからないため、念の為名言を避けています)また、その他にも、ポッドスチルの形や蒸留回数や蒸留方法の違いによって、味の違いに大きく影響を与えます。ただ、原酒の作り方による味の違いは各蒸留所のシークレットとなっていることも多いため、詳しくは生産者に聞いてみないとわからない部分でもあります。
熟成年数
熟成年数は一般的に長ければ長いほどに味がマイルドになり、かつ度数が下がると言われています。この理由は蒸留したてのウイスキーがアルコール度数の高い(つまりは純度の高い)ものである一方、樽で寝かせると時間経過とともにアルコール成分が希薄化することと、樽の成分が原酒に混ざり込み尖りが緩和されることに理由があります。ですので、もしウイスキーは苦手だとおっしゃる方がいれば、どんな銘柄でも構わないので15年以上の熟成ウイスキーを飲むことをお勧めします。熟成環境によって、経年変化のスピードは変わるのですが、基本的に15年以上の熟成になるとどこの銘柄でも角が取れて非常にまろやかな味わいに仕上がります。ちなみに、一般的には湿度低く、気温が高いほどウイスキーは蒸発してしまう割合が高いので、樽詰めしてからの熟成が早く進むといわれており、台湾ウイスキーやインドウイスキー、イスラエルウイスキーは非常に短い熟成期間であっても味わい深い仕上がりになっていることが多いです。
味の好みの方向性
どんな人であれ、アルコールの味や強さが好きでない限りは短期熟成よりは長期熟成が好みかと思うので、好みの方向性は樽の種類と原酒とで判断することが多いです。さらに言うと、樽から好みを探っていくのが一般的です。なぜなら、樽入れ前の原酒の味は知ることはできるといえばできるのですが、リリース自体が非常に少なくかつオフィシャルとして出している蒸留所は一部の新興蒸留所のみなので、殆ど原酒同士で比べることができません。ですので、xx蒸留所のシェリー樽とyy蒸留所のシェリー樽熟成を比べる、といった形で熟成後のウイスキーを比べることが必然的に多くなります。実際、コーヒーも浅煎り、中煎り、深煎りのいずれかが好みである、という傾向はある程度飲み手であれば持っていると思います。ウイスキーもそれと同じで、樽を選んだうえで蒸留所の持つ個性を掛け合わせて自分の好みを探っていくイメージです。
まとめ
なんとなく好みの探し方はイメージできたでしょうか。順番としては、樽→原酒という流れです。熟成年数は短くても長期熟成に感じるものもあるため、「結果的にどうであったか」に過ぎない印象もあり、必ずしも味の好みに関係してくるというわけではありません。バーで注文してみるときには、樽や原酒の好み(主にピートが効いてるかどうか)でバーテンダーの方にご提案いただくのが良いのではないでしょうか。