見出し画像

幸せを伝染(うつ)してくれた本

中学2年生、昼休みに本を返しにきた時だった。
この頃の私が読む本はもっぱら漫画。字の多い本は読まなかった。


ふと目に止まった新着図書の棚。パッと明るい黄緑色の表紙、少しぼやけた雲のような柔らかい犬の絵。吸い寄せられるようにその本を手に取った。

それが今も私を支えてくれているバイブルとの出会いだった。


【Day15】誰かにおすすめしたい本・映画・アニメ・ドラマ

『ハル 哲学する犬』 
著:クォン・デウォン 訳:蓮池 薫

1〜2ページで綴られる詩と柔らかい絵。本を開くと、春風に頬を撫でられるような穏やかな世界が広がります。本が苦手だった私は「タイトルで気になったページから読んでいい」ことをこの本で知りました。許されている気がしたと言った方がいいかな。


この中で出会う「かれ」は、中学生の私に「幸せ」について教えてくれました。

「幸せになるには」ではなく「今ここにある幸せ」を。


難しい言葉はなく、暖かい言葉で綴られるこの文章はポッと心が温かくなります。日々忙しく目の前のやるべきことや将来の不安でいっぱいになっている時に、足を止めて空を見上げる余裕をくれるそんな存在です。

中学の図書館で出会って、高校生の時にふと思い出して購入。社会人になった今でもふと帰りたくなる大切な居場所です。

その時の立場・気持ち・状況によって刺さる文章が異なるのも面白いところ。何回読んでも発見と優しさが見つかります。


今の私がハルを読んで、「好きだなぁ」と思ったモノを1つ

「うつくしさの理由」
砂漠がうつくしいのは、そのどこかにきれいな泉をかくし持っているからです。
山がうつくしいのは、そのどこかにすてきな小道をかくし持っているからです。
空がうつくしいのは、そのどこかに胸をときめかせる愛おしい何かをかくし持っているからです。
人間がうつくしいのは、こころのどこかに大切な愛情をかくし持っているからです。
『ハル 哲学する犬』P100~101





暗いひとりの夜、不安に押しつぶされそうな時、
「幸せ」がわからなくなった時、
心にモヤがかかったよう気がする時、
ふと春風に乗って「かれ」が幸せを伝染(うつ)しにくるかもしれません。

もしかしたら、あなたも「かれ」に出会うかもしれません。
その時のために私から1つ、


かれの名は、「ハル」。


いつか「かれ」と出会ったあなたと出会えるのが楽しみです。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?