
「あんのこと」がハマらなかったんでひと言だけ感想。
「あんのこと」はいろんなところで褒められて、今年を代表する映画の一つになるだろう。上映館数は少なめ、しかも大手のシネコンにはハマらなかったらしく、今回武蔵野館に行ったんだが…社会の底辺を体感できるエリアらしく、若者がたくさん見にきていた。僕の隣席のカップルは、なぜか途中から中年男が若い女の手をギューっと握りはじめると、女は終始鼻を啜って泣いていた。「これ、あたいのことだ」と重ねていたのだろうか。
実話をもとに組まれたストーリーだ。虐待からのネグレクト、未成年売春に薬物(シャブね)、警察の介入と更生と進むが、少しだけ見えた希望を手にすることができない。事象の切り取り方が非情で、それが“社会派”としての問題提起はすごく刺さるのだが、残念ながら映画としての作劇がからぶる。実録なのであとはご自身でお考えください…なんて映画はいくらでもあるんだが、もう少しストーリーはほしかったところだ。「クリスチーネF」かと思っちまったよ。
同じ社会問題の取り込み方としても、昨年の「市子」の方に僕は「映画」を感じる。その辺の感覚の違い。
もう一つノイズがあって、本作はキノフィルムズ配給、自社制作だってことだ。主演の河合優実と監督の入江悠は鈍牛倶楽部の所属タレントで、鈍牛は木下グループだ。波紋を投げかけそうなテーマなので、自分でやらなきゃならん、という覚悟か。