アンドリュー・ニコル監督の「ANON アノン」。変化球ばっかり投げてると登用されなくなっちゃうぞ。
アンドリュー・ニコル監督の「ANON アノン」(2018)をAmazonプライムで観る。
この監督は「変なSF映画」を撮り続けている。本人の志向もあるんだろうが、こいつはそもそもこういうヤツだからってんで、オファーされるのも大抵こういうジャンルなんじゃないかって邪推したくなるようなフィルモグラフィだ。
脚本と監督をした「ガタカ」は遺伝子操作による格差未来の話。「シモーヌ」は理想の女優をバーチャル創出する映画監督の話。「タイム」は人間の寿命を通過に変換するこれまた格差社会の話。そもそも脚本家としての出世作が「トゥルーマン・ショー」だもの。
そう、「トワイライトゾーン」や「世にも奇妙な物語」的な物語に囚われている人だ。最近だと「ブラックミラー」も重なる。
発想はいいんだけど、結局1本の映画になるにはネタがもたないから、恋愛や犯人捜しの要素を水増すこととなり、結果暗い話になるのも特徴的だ。
そんな監督の最新作は、誰も知らない同工異曲映画だった。もうニコルンワールドと呼んでもいいだろう。
近未来。すべての人間の記憶は映像としてアップロードされ、記録は犯罪捜査などに閲覧可能になる管理社会。目で見るものすべてが上がってしまうので、個人のプライバシーはなくなる。息苦しい世界です。サーバ管理が大変ね。まぁ、ブラックミラーでもやってた穴だらけのシステムではありますが…そんな中で殺人事件が発生。裏に「記録を改ざんしてくれるハッカー」がいることがわかる。これがタイトルの「ANON=匿名」につながるんですが…。
捜査をする刑事にクライヴ・オーウェン、捜査線上に浮かぶ「正体不明の女」にアマンダ・サイフリッド。人間の下衆な感情(性欲)が話の柱になったりするので、裸もいっぱい出てくるw。
自分が見ているものがすべてデータ表示されるインターフェイスと、視覚そのものがハッキングされてしまうことによる「今自分が見ているものが本当かどうかわからない」主幹映像を描きたかったようなので、その狙いはうまくいっている(まぁ見慣れたビジュアルですけど)。
それだけにお話が…ねぇ。設定で出オチなのはいつものことだし、登場人物たちに肩入れしにくいので、結果どうなろうがそんなに心が動かないってのが難しいところだ。特に主人公刑事が子供を失った過去の話など、もっと踏み込んでくれないと刺さらんな。
アマンダは「タイム」に引き続きの登用。非人間的な形状のおかげでミステリアスであった。脱ぎ損かも。
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