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それでもいい、旅行の意味
ある2月、デンマークへ赴いた。
それはそれは寒く、歩いては寒くてカフェに入る。そしてまた歩いては、お店で買い物の繰り返し。デンマークではそんな毎日だった。
ある日、買い物から部屋に戻った私は、窓から河で泳ぐ白鳥を眺めていた。
白鳥は水中の魚を食べる為に、前のめり水中に潜る。食べる際は滑稽な姿、と思った。
そして買い物をした多くの袋を見つめた。
「私はミュージアムや観光名所に行かず、買い物ばかり」
私は、心から自分にがっかりした。なぜなら、私は旅行先の国を知る為に観光したり、歴史を感じたり、そのようなことを楽しむ人間と思っていたが、実のところ、ただショッピング好きな人間ー思い描いていた自分ではなかった事に気が付き、自分を滑稽に感じた。
口惜しいがそれが自分、と認めざるを得なかった。
そして再び、袋の山を見た際、ある事に気が付いた。
「でもデンマークの物価が高くても、これだけ好きな物を買ったり、カフェ巡りしたり、私は結局のところ幸せなんだ」
その気づきがテーマだったのか。それでもいい、この旅行の意味がそれだったとしても。
河では、白鳥が魚を食べ終わり、また白鳥らしく泳ぎ始めていた。