上海でいちはやく観たガイ・リッチー新作「人之怒」のおかげで、やはり僕は刺激的な犯罪映画が大好きなんだと実感。
ほとんどアナウンスなく中国公開された「人之怒」(2021)。ガイ・リッチー監督「Wrath of Man」のことだ。先週北米でも公開され、日本産アニメを破り、ボックスオフィス1位となったホカホカの新作だ。やっぱこういう映画が好きなんだよな、とあらためて思った。
同作はフランス映画「ブルー・レクイエム」(2003)のリメイクで、犯罪組織による現金輸送車襲撃事件で息子を失った父親が、警備員として現金輸送会社に就職し、事件の真相に迫る復讐譚。オリジナルは見ていないのでわからないけれど、ステイサムの実直さ(と破壊力)、ガイ・リッチーお得意の悪党描写、リッチー組の撮影監督アラン・スチュワートの曇天タッチ(おかげで舞台がLAとは思えない)があいまって、最近欠乏していたノワールをたっぷり味わえたのはうれしい。
回想を重ねる構成が一見不親切だ。同じシーンを視点変えて3度もやるのは、悪くはないけど時間かけすぎ。加えて、後半引っ張りすぎなきらいはあり、115分は少し長いなという印象だ。と、調べてみたらランタイムは北米版119分と4分も差がある。もしかして、暴力描写(銃撃やナイフなどけっこう血まみれ)の調整かな。明確なカットシーンというより編集で少し短くした感じ。
ガイ・リッチーは近作「ジェントルマン」はこちらでは見られないので、現時点で僕にとっての最新作は「アラジン」だ。比べ物にはなりませんが…やっぱりクライム映画の方が向いてるよ。
主演ステイサムはいつもの寡黙。B級高倉健の域だ。共演にお懐かしやジョシュ・ハートネット、最近遭遇率の高いホルト・マッキャラニー、そろそろ顔ができてきたスコット・イーストウッド、お前はどこのスパイじゃジェフリー・ドノバン、「レイズ・オブ・ウルブス」で顔を覚えたニアム・アルガー、そして想定していなかったアンディ・ガルシアと渋めの顔ぶれ。これは少しうれしかった。