クール

60年代生まれ。上海→23年帰国。サラリーマンのようなもの。中国語ヘタ。映画、演劇、本、音楽、グルメ等、人より多少詳しいジャンルがあります。

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60年代生まれ。上海→23年帰国。サラリーマンのようなもの。中国語ヘタ。映画、演劇、本、音楽、グルメ等、人より多少詳しいジャンルがあります。

最近の記事

「YOLO 百元の恋」(热辣滚烫)を観て、贾玲の凄まじい実行力にたじろぐ。

「YOLO 百元の恋」(热辣滚烫)は今年2月10日に中国公開されたお正月映画で、累計興収が100元どころか34.6億元(約692億円)、動員が7200万人以上というメガヒット作品となった。 僕は上海出張タイミングがどうしても合わずに見逃した。会社の仲間たちは贾玲(ジャーリン)が行方不明になってたこと、驚愕のダイエットの物語だ、と僕にリコメンドしてきた。僕はジャーリンが著名な芸人(漫談師)なこと、「你好,李焕英」(こんにちは、私のお母さん)が傑作で泣かされたこと…くらいの知識が

    • 「シュリ」リマスター公開で思い出したこと。

      韓国映画に「!」と衝撃を受けたのが「シュリ」で、これが日本公開されたのは2000年だったと思い出し、ちょっとびっくりしている。 郷愁にかられてDVDを引っ張り出したんだが、ついつい最後まで見てしまった。 四半世紀前、韓国文化のことなんか全く意識していなかった自分に、南北統一の政治課題をベースに、スパイ諜報戦、銃撃アクション、さらにロマンスのエンターテインメントをのせ、二人一役・一人二役の“仕掛け”が僕的には大当たりで、興奮して劇場に通った覚えがある。今はなき新宿東急だった。

      • 意外にも「東京カウボーイ」が面白かった件を軽く記す。

        まったく引っかかってなかった「東京カウボーイ」を観る。 東京のやり手商社マン・ヒデキは、会社が保有するモンタナの牧場を和牛飼育に切り替えて立て直すアイディアを思いつく。社の副社長で婚約者でもあるケイコは、モンタナ視察から戻ったら二人で住むマンションの内見の方が重要だ。 ヒデキは和牛の専門家ワダとともに現地に向かうが、現場経営者や従業員らとの間に溝があり、自分のプランが穴だらけのことを知る。諦めきれないヒデキは手探りで現地の理解を求めるべく一念発起する。 大変シンプルな構造

        • 政治や歴史を知らなくとも「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」はひたすら笑える至福の韓流コメディ。

          ひっそりと日本公開してた「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」。上映を見逃してしまったので配信レンタルで。 日本タイトルはヒットしたドラマからのパクリだが、原題は「6/45」。今回争点となる宝くじの名称である(45の数字から6個合致すれば大当たり)。三十八度戦の監視所を舞台にしていて、「愛の不時着」と言うよりは「JSA」なんだけど、マスに届けるにはこのくらいベタなタイトルになるのはしゃあないか。 ひょんなことから当たりくじが韓国の監視所兵士の手に渡る。1等6億円の

        • 「YOLO 百元の恋」(热辣滚烫)を観て、贾玲の凄まじい実行力にたじろぐ。

        • 「シュリ」リマスター公開で思い出したこと。

        • 意外にも「東京カウボーイ」が面白かった件を軽く記す。

        • 政治や歴史を知らなくとも「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」はひたすら笑える至福の韓流コメディ。

          「あんのこと」がハマらなかったんでひと言だけ感想。

          「あんのこと」はいろんなところで褒められて、今年を代表する映画の一つになるだろう。上映館数は少なめ、しかも大手のシネコンにはハマらなかったらしく、今回武蔵野館に行ったんだが…社会の底辺を体感できるエリアらしく、若者がたくさん見にきていた。僕の隣席のカップルは、なぜか途中から中年男が若い女の手をギューっと握りはじめると、女は終始鼻を啜って泣いていた。「これ、あたいのことだ」と重ねていたのだろうか。 実話をもとに組まれたストーリーだ。虐待からのネグレクト、未成年売春に薬物(シャ

