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映画「新宿純愛物語」に再会。1987年の新宿の街並みが眼前に現れた瞬間、僕の体は硬直した。


U-NEXTで映画を観終わると、終了した画面に関連作品のサムネイルが5本並ぶ。
薬師丸ひろ子をめぐる旅で観た那須博之監督「紳士同盟」の終わりに出てきたのが、この「新宿純愛物語」(残りはビーバップw)だ。87年の夏休み映画で、同時上映は金子修介「恐怖のヤッちゃん」である。
もちろん新宿東映で観た。新宿東映(今のバルト9)のある新宿通りでもロケをしている、まさにご当地映画だ。

この頃仲村トオルは「女の子にキャーキャー言われる」アイドル俳優で、ビーバップ人気はもちろん継続中だったが、もう少しピンでいける企画はないもんかと模索していたんだよね。ハリウッドでも男性ヒーローのアクションが花盛り。日本でもやるっきゃない、という勢い(だけ)は感じられる。

冒頭5秒。あっという間に引き込まれてしまった。ストーリーではなく、新宿の光景に。今はなくなった建物や店舗が居並ぶタイムスリップ感が、なんとも不思議に心地よい。そこを女子高生・一条寺美奈と五十嵐いづみが練り歩いていく。五十嵐いづみ(かわいい)は少女コマンドーだが、まだ番組始まる前なので、今回は戦闘に参加しない端役。
職業不明のチンピラ・仲村トオルと出会った美奈たち。喫茶店の支払いをめぐるトラブル(要するに無銭飲食)から、トオルが理不尽な逆切れで暴れだす。金策のためサラ金に行くもあっさり断られる(身分証明書もってないからダメに決まってる)と、今度はやくざ事務所に放火したうえ拳銃(特注のワルサー)を奪って逃走。かわいこちゃんJKも巻き込まれて共犯。バイクはもちろんノーヘルの二人乗りだ。悪徳刑事大地康雄からも恨みを買ってしまい、これでもかと四方八方から追われる……っと、これ、全面的に悪いのは仲村トオルですね。さすがに言語道断な犯罪行為。いくらイリーガルな反社連中でも、あそこまでやられたらぶち切れるだろう、と同乗してしまう。
とんでもなく調子っぱずれな本人歌唱の主題歌にまとわりつかされながら、ろくに見直しかけられてないシナリオでストーリーは暴走、ヤクザたちも戦争でも起こすのかレベルの銃火器を持ち出して、新宿西口にある謎の工事現場で、大規模な銃撃戦が展開される。
敵側の現役プロレスラー軍団に続いて、ラストはボスの松井哲也とガチ勝負するトオル君。英雄役のはずなのに、最後の最後まで嘘をついて相手をはめる。
「騙しやがって、この外道!」「てめえみてえな悪党、見たことねえ!」…これ、敵側のせりふなんだよ。
ヒーローの風上にも置けない卑怯者、それが純愛だから許されるんかい。

「まずいですよこれ。話がぶっ壊れてますって!」
「だーいじょうぶだよ、お客さんはそんなの気にしないから。トオルがかっこよけりゃいいんだ」
なんて会社判断だったのかしらね。

そこまで客もバカではないので、残念ながら大コケ。
公開当時の新宿東映も、せっかくのご当地なのにガラガラでした。

エンディングの「ノリ」からすると、シリーズ化もしたかった感じである。「ビーバップ」に続く新しいトオルの当たり役として、日本各所でアクションアドベンチャーが展開する…なんて企画書的には夢があるだろうに。「横浜純愛」「大阪純愛」「札幌純愛」…「博多っ子」は「純情」になっちゃうか。

突込み満載でバカにしているように見えますが、こういうめちゃくちゃな映画が普通に作られて公開されてしまうバブルな勢いがただただ懐かしくてね。ポリコレやら配慮やら忖度して、気の抜けたサイダーみたいなまんが映画ばっかりのこの時代からすると、本当に観たいものってなんなんだろうな、とあらためて思ったんですよ。

あ、ただ最大の問題はネコの扱い。これ、フィクションでもちょっとひどすぎるぞ。

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