Modernな熊野とDeepな熊野があるまち・・新宮市①
新宮市は、熊野を観光するうえで最も利便性が高くモダンな熊野と奥深い熊野の両面を味わうことができます。
新宮市が熊野観光のハブになり得るわけ
・JR新宮駅に大阪からの特急「くろしお」と名古屋からの特急「南紀」が停車する。
・新宮市内にある熊野速玉大社の他、熊野本宮大社、熊野那智大社・那智山青岸渡寺、花の窟神社へは、公共交通機関(路線バスまたは鉄道利用)での周遊が可能である。これらは新宮市を中心に1時間圏内にある。
・熊野古道の人気ルートである熊野古道大雲取越・小雲取越ー小口にも路線バスでのアクセスが可能。
・美味しい食事処や宿泊施設が多く存在する。
・すでにその利便性を理解して新宮市をハブに熊野を周遊している外国人が多い。
熊野速玉大社、神倉神社と熊野古道
熊野速玉大社の摂社(本社に付属する縁の深い社)である神倉神社は、ゴトビキ岩を神としてお祀りし、熊野の自然信仰の中心の一つです。そのゴトビキ岩に熊野の神々が降臨され、その後(西暦118年頃)現在の熊野速玉大社に新しい宮を造営し、新宮と号しました。新宮は、「神倉神社に対する新しい宮」ということです。
熊野速玉大社の主祭神は熊野速玉大神(伊弉諾尊)と熊野夫須美大神(伊弉冉尊)。熊野速玉大神は、生命の根源である水の動き(水玉)を神格化したものであると考えられています。
2月6日の斎行される御燈祭りは、1000人を超える白装束の上がり子が松明を持って走り下る様子は、「山は火の滝くだり竜」といわれ勇壮な火祭りとして有名ですが、例大祭(10月15日16日)には御船祭りや御旅所神事などさまざまな古儀の儀式が斎行され、特に夕刻の御旅所神事は幻想的な空気に包まれるまさに神秘的な神事です。
これらのお祭りは、水、川、岩、樹木、山など神々が棲まう熊野の自然が背景となるもので感動せずにはいられません。
神倉神社は、ご神体がゴトビキ岩という岩で熊野信仰の起源であり今もなお多くの参拝者を集めているところです。
また、熊野の神々が降臨したところで、しかも神話ではカムヤマトイワレビコノミコト(後の神武天皇)が東征の際に登った天磐盾(あまのいわたて)とされています。
まさしく熊野信仰の中心地とも言えるところで、必ず行っていただきたいのですが、538段(源頼朝が寄進)の石段があまりにも急なので、下りはけっこう怖いですのでご注意を。
熊野速玉大社、神倉神社の他にも阿須賀神社や高野坂などの熊野古道が世界遺産に登録されています。世界遺産のまちです。
市街地にも世界遺産の道があります。御燈祭で禊ぎを行う王子ヶ浜は、熊野速玉大社から熊野那智大社・那智山青岸渡寺に向かう熊野古道です。
熊野モダンな新宮
今から2200年以上前に秦の始皇帝の命により、不老不死の霊薬を求めて「徐福」が渡来したという伝承もあり、この時代にすでに熊野は国際的であったのです。
その後、熊野は聖地となっていきますが(熊野とは)、熊野速玉大社の門前町として新宮市は栄えます。江戸時代には、三輪崎地区が太地と並ぶ古式捕鯨の中心地として、さらに明治以降は熊野材の集積地として大繁栄します。
熊野の水運の技術は日本随一であり、戦国時代には熊野水軍が時の権力争いに大きな役割を果たしましたし、古式捕鯨では、さらにその技術が磨かれました。
その技術もあって熊野材は主に江戸に出荷され、最盛期には江戸の材の20~30%を占めたほどです。
この水運による江戸との交流と、いにしえから続く熊野古道が、熊野モダンを生むのです。
数々の文化人を輩出します。
■佐藤春夫・・詩人、小説家 熊野速玉大社内に佐藤春夫記念館(移転準備のため休館中)
■西村伊作・・建築家、画家、詩人、教育者。文化学院の創設者。市内に西村伊作記念館
■東くめ・・童謡作詞家 日本で始めて口語による童謡を作詞
■中上健次・・小説家 芥川賞作家
新宮は城下町でもあります。
水野家の城下町だった新宮市には、和菓子のお店が多くあります。
香梅堂、福助堂、杵月、福田屋菓子店、柏堂切畑屋、珍重庵、松葉屋、黒潮堂などですが人口3万人に満たない町ではすごく多いと思います。
熊野の土産といえば香梅堂の「すず焼き」が人気ですね。松葉屋の「天の川」もお気に入りです。
酒蔵もあります。本州最南端の酒蔵でもある「尾崎酒造」。
主力商品は「太平洋」。霊水である那智の滝の水を使った「那智の滝」もお薦め。
食事処もたくさんあります。
新宮市観光協会のWEBサイトは、素晴らしいWEBサイトで情報満載です。
グルメ情報も豊富です。
新宮へ来れば必ず行ってほしいところを二カ所紹介します。
ひとつめは、「仲氷店」
不純物を取り除いた清流古座川の水を72時間かけてゆっくりと凍らせた氷を使ったふわふわのかき氷。頭がキーンとなりませんよ。
神倉神社へ登ったあとのかき氷は格別です。
もうひとつは一押しのお土産は、エムアファブリーの「熊野の香り」です。
熊野のスギ、ヒノキ、クロモジなどから抽出した100%天然のエッセシャルオイルを軸に展開しています。熊野の森で材料を切り、熊野の真ん中にある工場で抽出し、熊野で販売。「熊野」「天然」にこだわるおねえさん2人がすべての工程をやってます。和歌山を代表する6次産業。
熊野の森の木は、熊野カルデラなどの影響かと思いますが同じ種類の木でも成分(熊野には固有種が多い)が違うのです。熊野ならではの商品です。
少しだけの紹介でしたが、このように新宮市は公共交通機関の活用で広い熊野地方を周遊するには最も利便性が高く、宿、食事、お土産も充実しています。
また、市内だけでも十分に熊野を感じることできるのでショートスティにもいいと思います。
さらに新宮市には、熊野古道大雲取越・小雲取越、桑ノ木の滝、高田自然プールなど熊野最深部を通るいにしえを残す古道と信仰を生んできたがダイナミックな自然も同居しています。次号で紹介します。
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