見出し画像

ズンチャッチャ夜市考。

大阪は梅雨のど真ん中。雨音を聞きながら、考え事をするのも良いですね。コーミン入江です。

JR住道(すみのどう)駅デッキで毎月最終水曜日開催の「大東ズンチャッチャ夜市」

5月30日の駅前も、16時のスタート時こそ小雨がパラついていましたが、一杯飲んでしまえばそんなのカンケーねぇとばかり、いつもと変わらぬ3000人を超える人で賑わっていました。

デッキとつながる大橋は、住道駅を利用している人なら誰もが知っている夕景のポイント。大阪市内に沈む夕日が空の色を刻々と変える「マジックアワー」が出現します。でも、普段は足早に通り過ぎる道路でしかありません。

この橋の上で、一緒に夕焼けを見たいね、美味しいお酒や食べ物、音楽もあれば最高だね。後に、夜市のターゲット層=来て欲しいまちの将来顧客層ともなる「すっぴん女子」達が話しあったのが、夜市誕生のきっかけです。

2017年7月から毎月1回(12・1・2月は冬季休業)、今回が8回目の開催でしたが、出店者数は当初の倍以上、早くも目標の50店舗に近づいて来ました。認知度も上がり、市外からの来場者、特に若い女性が増えています。

大阪近郊でも毎年多くのマーケットが生まれ、そして消えて行く中、この夜市立ち上げにも尽力頂いた、日本で一番テントを立てている(株)サルトコラボレイティブの加藤寛之氏をして「こんなに早く軌道に乗るマーケットは初めて」と言わしめた理由を考えて見ました。

19時を過ぎ、仕事帰りの人達で立ち飲みスペース(しかないのですが)は、ぎゅうぎゅうです。マーケットと言えば週末の昼間が定番のところ、駅デッキ×最終水曜日の晩、という尖った設定の読みが当たったとは言えます。給料日直後のノー残業デー、週末は予定が埋まっている人気店も出店しやすく、店舗数が確保出来ていることなども理由の一つかも知れません。

出店者選考の基準が「商品にオリジナリティーがあること」だけに、クラフトビールをはじめ、売っているお料理、アクセサリーや雑貨はハイ・クオリティーで、ここでしか出会えないものばかり。ディスプレイなどにも一定のドレスコードを設けていて、音楽ステージも合わせて、全体の空気感も演出しています。

来場者アンケートを見ていても、それらが魅力となっているのは間違いないのですが…「ズンチャッチャ夜市に来た目的」の答えに「人との出会い」を選んでいる人が意外に多いことに気づき、ふとLIFULL HOME'S総研島原万丈氏の「官能都市 センシュアス・シティ・ランキング」が頭をよぎりました。

センシュアスとは、人と人との関係性が豊かであること。このレポートでは人間が五感によって体験する豊かさ、アクティビティからまちを測る新しい指標として、1)共同体に帰属している 2)匿名性がある 3)ロマンスがある 4)機会がある 5)食文化がある 6)街を感じられること 7)自然を感じること 8)歩けること を設定しています。

ランキング上位に入るのはいわゆる「都市」が多いのですが、金沢や盛岡などもランクインしていて、いずれも魅力的なまちです。(興味のある方は検索して頂ければ公開されています。)そこで思ったのは、このズンチャッチャ夜市が、全ての項目を網羅した、月に一度の擬似センシュアス・シティとなっているからなのではないかと。

地元の食を中心とした屋外イベントなので、「街を感じられる」「歩ける」「食文化」は言わずもがな、「自然を感じる」では、夕日の光が会場を包む瞬間あちこちで写真が撮られています。この場所には意味があったのです。

「共同体に帰属している」には、地域ボランティアに参加することだけでなく、夜市では日常の「馴染みのお店で店主や常連客と盛り上がる」「買い物途中に店の人や他の客と会話を楽しむ」ことも含まれます。ここに来たら(会いたい)誰かに会える、というのもよく聞くセリフです。サラリーマンの自然な企業接待の場としての使われ方は、平日駅前ナイトマーケットならではかも知れません。「機会がある」も高得点でクリアです。

21時、夜市は閉店、人々はデッキ周辺の腰を落ちつけられる店へと流れて行きます。「匿名性」や「ロマンス」も、どうやら生まれているようですよ。

「大東市なのにお洒落」「大東市じゃないみたい」「絶対にやめないで」…書かれたアンケートをめくりながら、来場者にも、出店者にも、出店していない周辺の個店にも愛されるイベントとして、採算も取りながらまずは事故なく続けて行こうと誓った、雨の午後でした。

次回も、晴れますように。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?