          「あんのこと」がハマらなかったんでひと言だけ感想。

          「ビバリーヒルズ・コップ: アクセル・フォーリー」はシニア向けコンテンツの最上級品だったこと。

          おっかなびっくりだった「ビバリーヒルズ・コップ: アクセル・フォーリー」にはあっさり脱帽。ジェリー・ブラッカイマー(が決めたんじゃないかも知れないが)は、同時期劇場公開のバッドボーイズはFC進化の道を選び、こちらはノスタルジーで割り切ったんだと思ったりした。 いやぁ、なんというかシニア向けコンテンツの最上級品って感じだよ。 何せオリジン「ビバリーヒルズ・コップ」は1984年の映画だ。もう40年前だよ。23歳の若き天才コメディアン・エディが、ハリウッドスターに成り上がった大ヒッ

          「ビバリーヒルズ・コップ: アクセル・フォーリー」はシニア向けコンテンツの最上級品だったこと。

          「ラブリセット 30日後、離婚します」の多幸感を邦画はもっと学ぶべきなのだ。

          そりゃ韓国映画のほうが信用できるんだよ。 この映画でまず、へえと思ったのは「ブルックリンでオペラを」と同じ楽天×松竹映画だということ。公式サイトの作り方が同じなので、発注先はきっと社内なんでしょか。洋画メジャーが苦戦してる中、いろんな座組で輸入が行われてるね。 「ラブリセット」なんてのは、韓流ドラマにありそうなタイトルだが、原題は「30일」。英語題は「LOVE RESET」。くっつけてそのままな邦題やん。 カン・ハヌルとチョン・ソミンのカップルが劇的な結婚をするも関係は

          「ラブリセット 30日後、離婚します」の多幸感を邦画はもっと学ぶべきなのだ。

          エログロナンセンスで記憶に焼き付いて離れない「インフィニティ・プール」。

          「インフィニティ・プール」はエログロに加えてアホなテイストがそろった、“最近こういうのなかったよね”なホラー映画。 監督がクローネンバーグの息子ブランドンで、血は争えないことを証明してら。 「アンチヴァイラル」「ポゼッサー」など独自の世界観を持つ作品でカルト的人気を集める鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作。旧作見てないや、ごめん。 架空の小国・リゾート地の島にやってきた売れない作家ジェームズと金持ち家庭出身の妻エムは退屈な休暇を過ごしていた。ある日ジェーム

          エログロナンセンスで記憶に焼き付いて離れない「インフィニティ・プール」。

          「パスト ライブス/再会」は監督の自己愛が強くて、ちょっと受け入れがたかったこと。

          現代アメリカ映画界の信頼ブランドA24。だが、ここの作る映画が毎回傑作ってわけじゃないんだってことを、「パスト ライブス/再会」はばらしてしまった。 表向きは「初恋の相手と24年後に再会する」→「お互いの心はどう動くか」→「もしあの時こうしていたら…という誰にでもある経験が引き出される」→メロメロな話である。 ま、それはそれでいいんですけど。 だが少し裏読みをすると… 「韓国からトロントに移民した監督の実体験を基にして」→「彼女の一方的な思いを物語にした」ものだ。主人公の

          「パスト ライブス/再会」は監督の自己愛が強くて、ちょっと受け入れがたかったこと。

          「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」がぶっ刺さって泣いた(60歳です)。

          「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」を観にテアトル新宿へ。見回すと、同年代のおじいさんばっかりだ。 若松プロ黎明期を描いた「止められるか、俺たちを」の続編で、今度はシネマスコーレの設立と運営にスポットを当てた。若松孝二に引き寄せられる木全純治、井上淳一らの悪戦苦闘の青春群像が主軸だ。 時は1982年…あ、もうこれだけで、僕はタイムスリップさせられる。冒頭から…こう…なんというか、胸キュンなのだ。気持ち悪くてすみませんが、ほんとにキュンキュンしたんだよ。18~9歳の一

          「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」がぶっ刺さって泣いた(60歳です)。

          「落下の解剖学」を観た後で慌ててジュスティーヌ・トリエ「愛欲のセラピー」を追いかける。これがまた面白くてさ。

          ジュスティーヌ・トリエの「愛欲のセラピー」(2019)は「落下の解剖学」の前作にあたる。「落下の解剖学」と同じく夫アルチュール・アラリとの共同脚本だ。この夫婦、家ではどんな感じで仕事してるんだろ。 作家で精神科医の主人公シビルは、カウンセラーとして多くの顧客を持っていた。シビルはしばらく小説を書いていなかったが、患者の話をモデルに執筆を開始。そのためにカウンセリングをやめてしまう。しかし、患者の一人、女優マルゴはメンヘラ気味で、どうしてもシビルに診てほしいと懇願する。やむな

