第3回THE NEW COOL NOTER賞文芸部門~7/22講評
第3回THE NEW COOL NOTER賞文芸部門へご参加いただいている皆様。
第3回コンテストのうち、最初の部門である文芸部門も各作品の審査も大詰めをむかえて参りました。本日は、3作品の講評をいただいています。
どうぞ、お楽しみください。
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<講評(洋介さん)>
深い緑青色の湖
言葉の無い世界
叡智を飲み込む混沌
思考は引き摺り込まれた
湖畔の蕎麦屋の鴨南蛮
踊る心も主客転倒せず
関わりは保たれたままだ
深い緑青の湖を見ると
湖と意識は一つになれず
湖を前に畏怖する意識がある
鴨南蛮に湯気がたつ
旨味は混沌への誘惑か
混沌の温かさへ溺れ堕ちる心
先住民の音のない声
悠久の時を経る自然
過去と今と寛容と無知
偏った思考に幕を閉じ
湖の無垢を受容し
鴨南蛮に別れを告げた。
渡辺さん
素敵な詩をありがとうございます。
鴨蕎麦の出し汁と湖の亀色
味の深みと湖の深さ
主観と客観
過去と現在と
悠久の時を経た自然への畏怖
視点の切り替えと遠近感の切り替え
秀逸な表現力は見事です。
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<講評(ヒロさん)>
「わたしは、つい先程までわたしであったはずものを、薄暗い瓦礫の中で見下ろしていた。」
導入から一転して、穏やかな家庭の風景がやさしく丁寧に描かれる。
一行目で不思議な物語だと宣言されたはずが 我がことのよう違和感ない身近な出来事として読み進められる。
「瓦礫」という一つの親切な単語を冒頭に記してくれたおかげで スムーズに読み進められる。
「魂」に対する考え方。
読み手の数だけ、そのバランス感覚はあるのだろうと思っています。
「魂」とは、「肉体」とは、「生命」とは、「生死」とは、考えさせられます。
現職で医療に従事される著者ならでは成せる業なのだろうか、困難の中で離れていても心が伝わる、気持ちが届くプロットが心に残ります。
「魂」のエネルギー移動が物質との干渉によるものというSFチックな視点がエンターテイメントとしての もう一つの見どころ。
離れた者を心に感じたとき、こんなことが起こっていたのかもしれません。
無念の中に 救いを見つけた 、そんな読後の余韻を楽しみました。
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<講評(一奥)>
夏の日差しは容赦がありません。
皮膚を通し、大気を貫く熱が細胞の奥深くへと浸透し、また熱された大気がじわじわと皮膚の表面を炙る。
芯と表面の両面から、まるで生きる活力が煽られるかのようです。
悲しみに沈んでいたとしても、気力が萎えていたとしても、まるでそれは、「心」などという不安定に振り回されている己の弱さに過ぎないと言うかの如くです。
もっと根源的で、身体的なもの。
心身二元論というわけではありませんが、肉体の調子に引きずられ、無理やりにでも活力が与えられるかのようなもの。
――さも、元気になっていく身体に対して、哀しみに涙していたい己の心のありようがあざ笑われているかのような錯覚すら覚えるほど。
しかし、生きていて、そこで未だ何事かを成すことができるならば、結局の所それが生物として正しいことなのかもしれません。
悲しみと傷と涙。
しかし、肉体は夏の日差しに煽られるかのように、炎を秘めている。
いろいろなことが起きれども、心が時に追いつかずまどえども、それでも私たしは生きているのだ、ということの意味を感じさせてくれる、季節感のある詩です。
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事務局アカウントでは、過去の記事とKindleで、これまで小説を書いたことが無い、という方でも、始められるようなコツなどをまとめさせていただいています。
どうぞ、ふるってご参加ください。
皆さんとともに、このコンテストを盛り上げ一緒に楽しんでいくことができることを臨んでいます。
*講評は分担制としているため、必ずしも応募順に講評結果が発表されるわけではございません。よろしくお願いいたします。
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他の参加者様の作品もお読みいただき、ぜひ、当コンテストを通して新しく知り合い、また仲良くなった、との声をお聞かせください! 皆様の縁がつながるコンテストでありたく思います。
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