シグナス 2023#7 壊したか?
ヤマハにシグナスというスクーターがある。
シグナスXではない。
もちろん、Zでもない。
シグナス125である。
ブレーキランプが点きっぱなし、スロットルが開きっぱなし、そして、始動性が悪いとのことである。
ブレーキランプはスイッチの不良だろうか。
スロットルコーンの内側でサビが発生して、動きが悪くなることもあるが、キャブレタ側の動きが悪い可能性もある。
これは、見てみないとわからんな。
と、行ってみると、かなり色のくすんだ車両を指さされた。
キーをひねり、スタータボタンを押すと、セルは回り点火しようとする気配は感じる。
点火するとすぐに落ちる。
ん、スロットルは動いているじゃないですか。
「なぜだか分からないですが動くようになりました」
そうですか、油切れの可能性が高いですね、キャブレタ側ではなく。
では、キャブレタを見てみましょう。
「オーバーホールしたんですけどね」
よく聞くフレーズである。
キャブレタは小さい部品で構成されていて、特殊工具を使わなくても分解・組立ができる上に、効果が出れば劇的なので、自ら手をくだすオーナーは多い。
けれど、ガソリンや空気の量を計測することは、メーカーでないかぎりやらないので、分解して掃除しても効果がわかりづらい。
さいきんは動画で、ジェットを針金のような工具でつつく方法が紹介され、実行する人が多いようだか、ぼくは古い人なのでその方式は決してやらない。
針みたいなやつでつつきました?
「いや、クリーナーを入れたくらいです」
それは、正しい。
か、現物を外から観察しただけでも、おかしい。
まず、ヒーターの配線がされていない。
それから、加速ポンプ用のスプリングが外れている。
組まなかったのか、組めなかったのか、どういうことなのだろうか。
ご自身でオーバーホールされたんですよね、配線を替えたのは理由があるんですか?
「いや、わからなかったから放置したんです、始動できるからいいかな、と」
典型的な『やったつもりオーバーホール』か。
これは、めんどうなことになったな。
いや、機械をメンテナンスするのはめんどうなものだ、バイクに限らず。
ただ、半端メンテナンス、つまり、メンテナンスしたつもりでうまくできていない作業は、その回復に時間がかかる。
フロート室を開けてみると、赤サビの粒が観察できた。
なるほど、これはキャブレタを掃除しても燃料フィルタをつけないと効果が出ない。
できる限りサビを取り除いて、ジェット類はクリーナを吹きかけて戻してみたが、むしろ、始動性は悪くなった。
そりゃ、そうだよ、サビの流入を止めていないもの。
すでにキャブレタ本体の通路にサビが詰まっているので、本格的にオーバーホールしないと使えなくなりますよ。
どうします、キャブレタオーバーホールします?と言い残して解散した。
ブレーキランプは、形式の違う電球が無理やり押し込んであった。
個人売買の典型的車両だったな。
家についたころ連絡があった。
始動できません、と。
参ったな、修理を依頼されて出向いて、壊して帰ってきたか?。
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