          「落下の解剖学」を観た後で慌ててジュスティーヌ・トリエ「愛欲のセラピー」を追いかける。これがまた面白くてさ。

          Netflix版「三体」が高濃度でスタート。中国SF事情を踏まえることで、この企画の面白さが見える。

          Netflix版「三体」がようやく登場。 とりあえず開けてみたら…なんとも驚きのクオリティで、一気見してしまいました。 とはいえ「三体」はだいぶ前の本だ。急に注目浴びてもナー、と言うのが本音だよ。 そもそも劉慈欣の小説が中国で本になったのが2008年。ケン・リュウによる英訳が2014年で、シリーズを含めバラク・オバマが愛読してるって話が2017年。そこから「なんかすごいSFが中国にあるらしい」と世に響いた。日本語訳は2019年にようやく出て、僕もこの時初めて読んだ。この頃

          Netflix版「三体」が高濃度でスタート。中国SF事情を踏まえることで、この企画の面白さが見える。

          「Dune: Part Two」初見で思っちゃったのは内容より上映フォーマットのことだった。

          「Dune: Part Two」(デューン 砂の惑星PART2)を観た。 邦高洋低アニメ独走の現代興行からすると、SF大作洋画がドーンと公開されるのはうれしい。 でもさ、この映画には「上映サイズ」にまつわるモヤモヤがある。正解出にくいので難しいのね。 本作のアスペクト比は劇場によって分別されていて、最も制作者の思いが伝わる(と想像する)のは1.43 : 1のIMAX GT Laserだ。昔のテレビのような四角い画面サイズってことだ。で、これがスクリーンいっぱいに広がる劇場

          「Dune: Part Two」初見で思っちゃったのは内容より上映フォーマットのことだった。

          「落下の解剖学」のとんでもない面白さに興奮を隠せない。

          今年は面白い映画が続々公開されてて興奮しまくっているのだが、2月にしてベストに出会ってしまったよ。 「落下の解剖学」。これも劇場が少なくて、調布までいきました。シアタスは駅前で手頃だけれど、ちょっと狭すぎるな。 公開週末、土曜の夜の回で、100席弱のスクリーンが7割くらい埋まってた。 フランスの雪に囲まれた山間の山荘で暮らす親子。両親はともに作家。息子は視覚障害があり、はっきりとは見えない(らしい)。ある日、父親が三階から落ちて死亡しているのが発見される。自殺か事故か他殺か

          「落下の解剖学」のとんでもない面白さに興奮を隠せない。

          イ・ジョンジェの「ハント」をひと足早く観たら奥さんが不機嫌になったこと。

          機内で韓国映画「ハント」を見つけてラッキー。 イ・ジョンジェが脚本監督した2022年公開作品。カンヌでも上映された話題作だ。日本では9月公開だそうだ。奥さんが観たくてたまらん、と言ってたのを思い出す。 冒頭、「これはフィクションです」と断ってから、いきなりワシントンで韓国大統領襲撃のあり得ない大立ち回り。この事件を機に、80年代、旧KCIAの安全企画部で、海外班と国内班では互いに北のスパイがいると密告される。こりゃ大変、組織の全員がスパイ容疑者かもしれないと、猛烈な監視合

          イ・ジョンジェの「ハント」をひと足早く観たら奥さんが不機嫌になったこと。

          男の花道映画なんだから拍手で送ってやろうよ「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(文句はあるけど…)

          「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(Indiana Jones and the Dial of Destiny)」を観る。 なかなか複雑な気持ちの残る映画であった。 ネタばれ配慮せずに書いてるんで、ごかんべん。 そもそもそんなに期待していたわけではないでしょ。だって凡作「クリスタル・スカル」で一旦終わったと思ってたじゃん(これ以上作らないでほしい、晩節を汚さないでほしいって)。 それでもなお企業側は、80歳を超えたハリソン・フォードを「先輩、これで最後にしますんで」「

          男の花道映画なんだから拍手で送ってやろうよ「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(文句はあるけど…)